【其の十.】栄光と美談
「なっ……、灰原先輩……何でそんな事……っ、酷いです……っ!
私は……みんなの為に……」
「に、新島さん本当にごめん……!灰原は俺に感化されて超ドSなやつになっちまっt―――」
「先輩は少し黙ってて下さい。新島。お前はここに何しに来たんだよ。
ここはうんうん、辛かったねって寄り添うカウンセリングルームじゃねぇんだぞ」
「……こーら、灰原。何が何でも言い過ぎだ」
千歳先輩の言葉を遮って、わざと強い口調で新島を詰めた。
そう。
俺達は心の傷を治す臨床心理士でもなければ、治療をする保健室の先生でもない。
俺が新島を詰めるのは、彼女を憎んでいるからじゃない。
「排除された側」の痛みを知りすぎているから、中途半端な謝罪で自分を納得させようとする「綺麗事」が我慢できなかったのだ。
ただの高校生が、この第二図書室と言う場を借りて慈善活動を行っているだけ。
これが果たして全て学校の為になっているかと聞かれれば、そうではないと俺は思う。
やはり何処かには栄光や美談の裏で泣いている誰かがいて、その人を嘲笑っている人もいる。
でも、それでも、俺達はこの活動を続けなければならない。
零れ落ちていく人達がいると分かっていても、行動に起こさなければ、誰も救えないから。
俺の言葉にヒッ、と顔を歪ませて何も言えない新島に、俺が追い打ちをかけると、とうとう千歳先輩にガッ、と首根っこを掴まれて止められた。
「やぁ、千歳先輩……まだ言い足りないです……!黙ってて―――」
「もう良い。お前の気持ちは分かるが、新島さんだって被害者だ。気持ち考えてやれ」
「わかったからっ……せんぱっ……近い……昨日のこと……思い出しちゃっ……ひゃっ……!」
ハイパーサイメシアのせいで昨日の千歳先輩とのやり取りをも記憶してしまっていた。
それが、良くなかったのだ。
後輩の、それも依頼人である新島の前で先輩に自身の首に触れられて変な声を上げてしまった。
恐る恐る新島の方を見ると、ぽかんと、その場に突っ立っていた。
「……何で……何で……私が……」
「〜〜〜!だから―――」
「はいはい、灰原はツンデレで語彙強くなっちゃうから一旦黙っとこうな。新島さん。
やっちゃった事はこれからも変えられない。この錘は、きっとこの先深山さんが許してくれても背負っていかなきゃならないんだ。
だから、わからないなら、俺達と一緒に考えよう。深山さんの気持ちを―――」




