主人公には予定外しかないらしい①
週末にメグが我が家を訪問することになった。
1週間は7日設定の世界観なんですねなんて、もう考えないよ。
ついでに自ら動いて「世紀の大悪女になるっ」なんてこともやめる。
ちょっと思い出しちゃったのよ。
憑依する前に読んだ小説のこと。
主人公は転生して記憶にある主人公の未来通りにならないように動くの。
もがけばもがくほど、予定通りにいかなくなっちゃう話。
ってことは「私が予定通りの未来を望むなら動くべかざる」って、なったわけ。
ほぅら、私レベルの大物になると向こうから色々やってくるじゃない?
それを、どーんと受け止め行動するだけで充分。
ちゃんと悪女に出来ちゃうでしょ。つまり受け身悪女よ。
向こうからやってきちゃったことの1つが、メグが遊びに来るということ。
誘ったのはもちろん私ではありません。
メグからのおねだりでもございません。
アカデミーへの送り迎えの際に、こんなことを言い出した輩がいるのです。
「メグ様、是非ともマリーお嬢様が訪問をなさってくださいとのことです」
「まぁ、是非とも」
輩のパティさんは、メグの了承の笑顔を見た後、何故か私にウインクをした。
どゆこと。なに「私頑張りました」って勝手に喜んでるの。
オーラとか威厳とかないかもしれませんけど、あなたの主人なのー!!
もう少し敬意を持っていただきたいわ。ふんっ。
本当になんでしょうね全く。
私には、このくらいの近い距離感は接しやすいからいいか。
当日
「お嬢様のお友達ですもの。
既に、メグ様へのお迎え馬車を向かわせております」
「もうお迎えに出ちゃったんだ」
「何かご心配でもございましたでしょうか」
「ううん、一緒に行ってそのままメグ嬢とお出かけも良いかと思ったの」
「お昼を一緒に召し上がった後に散策に行かれても宜しいかと」
「そうするわ」
そうこうしているうちに、メグが我が家に到着した。
「休日にマリーちゃんに会えるの、あたし本当に楽しみにしての」
私はメグを出迎え、自室にへと招く。
「マリーちゃんさえ良ければ、侍女の方とも一緒にお話したいなって」
「えぇ、勿論良いわよ。
お茶は、そうね、パティほど美味しくは淹れられないでしょうけど私が淹れるわ」
訪問という名の我が家に遊びに来たメグは、上目遣いで私に尋ねた。
私の答えを聞いた者が「美味しくお茶を入れられる使用人を読んで参ります」とダッシュで部屋を出て行く。
気のせいか一瞬で消えて、すぐさま他の使用人と共に部屋に戻って来た。
私はメグとパティを含めた侍女たちと一緒にテーブルにつき女子会となる。
しかし、何故だろう。
私を放置して皆で「マリー様って~」と、キャッキャウフフしている。
え?私がマリーさんよね?わたしここよ。
なんで本人の前で本人無視して本人のこと話してるの?
マリーさん放置して、マリーさんの内容で皆が楽しんでらっしゃるの?
「マリーちゃんのように魅力的な方と毎日一緒に過ごせてとても嬉しいんです」
「わたくしもです。マリーお嬢様にお仕え出来て本当に幸せなんです」
君たち、異常にマリーの事好き……いや、持ち上げますね?
何コレ怖い。
自分では分かんないけど、ちゃんと人間扱いしてるから?
メグはもちろん、侍女を含めた使用人たちに関しても。
私に対して皆、思うところはあるだろう。
特に今までのメグはアカデミーで独りぼっちだったから。
「お友達になりましょう」と、マリーから声を掛けていた。
にも関わらず、それ以来マリーから近づくことは無かったのだ。
マリーが公爵令嬢という立場上、他の子たちも追随するしかなかったはず。
「殿下はただ気を遣って下さってただけで恋人どころか友人ですらないんです」
いつも一緒に過ごしていた理由です。とは言ってはいたけれど。
ふふんっ、私は知ってるんだよ。
2人の心は既にお互いに首ったけだと言いう事を!!
分かりやすく2人が進展したら恋バナと称して聞いて差し上げよう。
くっくっく。
「フクリコウセイ?」
「あ、その話は他家の方には」
耳に入った福利厚生。
さすがに私はその話に待ったをかけた。
急にあなた方の視線が冷たくなりましたね。気のせいでしょうか。
「この話は当主である父から、出来る限り内々でと言われているのです」
「そうだったんですね。なら無理には聞きません」
しょんぼり顔のメグ。
仕方ないよね、昇給があるとか有給とか年一の健康診断とか。
他のお家の使用人さんたちにばれたら、バランス取れないと思うのは当然だもん。
「あ、でも。使用人に対する福利厚生ではなく、福利厚生という考えについてなら」
「メグ様。わたくしが説明いたします『『私も』』」
また、私を皆がおいて行って楽しくおしゃべりするのね。
マリーさん、しょんぼりしてきちゃった。
私はまだこの体に馴染んでいない。
自分の話をされているのに、実感できない。
心と体が離れているのがよく分かる。
「たかが」あと一年。
「されど」「まだまだ」あと一年。
こんな気持ちで、私はこのまま過ごさなければいけないのかな。
そうだった。
私の近い未来に誰かと恋バナを楽しむなんて、私自らが望んでいなかったんだった。
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