【其のニ十六.】恩人の闇
「君たちさ、この子の病気の事全部知ってるの?知らないけど気持ち悪い?
何も知らないのに馬鹿にしてたの?君たちの方がよっぽど気持ち悪いよ」
―――昔、助けてくれた子がいた。
その黒髪マッシュルームヘアの男の子は突然現れて公園で、俺の背負っている補助人工心臓と繋がっている機械に触れてくる同い年の子に、淡々と説教をしてくれていた。
生まれた時から持病を持っていて、病気の事でバカにされる事には慣れていたから、何も言い返さなかったのに、その子に助けられて初めて嫌がっていいんだって自分を認められた気がして。
生気のないピンクパールの瞳も、幼いながらも冷徹に話す声も、忘れたことはない。
今も、こうして夢に出てくる程嬉しかった。
やがてその男の子の説教に怯んで後退りして、いじめっ子達は公園を去っていった。
「ありがとう……」
「別に、間違ってるから間違ってるって言っただけだし。君も何か言い返しなよ。
黙ってるだけだと付け上がるよ、ああ言う奴ら」
「や……だって……それは俺が……っ。てか、見ない顔だね……?」
「昨日この街に引っ越してきたんだ。……俺、灰原綴―――。君は?」
「―――千歳朔……」
「そう、千歳くんって言うんだ。宜しく」
それが、綴との出会いだった―――。
そんな懐かしい昔の夢を見ていたのに、俺は何処かに飛ばされていた。
扉も、窓もない、だが、階段だけがあると言う不気味な場所。これが、俗に言う精神世界なのか。
そう考えながら辺りを見回すと、小さな子供と目が合う。
白で埋め尽くされたそこの階段に立っていたのは―――。
「灰原……と俺?」
あの頃の、かつて俺を助けてくれた時の、灰原綴と、点滴ポールを持って苦しそうに顔を歪めている昔の俺だった。
髪色も、髪型も、背の低さも公園で出会った綴そのまま。
まだ怪物と呼ばれていなかった頃の、あいつ。
だが、口元だけが綺麗な弧を描いていた―――。




