表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

主人公には予定外しかないらしい②

 我が家でお昼を一緒し、メグがお薦めだというお店に行くことに。

「父に引き取られる前に、よくここでお手伝いをしていたんです」


 焼き菓子が人気だという。

「メグのお薦めをお願いしたいわ」

 私がメグに伝えると、大きな瞳が更に見開かれた。


「メグ、目を開きすぎると落っこちちゃうわよ。

 それに私そんなに苦手なもの、あ、蜂蜜は控えたほうがいいらしいけど食べられないものはないから」


「今まであたしのことメグさんっだったのに、メグって」

 私から心の声が出ていたようです。

 メグは私にとって相変わらず主人公だもん。



「あ、違うんです。

 呼び捨てが嫌って意味じゃなくって、嬉しいなって」



「そう。では私のことも、ちゃんも無しにしてくれたほうが嬉しいわ」



「いいんですか」

 メグは組んだ手を胸の前に掲げ、全力の笑顔と共にハートを飛ばした。

 


 敬称が無くなることによって、感覚的に距離は近くなるはず。

 メグからの私に対しての気持ちは、全くの別として。

 

 彼女を信じていないというのとも少し違う。

 今まで自分をさんざん傷付けてきた人を、そんなに簡単に信じられない。

 メグが、というよりも人はそういうものだと、私が思っているから。


 それでも近づいてきてくれるメグ。

 彼女の計算でも良いや。



 我が家ではマリー母が、メグに失礼な態度取ったしね。

 お昼に冷や汗かいちゃったよ。ママンのせいで。


 ママンがかなり私の気持ちを削ってきたの。

「だってメグ嬢は私生児なんでしょ」(意訳)だなんて。


 

 気持ちが取っても疲れちゃって。

「お薦めの中でもとても甘い物が良いわ」と伝えればよかったと少し後悔。



 いっか、「お薦めを」と言ったら喜んでくれたし。


 メグを見ていると、自分の気持ちが分からなくなる。

 ずっと心が疲れているから、もうなんでも良いじゃないかという気持ち。

 どうでも良いと思いながら、メグを傷付けたくないという思い。


 以前のマリーのように、自分の事だけを考えていられたら楽なのに。


 私の視線は穿っているのだろうか。

 何もかもどうでも良いからこんな世界も知るもんか。

 誰も傷つけたくない。なんて両方の気持ちがあるから。

 

 結局、良くも悪くも自分の事しか考えていない駄目な人間だ。

 

 メグの楽しげな様子に相槌をうちながら、ぼんやりと考えていた。



「マリー、クグロフが来ましたよ」


「この形可愛いわ。王冠みたい」


「マリーに『お薦め』と言われて、見た目がぴったりだと思って」

 ディスり?わからん。


 これって、もしかして「あの」ケーキ?

「パンを食べればケーキを食べればいいじゃない」

 こんな見た目だった記憶が。


「マリー気に入らなかった?」


「ううん、ちょっと見た目が綺麗だから食べる前に目に焼き付けておいたの」


「マリーはとてもロマンチックなんですね」

 全然その感覚分からん。

 

「贅沢なパンだなって思ったから」



「お嬢さん、よく分かってんな」

 店の奥から野太い声が聞こえた。

 メグがお世話になっていたという店主の声だ。


 私は彼の声の方へと目を向けた。


「ここ数年不作だろう?

 その前は豊作続きだったから今は何とかなってるものの。

 この店もそろそろ終わりかねぇ」


「そんなに小麦が不足しているの?」

 店主の話を聞いた私はメグに視線を戻し尋ねた。


「あたしも聞いただけなんですけど、このまま続いたら良くないって」


「お嬢さん。あんたあのアカデミーにかよっているんだろ。

 なんかいい知恵無いのかよ」

 パンが無いならケーキを食べれば良いじゃないなんて言えないし。


 小麦無いなら、大麦を食べれば良いじゃない。

 ジャガイモとかトウモロコシは?

  

 お口に合うかは分からないけれどお米だってあるし。


「マリー、何か考えがあるって顔してる」

 メグが期待の眼差しで私に嬉々として言う。

 

「い、イモ類……」

 

 私の答えに「アレだろ?それって見た目が不細工な奴だろう」と店主が叫ぶ。

 彼は私たちの会話に聞き耳を立てていたらしい。


「お花を飾ればいいんです」

 ふとマリー・アントワネットが携わったと言われる政策を思い出した。


「花瓶に生けるのではなく、人を飾るんです」


「どういうこと?」

 メグは私の話を促す。


「ジャケットや髪に差して身近なものだと宣伝するの。

 料理は、そうね、まずは舞踏会なんかで出してみるもの良いんじゃないかしら」


「そんなもんかね」

 店主はふんとばかりに鼻を鳴らす。

 私はあなたが言うから案を出したっていうか、パクっただけなのにー!!


「マリーが言うなら、あたしは食べてみたいなって」

 メグ優しい。


「舞踏会ってんなら、お嬢さんの家で出してみてくれよ」

 店主意地悪。


「レシピの開発もあるでしょうから、すぐには難しいでしょうけど家に掛け合ってみます」

 煽られて、つい。

 

 よし、せっかく私はお姫様なのだ。

 お家でわがままマリーさん、発揮しちゃうぞ!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ