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主人公、いろんな方面から詰め寄られる

 私マリーさん。

 この世界に来てから、今日が最も大変かもしれない。


 何故って、使用人さんにちょっと怒られているから。


 平民出の使用人なんて!!じ、人権無いくせに。

 人権無いと生存権だって、当然だけど無いんだぞ。

 特権階級の私たちからしたら所有物扱いなんだぞ。

 

 ふぅ、私も随分尊大な考えになる様になってしまったぜ。

 さすが私。公爵家の御令嬢に憑依しただけあるわね。

 中身がちっさくても器が大きいから、伸びしろしかないもん。


「お嬢様聞いているんですか」

 ふとっちょのおじ様が私に大きな声で言う。

 腰に手を当てて。いかにも怒ってますって感じで。


「いくら食糧難のお手伝いとはいえ、この食材だけで舞踏会を開きたいだなんて」

 ふふん。指摘されると思っていたわ。


「この感じなら試すことも出来ないかしら」

 グラタンやスープのように記憶にあるレシピを簡単に書いて渡してみたのだ。


「何ですかこれは」



「ジャガイモを使ったレシピよ」



「こんな雑なレシピで料理が作れるわけありません」

 


「せめてこれは食材並べただけで、レシピって言わないって言ってくれないかしら?」

 ふんっ、この太っちょ厨房主の猪口才なめ!!



「お嬢様、これはどこで手に入れた作り方でしょうか」



「た、確かどこかの図書室で」



「つまり料理方法が書いてあったという事ですね」

 相変わらずふとっちょおじ様は腰に手を当てている。

 厨房の主だけあって、存在感だけでなく体も大きい。


「う、うん。そう本に書いてあったの」

 彼の視線が突き刺さるので、私は目をそらしてしまう。

 でも本で読んだのは嘘じゃないもん。

 日本で見たってだけで。


 彼は「ふぅ」と溜息を付いてこう言った。

「お嬢様の頼みです。仕方がありませんから努力してみます」


「ありがとう」

 名前知らない太っちょさん。

 後でパティに名前確認しよ。


 彼に直接お願いせずに、ハラスメント父上に一旦話を通せばよかったかも。

 今ママンに「サロン開催したい」と言っても面倒な返事しか返ってこないだろうし。



「食糧難対策にお願いされてしまいました」

「フルーム国のためです」

 父にこんな感じで言えば、問題なく厨房に話が通ったのかもと後悔。


『分からないなら、ちゃんと聞いて』

『自分勝手に進めないで』

『出来もしない量を抱え込まれてもこっちが困るのよ』


 またお局様のこと思い出しちゃった。

 厨房さんへお願いしておきながら、報連相ができてないって言われてみるみたい。


 あ、私は悪人だしワガママっ子だからそこまで考える必要ないはずなんだけど。


 まてよ?

 私の名義で舞踏会はもちろんだがサロンって開催できたんだっけ。

 厨房に話す前にやっぱり両親に話を聞いておけば良かった。

 手筈を整えるがダメすぎる。


 まず私が出来ることを考えなくちゃ。

 レシピを完成させてからじゃ、遅いかな。


 仕方ない、やっぱりハラスメント父上にちょっと協力を扇ぐしかない。


 どうせママンにも話すんだから、3人揃う夕食の時でいっか。

 




「それで、私にその芋の花を飾り外出して欲しいと」



「ご無理を申し上げているのは『いや、構わない』へっ!?」

 私の「へっ!?」に、話を遮ったはずの父が眉を顰めた。

 若干父の前では大人しくなった母にも「はしたない」(意訳)と言う。


「手筈を頼む」

 耳の有る壁と化している使用人に父は告げた。


「孤児院に試験として料理を持って行くというのも愉快だな」

 ハラスメント父上が私をほめ殺してくる。

 なんか、怖い。


「ありがとうございます。

 施しを受け続けるのに慣れてしまうのも、与えられているという感覚をも無くすためにはと」



「良い案だ」

 父は既に食事を終えている。

 両肘をテーブルに付け、組んだ手の上に顎を載せて私への一言を口にした。

 口元は片方だけ上がっている。


 片側だけの笑み。始めて見たけど、かなり怖い。


 笑顔が苦手なんでしょうか。

 それとも私の視覚と心が歪んでいるのでしょうか。

 どっちでもいいか。



 とりあえず

『こうしゃくさまの きょうりょくを てにいれた まりーは れべるあっぷをした』

 って感じかな。知らんけど。


 夕食を終えた後、私は自室にこもってのんびりと考えた。


 話の流れで少しの提案だとはいえ、国に対しての動きを始めてしまった。

 自分だけの未来を考えるなら、こんなことに関わるべきじゃない。

 焼き菓子店主の戯言だと、鼻で笑い飛ばしたっていいかもしれない。


 しかし「特権階級」は、本来守るために与えられた地位だ。

 私がこの地位を利用して、歴史上の悪女になるなら責任も出てくるよね。

 

 ただの自分へのいい訳かな。


 消えたいとか死にたいとか。

 常に絶望感が私の傍に居ようとも本当は生きたいのかもしれない。

 だから何かしらアクションを起こしちゃう。


 ギロチン一直線、なーんて意気込んでたって本当の私は。

 私の本音は生きることにしがみついているんじゃないかと考えちゃった。

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