【其の十四.】灰原 綴の応え
「っ……!でも、おれかいぶつですし……」
「そんなの関係ねぇだろ。それを含めてのお前なんだから。つか、何で今泣くんだよ……」
〝ずっと前から、灰原綴と名前のない関係で向き合う覚悟、俺には出来てるんだけど〟
そう震える声で面と向かって言われて、月明かりに照らされた大粒の真珠が、俺の膝へと流れ落ちた。
暗闇なのに、何処か鮮明に千歳先輩の顔が見えた気がしたのは気のせいだろうか。
家族に、いや、この世の誰かに言って欲しかった言葉を一番大好きな人に、逃げずに伝えられて、先輩の前で泣いて情けないとか、みっともないとか、そんな事は考えられなかった。
言われた言葉に動揺し過ぎてしまい、ハイパーサイメシアがショートして、何も考えられなくなっている。
頭では理解したつもりでいたのだ。
そんな都合の良い言葉、俺何かが誰かに言ってもらえるわけがないと。
言われたら言われたで、ありがとうって、応えてそれで終わるはずだった。
こんなに、幼い子供のように泣きじゃくるつもりはなかったのに。
「め、女々しくて、めんどうくさくて、……ひっ……めいわくばっかかけてますけど……」
「迷惑じゃねぇよ。それはお前が俺を頼ってくれてるって証拠じゃん」
「……本当に?」
「ん?」
言葉に詰まりながらも、俺が家族や他人から言われた言葉を並べて行く。
だが、千歳先輩その言葉をも、一つ一つ丁寧に違うと否定して俺に自信を与えてくれた。
「本当に、俺何かが千歳先輩と名前のない関係で向き合っても良いんですか……?」
「向き合ってほしいって、言ってんだけど?」
「……へへ。……はい。宜しくお願いします―――……」




