第17話 いつの間にか、席が減っていました
それは、
誰かに宣言されたわけでも、
命じられたわけでもなかった。
ただ――
気づいたら、減っていた。
◇
「……本日の出席は、免除です」
朝、
学園の事務官が
申し訳なさそうに言った。
「体調を考慮して、との判断で……」
(体調、悪くない)
私は、
反射的に否定しかけて――
やめた。
否定すれば、
説明が始まる。
説明すれば、
意味が生まれる。
「……分かりました」
それだけ答え、
踵を返した。
(静かで、いい)
◇
次の日。
講義室の前を通りかかると、
私の席だった場所に
別の生徒が座っていた。
一瞬、
視線が合う。
相手は、
慌てて立ち上がりかけ――
周囲に止められた。
「……いいんだよ」
誰かが、
小声で言った。
「今日は、
アリシア様は来ないから」
(来ないことになってる)
私は、
そのまま通り過ぎた。
胸は、
何も痛まない。
(むしろ、楽)
◇
昼休み。
中庭のベンチに座ろうとしたら、
既に誰かが
遠慮がちに荷物を置いていた。
「……どうぞ」
声をかけられる。
(あ、避けられてる)
違う。
避けているのは、
私ではなく――
“私の周りに起きること”だ。
私は、
別のベンチに向かった。
◇
放課後。
ミレイユ嬢が、
珍しく距離を保って立っていた。
「……最近、
忙しそうですね」
(忙しくない)
「いえ」
短く答える。
「そう……ですか」
彼女は、
それ以上近づかなかった。
その距離が、
少しだけ――
思ったより遠い。
(……あ)
だが、
感情は表に出さない。
「お気遣いなく」
それが、
今の最適解だ。
◇
夜。
自室は、
驚くほど静かだった。
訪問も、
書簡も、
噂話もない。
(成功……だよね)
極秘日記を開く。
『本日の学び』
『居場所は、
奪われるより先に、
減っていく』
ペンを置き、
部屋を見渡す。
机。
椅子。
本棚。
全部、
同じなのに。
(……人の気配だけが、
なくなった)
不思議と、
苦しくはない。
ただ、
少しだけ――
空白が広い。
私は、
カーテンを閉め、
灯りを落とした。
「……このまま、
消えていければいいな」
それは、
願いでもあり、
計画でもあった。
◇
翌朝。
机の上に、
王宮印のない
無地の封書が置かれていた。
差出人なし。
中身は、
短い一文だけ。
「沈黙が深まっています」
私は、
それを読み――
そっと、引き出しにしまった。
(……まだ、
終わらないか)
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