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第二図書室のアーカイブ  作者: つむろ.〈CANA.〉
◉プロローグ◉

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7/10

【其の七.】ちとせくんと、綴

「遅くなりました」


「おう。カレー、冷めちまってたから温め直したぞ」


「すみません」


「何でお前が謝るんだよ。って、ちょっと待て。髪すげぇ濡れてんぞ。

拭いてやるから、こっち来い」


「……」


「痛かったら言えよ」




風呂から上がると、リビングから湯気が立っていた。

どうやら、冷めてしまったカレーを千歳先輩が温め直してくれていた様だ。

香ばしいカレーの匂いが部屋を満たす。

千歳先輩の前まで行くと、髪が拭かれていない事を指摘され、首にかけていたタオルを屈んだ先輩の手に攫われる。

そのタオルが、髪へ伸びる前に俺の泣き腫らした目頭へと向けられた。




「……ちとせくん、ごめんなさい」


「珍しいな?綴が昔の呼び名で俺の名前呼ぶの」


「……こんな俺で、ごめんなさい……」


「……こーら。俺の好きな奴の事、〝こんな〟何て言うな。本人でも怒るぞ?」




風呂場で考えてわかった。

千歳先輩は、俺に嫌々付き合ってくれているのだと、そう俺は思い込んだ。

思い込むしかなかったのだ。

過去の状況と重ねて、千歳先輩が善意で俺を側においてくれているわけがないと、そう言い聞かせないと、また熱いナニカが湧き出てくる。


どうしてちとせくんと呼んでしまったのかは分からない。

俺の本能が、そうさせたのだ。

なのに、千歳先輩は真っ直ぐに俺を見てそう言った。

茶化さず、笑わず、真剣な瞳が俺を刺す。




「っ……だって」


「だっても何もない。綴はほんと、そういう所頑固だよな。……ほら、拭き終わったぞ。

カレー食べろ」


「つ、つか、なな、な、なんで急に……す、好きな奴とか……言ったり……名前で呼ぶんですか……」


「お前がちとせくんって呼ぶから俺も呼んだ。ったく、照れたりするのは昔から変わんねぇな。

ずっと、可愛いお前のまま。……幼馴染として、ちゃんと好きだよ、綴の事」




千歳先輩は、こう言う恥ずかしいときにまっすぐと思いを伝えられる、そう言う人だ。

今は彼女何ていないが、作ろうと思えばいくらでも作れると、俺はそう思う。

俺がいくら慌てても、その力強い瞳は俺を逃がしてくれない。

カレーの匂いが満たされた部屋で、千歳先輩と向き合った顔がボッと熱くなる。




「っ……!かわっ……好きっ……!?あぅ、う、も、やぁ、先輩!千歳先輩!

カレー!俺カレー食べます!!」


「あー、頭パンクしちまったか」


「笑わないで下さいー!」

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