開戦前夜①
アーマン帝国でも最も広い領地には、それ相応の大きな城が構えている。ディアルらの居城のである。
ディアル=ライオットとその第1子のアクバー=ライオットは、居城にて作戦を練っていた。
「親父、親父んところの戦士は、強いんだろうなぁ?俺と父さんで裏で組んで戦うんだから、それ相応のヤツを連れてきてほしいぜ。」
アクバーは、軽口を叩きながら述べる。
「当たり前だ。遺産がかかっているからな。金など惜しまず、最高級の人材を選んでおるわ。
出てこい。作戦を練るぞ。」
ディアルは不敵な笑みを浮かべながら述べる。
ディアルらのいる広間に、強者2名が遠慮なく入る。
ひとりは、筋骨隆々な大柄の男で、金髪のオールバックが目立つ。素人から見ても、圧倒的な強者であることはひと目でわかるほどの覇気があった。
一方は、細い体で、顔にはそばかす、たれ目に隈があり、2つ結いをした白髪の少女であった。
「紹介しよう。
男の方は、拳士、バルカ。単独で数多くの魔獣の巣窟を殲滅している実績がある。また、魔力の総量、精密性も一流だ。」
魔獣。それは、人間1人で勝てる相手ではない。基礎的な戦闘訓練を4、5年積んだ者が数十名いて、やっと勝負になるといわれている。このバルカという男は、それを単独で、数十匹いる魔獣の巣を数え切れないほど踏破している。
「バルカだ。立ち塞がる者は、黒槍でも、それ以上の猛者でも打ち穿つのみ。この俺に敗北は許されない。」
ディアルもアクバーもこの猛者の言葉の圧力に息をのむ。黒槍と呼ばれたラカンと同等以上の圧力を感じ、恐ろしさと共に彼ならきっとラカンに勝てるという希望も見えた。
アクバーは、期待に胸が膨らむ一方でもう1人の戦士を見て少し不安をボヤく。
「親父、もしかしてだけどよぉ、この男に金全部使っちまったんじゃねぇだろうなぁ?この醜女、この男と同じくらい強いのかぁ?」
「あまり突っかかるなよ、不死者にされるぞ。
彼女は、《人形繰り》のシャミア。彼女は、彼女自身の手で殺めた生物を思いのままに操ることができる。それも、一度に数百体以上も操れる。言うなれば、屍術だ。」
「……シャミアです。簡単には死にませんし、死なせません。」
シャミアは、俯きながら、簡潔に自己紹介を行う。
アクバーは、彼女が屍使いだと知り、軽口を叩いてしまった後悔と、彼女の虚ろな様子と相まって不気味さを感じた。
「敵をバルカが制圧し、シャミアが留めを刺す。そして、我らの兵力が増す。
最高の布陣とは思わんかね?」
勝利を確信したかのようにディアルは言う。
「親父、俺の軍があることを忘れてもらっちゃあ、困るぜぇ?」
バルカ、シャミアの2人は、その言葉に反応し、アクバーを睨みつけていた。
「待て待て待て、あんたら2人じゃ不安だって言ってるワケじゃねぇよ、だからそう睨むなって。あんたらが強いのはわかってっからよぉ。念には念を入れて戦に挑みたいだろぉ?わかってくれよぉ、俺らは遺産を手に入れるために命賭けてんだよぉ。」
「2人とも、圧を掛けるのはやめてくれないか。バカ息子の言葉は、君たち戦いに身を置く者にとって侮辱でしかないことは確かだが、この戦は必ず勝たなければいけない。少しでも戦力を保有し、勝率を上げたい。」
バルカ、シャミア両者ともディアルの発言で我に返ったのか、アクバーの後ろで佇む男を力量を推し量るかのように見る。
「ふぅ、やっと本題に入れるぜ。あんたらが注目している男こそ俺の軍をまとめあげる団長、キース=リハトマンだ。
こいつは、勇者パーティーの剣士ゴットン=リハトマンの孫で、その才覚は受け継いでいる!何度も諦めず交渉してやっとこさウチの軍の頭になってくれたのよ!
そして、ウチの軍とは、あの《月の導き》!ジジイや黒槍が殺り損ねた魔人2人を撃退し、その内1人は殺した英雄軍団さ!」
まるでお気に入りの玩具を他児に自慢する幼子のようにアクバーは語る。
「先ほど紹介させていただいた月の導きの団長を務めさせてもらうことになった、キースだ。この戦の勝利を勝ち取り、我がリハトマン家の復興と父上の願いを成就させる。そのために、協力させていただくことになった!よろしく頼む!」
「ほぉ。期待してはいなかったが、中々の者を連れてきたな。」
ディアルからの第一印象は、好青年そのものであった。高身長で、肉体はバルカまでとはいかないものの筋肉質であり、端正な顔立ちだ。そして、おじいさまのパーティーの一員の血筋。
まさか愚息がこんな良質な人材を連れてくるとは思わず、驚きと感心を抱く。
が、そんな感心もすぐに終えた。シャミアが心底不愉快そうに語った。
「あの……。アクバー様の語る魔人を撃退した頃の月の導きの団員は、もういないと聞き及んでいたのですが……。」




