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第二図書室のアーカイブ  作者: らゆの.
◉新島 奏編◉

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19/31

【其の十九.】優しさの種類

理学療法士。

その言葉が、職業が、俺の記憶を縛って離さなかった。

千歳先輩に、そんな立派な夢があったなんて、と。

同時に、彼ならなれるとも思った。

成績優秀で、優しくて、他人のために自分を蔑ろにしてしまう千歳先輩なら。

だからこそ、体の震えが止まらない。

その職業が、千歳先輩本人以外の口から聞かされてしまった事に。


そこで、俺ははた、と、ある事実に辿り着いた。

千歳先輩の家はシングルマザーだ。

理学療法士になるにはそれなりの大学に行かなければいけないからかなり学費がかかるのでは無いかと。

でも、ここ最近奨学金制度が出来たし、それを利用するのかなと考えていると、金城先輩が続けた。

まるで、俺の考えを見透かしたように。




「だから、朔もその制度使って寮付きの遠い大学に行こうと思ってたらしいんだ。

あいつ、頭だけはいいからな。だがここで、大きな問題が最近現れた」


「……〝俺〟ですか?」


「そうだ。朔はずっとお前といた。灰原だけが悪いわけじゃないし、灰原だけが朔の夢を奪ってるとは思わない。

朔もきっと、覚悟の上で灰原と一緒にいたんだと思うしな」 


「金城、それ以上は……」


「だから朔は最近になって進路を変更したんだ。この高校の近くの大学に。

その大学に行っても、理学療法士にはなれない。

でも、朔はきっと、「理学療法士になって他人の身体を治すこと」よりも、「灰原の隣にいてお前の居場所を守ること」を選んだんだ。

灰原が朔の隣にいるから、あいt―――」


「金城!」


「!」


「もうやめろ。綴が震えてる」


「はは、……そっか……俺のせいで千歳先輩は……」


「つ、綴!全てお前のせいなわけじゃない……!……ごめんな、やな事話て……。

そもそも俺が昨日、綴と一緒にいるって分かってた朔にメール送ったのが間違いだったんだよな……」




松田先輩が俺の肩に手を置き慰めてくれる。

その手は、千歳先輩と同じくらい震えていた。

確か、千歳先輩がこの間吐いていた言葉がある。



〝金城は推薦決まったって言ってたけど、松田はどうしたんだろうな?

前は進路希望調査表ぐしゃぐしゃに握り潰してたし。

俺はまだ悩んでるけど、あいつ、自分の事俺たちに全然話さねぇから……〟



それが、事実なのだと今悟った。

松田先輩は、千歳先輩と同じ様に優しい。

でも、多分その優しさは種類が違う。

千歳先輩が自分を肯定した上で俺を肯定してくれる優しさなら、松田先輩は、自分をわざと卑下して俺を守ってくれている。

そう、直感した。

光と犠牲。

能動的な優しさと受動的な優しさ。

それが千歳先輩と松田先輩の優しさの決定的な違いだ。




「金城。金城の気持ちも言いたいこともわかる。

あまりにも朔が自分を殺して綴を優先している状況に耐えられなかったんだろ?

お前は、いつだって朔の隣にいたもんな!

俺だって、朔には他人より自分自身を大切にしてほしい。

でも、綴は他人じゃない。

俺みたいにただの幼馴染と言う名の腐れ縁でもない。

朔自身も、その綴に対するよくわからない感情の間で揺れ動いていたんだろうな。

だから綴も、金城の言いたいことは理解してやってくれな。

でもな、金城。

朔が自分の人生以上に大事にしている綴に、そんな事言うなよ―――」

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