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期待されない悪役令嬢は、全部放り出して静かに生きたい ~善意と期待が一番迷惑だと、私はもう知っている~  作者: 篠宮しずく


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18/21

第18話 不在は、完成形だと語られていました

その集会は、

夕刻に開かれていた。



場所は、

王都の外れにある小さな礼拝堂。


本来は、

特定の宗派を持たない、

誰でも使える静かな場所だった。


そこに今、

十数名の人が集まっている。


声は低く、

言葉は少ない。


「……彼女は、

 もう語らない」


一人の男性が、

穏やかに言った。


「それは、

 拒絶ではありません」


別の女性が、

頷く。


「語らないことで、

 私たちは

 自分で決めるようになった」


「導かれない自由……」


「沈黙は、

 完成に近づいている証です」


その場に、

彼女はいない。


名前も、

呼ばれない。


だが。


全員が、

 同じ人物を思い浮かべている。



「以前は」


一人の若者が、

手を胸に当てて語る。


「“沈黙の姿勢”を

 真似ることが、

 目的だった」


「でも、今は違う」


「彼女が

 いなくてもいい」


その言葉に、

場が静まった。


誰かが、

息を呑む。


「……それは」


年配の女性が、

慎重に言った。


「彼女が、

 完成したということでは?」


沈黙。


それは、

肯定でも否定でもない。


だが、

誰も反論しなかった。



その頃、私は――


特に何もない一日を

過ごしていた。



朝。


目を覚まし、

紅茶を淹れる。


誰にも呼ばれない。

誰にも期待されない。


(いい朝だ)



昼。


図書室で、

本を読む。


声をかけられない。

視線もない。


(理想的)



夕方。


中庭を歩く。


誰も、

道を空けない。


(普通だ)


私は、

小さく息を吐いた。


(……やっと、

 静かになった)



だが。


その夜。


極秘日記を開いた私は、

ふと、手を止めた。


『本日の学び』

『不在は、

 時に存在より

 強い意味を持つ』


ペン先が、

少しだけ震えた。


(……完成形、か)


誰かが、

私の不在を

“完成”と呼ぶ。


それは、

賞賛でも、

悪意でもない。


ただ、

回収不能な解釈だった。



同じ夜。


礼拝堂では、

集会が終わりを迎えていた。


「……彼女は、

 もう必要ない」


誰かが、

そう言った。


「沈黙は、

 私たちの中に

 残った」


人々は、

静かに立ち上がる。


誰も、

指示しない。


誰も、

答えを出さない。


それでも――

納得した顔をしていた。



私は、

自室の灯りを落とした。


静かだ。


望んでいたはずの、

静けさ。


なのに。


「……これは、

 成功なのかな」


小さく呟き、

答えを待たずに

目を閉じた。


沈黙は、

確かに深まっている。


ただし――

私の手の届かない場所で。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


あと数話で完結となります。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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