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期待されない悪役令嬢は、全部放り出して静かに生きたい ~善意と期待が一番迷惑だと、私はもう知っている~  作者: 篠宮しずく


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17/21

第17話 いつの間にか、席が減っていました

それは、

誰かに宣言されたわけでも、

命じられたわけでもなかった。


ただ――

気づいたら、減っていた。



「……本日の出席は、免除です」


朝、

学園の事務官が

申し訳なさそうに言った。


「体調を考慮して、との判断で……」


(体調、悪くない)


私は、

反射的に否定しかけて――

やめた。


否定すれば、

説明が始まる。


説明すれば、

意味が生まれる。


「……分かりました」


それだけ答え、

踵を返した。


(静かで、いい)



次の日。


講義室の前を通りかかると、

私の席だった場所に

別の生徒が座っていた。


一瞬、

視線が合う。


相手は、

慌てて立ち上がりかけ――

周囲に止められた。


「……いいんだよ」


誰かが、

小声で言った。


「今日は、

 アリシア様は来ないから」


(来ないことになってる)


私は、

そのまま通り過ぎた。


胸は、

何も痛まない。


(むしろ、楽)



昼休み。


中庭のベンチに座ろうとしたら、

既に誰かが

遠慮がちに荷物を置いていた。


「……どうぞ」


声をかけられる。


(あ、避けられてる)


違う。

避けているのは、

私ではなく――

“私の周りに起きること”だ。


私は、

別のベンチに向かった。



放課後。


ミレイユ嬢が、

珍しく距離を保って立っていた。


「……最近、

 忙しそうですね」


(忙しくない)


「いえ」


短く答える。


「そう……ですか」


彼女は、

それ以上近づかなかった。


その距離が、

少しだけ――

思ったより遠い。


(……あ)


だが、

感情は表に出さない。


「お気遣いなく」


それが、

今の最適解だ。



夜。


自室は、

驚くほど静かだった。


訪問も、

書簡も、

噂話もない。


(成功……だよね)


極秘日記を開く。


『本日の学び』

『居場所は、

 奪われるより先に、

 減っていく』


ペンを置き、

部屋を見渡す。


机。

椅子。

本棚。


全部、

同じなのに。


(……人の気配だけが、

 なくなった)


不思議と、

苦しくはない。


ただ、

少しだけ――

空白が広い。


私は、

カーテンを閉め、

灯りを落とした。


「……このまま、

 消えていければいいな」


それは、

願いでもあり、

計画でもあった。



翌朝。


机の上に、

王宮印のない

無地の封書が置かれていた。


差出人なし。


中身は、

短い一文だけ。


「沈黙が深まっています」


私は、

それを読み――

そっと、引き出しにしまった。


(……まだ、

 終わらないか)

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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