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主人公、悪人頑張ってみた

 私マリーさん。私室に軟禁されてるの。


 図書室に行こうと思ったんです。

 でみ侍女たちが「かわりに読みたい本を持ってくる」からと

 部屋から出してくれなかったんです。


 体力戻すためにお散歩がてらとか言っても「今日は」とかなんとか言われちゃいまして。

 過保護にされてるんです。



「ん~~~」と、私はベッドに胡坐かいた。

 さすがに、やることが限定され過ぎていて困る。


 こんなのんびりした時間は本当に久しぶりだなぁ。と、またコテンとベッドに横になった。



 あれだけ消えてしまいたかった自分の気持ちは少しずつ解けていっている。

 奥底にある絶望感は拭えないけれど。


 奥底の気持ちは目が覚めてしまったことに対してへの、絶望感かもしれない。

 それともあまりにも長く抱えていた感情だからなのかもしれない。



「何で目が覚めちゃったのかなぁ」

 ベッドの上でジタバタしていると扉からノックが聞こえた。


 なんか面倒だし寝たふりしよっかなー。

 あ、でも資料持ってきてくれたんだっけ。



 仕方ないわねーという気持ちと共に「どうぞ」と言いってベッドに座った。


「マリーお嬢様、お薬とご希望の歴史書です」

 メイドの女性は水薬と数冊の本と入って来た。

 あの薬クソ不味いやつじゃん。

 しかも、何故か異常に気分が上がるやつ。


「うえぇ」って表情をしていたんでしょうね。

「ちゃんとお召し上がりになって下さいね」ってにっこりされちゃった。

 そして彼女は伸ばしていた足に、丁寧に布団を掛けてくれる。

 

 私は高圧的に出て、窓からこの薬流してやろうかしら!?

 と、思っても献身的な侍女さんにそんなことできないよね。


「マリーお嬢様が幼い時に、お薬をこっそり捨てていたことを思い出してしまいました」ですって!?

 私の今の気持ちバレちゃったらしい。

 

「そ、そんなことする訳ないじゃない」

 無理矢理流し込んでやると「どうぞ」と口直し用の小さな菓子を手渡してくれる。



 このメイドさんマリーが幼い時から仕えてくれてたんだもんね。

 でも彼女の名前ちゃんと知らないんだなぁ。


 マリー昔、本当にひどいよ。あんた。

 ちゃんと仕えてくれる唯一といっても良い侍女さんに対して。

 名前覚えないなんて。



「ねぇ、パトリオットだったわよね。あなたの名前」


「パトリシアと申します」

 もう嫌そうな表情すらしなくなってしまったのよ、彼女。

 マリー昔に何度も名前を聞かれてるし、間違えられているから。


「そう、パティね」

 流石にパトリシアことパティは、きょとんとした。


「愛称って事でどう?」

 いやね、名前間違えるのもアレだし覚えないのもね。


 でもさぁ、今後のことを考えると味方は少ない方がいい。

 一緒に斬首刑に巻き込まれては申し訳ないじゃん。


 そこでよ。雑な名前を付けるというとっても小さな嫌がらせ。

 悪人になるための第一歩です。はい。


「承知いたしました、マリー様」

 

「あ、なんかごめん」


「え?」

 小さな声で言ったつもり、パティには聞こえていたらしい。


「ううん、これからもよろしくってこと」

 誤魔化すように笑って伝えると、彼女はマリー昔が見たこともないような表情をした。


 

「ゆっくり読むから、もう下がって」

 パティに部屋を下がらせた後、私は一人溜息を付いた。

 


 マリー昔にとって、使用人は存在しないのも当然だったのだ。

 封建社会だからだろう。

 

 現代……21世紀で育った私には、よく分からない感覚。



 分からないなりにマリー昔の感覚を共有させてもらい、感じることは出来た。

「王族、貴族、聖職者以外は人権無い」

 


 だからマリー昔が、平民であるメイドたちに高慢ちきに振る舞うのも当然だ。

 マリー今である私も、本当ならそうするべきなんだろう。


「こんなんいらないわよっ」

 と、不味い水薬を持ってきたメイドのパティに掛けるくらいの事した方が良かったのかもしれない。


「でもなぁ」

 私は呟き、ベッドの上で膝を抱えるように小さくなった。



『何度言えばわかるのよ』

『もっと自分の頭使いなさい』

『出来ないなら始めから言えばいいのに』

 今までさんざん聞かされてきた、お局の声が頭の中にこだまする。



「いくら人権無くてもなぁ」

 ミスを叱られるならまだしも、人格否定に近いことはね。

 私がしたくないし。

 されてしまった時の痛みは、充分すぎるほど理解しているから。


 

「とりあえず」

 私はパティが持ってきてくれた本を置いてくれた机に向かう。

 今は考えなきゃいけないことが山ほどあるからね。


「今まではスマホで簡単に調べられたのに」

 ぱらぱらとフルーム国の歴史本をめくる。

 何だこれ、神話とかじゃないんだよ。


 私を気遣ったくれたのだろうか。

 絵本とまではいかないが、子供向けっぽい。

 マリー昔のことを思えば、パティたちの本の選択も仕方ないかもしれない。


 家に図書室があるというのに、一切興味を持たなかったマリー昔が悪いんだもんね。

 引いては私が悪いのだ。



 本当はさ『犯罪について』書かれた本探したかったんです。

 せっかくなら国を揺るがしたほどの今までの犯罪。

 

 歴史が書かれた本なら、国の転換期に起きた罪なんかが見つかるかなぁって。


 もちろん私の未来の為。

 

 本が当てにならなかった。


 仕方ない、思いつくままに「すごい犯罪」書いてみるか。

「国を壊すほどの勢いってことは……」


『国庫を減らす』

『戦争を起こす』

 ……。



「ぜんっぜん、わかんない」

 私の頭で考えるのはやめよう。

 とりあえず、嫌われるように徹底すれば国中から嫌ってもらえるよね!!

 知らんけど。

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