【其の二.】先輩と、後輩と、幼馴染と。
「―――千歳先輩。……俺の話し聞いてます?」
「ん?あぁ、聞いてる聞いてる」
「それ聞いてない人の言うセリフですよ。……もう、だからこの本を借りてr―――」
夕日が差し込む図書室の窓際の椅子に座りながら、今週の貸し出し管理表を俺が捲りながら、千歳先輩に説明しても、先輩は俺の首に掛けてあるネックレスやヘッドホンで遊んでいて、俺ばかりこの仕事を楽しみにしているのかと思ってしまい、落ち込む。
確かに、この本の間に挟まれた誰かのSOSを見つけると言う慈善活動は元々、昔は暴れ回ると人を殺すかもしれないと言われていた俺自身を抑えるために始めた行動だった。
だから、先輩がこの単調な作業に飽きてしまっていてもおかしくないし、何も言えない。
先程から何度も説明しても、同じ言葉が返ってきてさすがの俺も疲れたので、今度は後にいる先輩の顔を見ながら言ってやろうと後に振り返ると、千歳先輩のアクアマリンの瞳と俺のピンクパールの瞳がぱちりと目があった。
「やっと目合ったな、灰原」
「っ……!お、俺の事見てるだけなら何で話し……っ!」
「いや、だからずっと聞いてるっつってんだろ」
「じゃ、じゃあ適当な返事しないで下さい!後俺で遊ばないで下さい!」
「遊んでねぇよ。仏頂面のお前が反応するのが楽しいだけで」
「遊んでるじゃないですか!」
赤く染まっていく俺の頬を抓りながら笑っている千歳先輩にガツン、と怒っても、笑みは戻らない。
本当に、昔から困った先輩だ。
だが、自然と悪い気はしないのは、俺がこの人に毒されているからなのか、それとも……。
そんな事を考えていると、第二図書室の扉が激しく空けられたそこには、俺と千歳先輩共通の幼馴染達がいた。
「おーい、朔って……まーた綴にイジワルしてんのか?やめてやれよ〜。ほんと、綴大好き人間だな!
外から見たらカップルがイチャついてるようにしか見えなかったぞ!」
「まったく、すまんな、灰原。朔はこう言う独占欲の強いバカなんだ。特にお前には」
「松田先輩……金城先輩……」
明るく金髪で陸上部に所属している松田 悠忠さんと、知的で冷静沈着な金城 希望さん。
どちらも、俺が千歳先輩と出会う前から千歳先輩と一緒にいる幼馴染だ。
二人は図書委員ではないが、千歳先輩の話を聞いてもらったり、色々忠告されたりと、高校に上がった今でも仲良くさせて貰っている。
特に金城先輩には、千歳先輩との距離が近い事をこの一年で数え切れないほど注意された。
記憶にも新しい。
そんな二人と話していると―――……。




