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ルージュの巻き込まれループ人生〜誰なの!?何度も死に戻ってるのは!〜  作者: 阿井りいあ
2章

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85/111

85 結構大事な情報だよ、それは


 さて、今日はベル先生とともに冒険者ギルドへ来ています。

 リビオを通じて話を通してもらっていて、今はギルマスのバンさんの計らいで個室に案内されているんだけど。


「ルージュ!!!!!」

「わぁ、ラシダさん」

「うぅぅぅぅ、ルージュ、ルージュ、ルージュ、ルージュぅ!!!!」


 うん、なんか、言いたいことはすごく伝わった。だからそんなに頭を胸にぐりぐりしてこないでぇ!

 耳が、耳が……ふわっふわだぁ。ちょっといいかもしれない。ふふ。


「アタシという人生の大先輩がついていにゃがらっ、もうっ、本当に大反省だにゃ! ごめんにゃ、アタシの宝物なんでもあげるにゃ!」

「いやいや、いいよ。その気持ちだけで十分」

「うあぁぁ! ルージュが良い子すぎて、アタシの良心がジクジク痛むにゃぁぁぁ!!」


 頭グリグリが再び始まった。うーん、しばらくかかりそう。

 せっかくなのでふわふわのお耳を堪能させてもらっちゃおう。はー、癒し。胸は痛いけど。


「こら、ラシダ! そろそろ離れてやれ。謝られるほうも気まずいもんなんだぞ」

「んにゃっ、離せー、イアルバンの蛮族ぅ!」

「誰が蛮族だ、この猫娘!!」


 急に背後から現れたバンさんによって、ラシダさんが引きはがされた。ありがたいような、残念なような。

 首根っこを掴まれてジタバタする様子は本当に猫ちゃんみたいでちょっとかわいい。失礼になるかもしれないので黙っておくけど。


「ルージュ、一応俺からも謝罪するわ。元仲間の不始末で迷惑をかけたな」

「そんな、誰のせいでもないから。それこそバンさんが謝るのは違うよ」

「ん、そうか? ならもう言わねぇ。たぶんいろんなヤツにこうして謝られまくったんだろ? そりゃあ辟易とするわな」

「ははは、ご明察ぅ」


 元も子もないことをおっしゃる。でもバンさんくらいあっけらかんとしてくれたほうが助かるね。


 そうこうしている間にラシダさんがバンさんの手からくるんとバク転して逃れた。お見事!


「わかったにゃ。アタシももう謝るのはやめる! でも、今後はルージュの頼みならにゃんでも聞くからにゃ! 全財産寄越せと言われたら、全部あげ、あ、あげ、あげるにゃ……」

「そ、そんな頼みはしないから安心して、ラシダさん」


 後半になるにつれ耳と尻尾が垂れていくのを見て慌てて否定してあげる。お金大好きなラシダさんにそこまで言わせてしまうとは……! こちらこそごめんね?


「んで、リビオから聞いたが……なんでも俺ら二人に話したいことがあるんだって? ラシダはわかるが、どうして俺も?」

「それは……きっとバンさんも、今後の戦いの主要戦力になると思うのと、その」


 なんか面と向かって言うのは今更ながら照れるな……。

 落ち着かなくて視線を逸らし、人差し指をツンツンしちゃう。


 チラッとベル先生のほうに視線を向けたけど、この部屋に入ってからというものニコニコしながら様子を見守る姿勢を崩さない。くっ!


「お二人なら。えっと、元勇者パーティーなら、信用できると思ったから……」


 なんだこれ、ハッキリ言ったほうが恥ずかしくなかったかもしれない。

 いや、どっちみち恥ずかしかったかも! 急になに言ってんだ? って思われたかな?


 しかし数秒ほどの間を置いて、バンさんがぽんと私の頭に手を置いて優しい声で答えてくれた。


「嬉しいことを言ってくれるなぁ。なら、期待に応えねぇとな」

「んにゃ! なんでも聞くにゃ! もちろん、秘密も守るにゃー!」


 ラシダさんも私の顔を下から覗き込むようにしてニッと明るい笑顔を見せてくれる。

 え、えへへ、言って良かった。二人とも優しいなぁ。


 こうして私はループのことを二人に打ち明けた。あ、もちろんベル先生がね。

 すでに三回目なのでベル先生の説明も慣れたものだ。


 毎回、打ち明ける時は緊張するけど今回もすごくドキドキしたよ。だけど、この二人もこれまでのみんなと同じで、最後まで真剣に聞いてくれた。

 驚いてはいたけど、ちゃんと信じるって言ってくれた。


 ……つくづく今回の人生は人に恵まれすぎているよね。


 ラシダさんとバンさんはこれまでのどの人たちよりも暗黒騎士を味方につけるという件について受け入れが早かった。

 気に食わないけど戦力にはなる、というのを誰よりも身に染みてわかっているからかもしれない。


 普段から依頼などで戦いの場に出ることが多いからこそかもね。

 もちろん不服さは隠しきれていなかったけど、こういう場において何を優先させるかをちゃんと判断できる人たちなのだ。さすがである。


「それにしても、サイードのやつはえげつねぇな。こんな魔道具を作っちまうなんて」

「やることもえげつにゃいにゃ。やっぱり今もベルナールが憎いのかにゃぁ……?」

「仕方ないさ。彼は僕に怒る権利がある」

「ベルナールがそんなんだから、サイードも調子に乗るんだぞ? ルージュに手を出された以上、お前もサイードに対する態度を考えたらどうだ」

「まぁね。娘に手を出したっていうなら話が変わってくるよね」


 ……ん? んんん?


 バンさん、ラシダさん、ベル先生のお三方。なんだか、聞き捨てならない内容の話をしてませんか。


「ちょ、ちょっと待って。サイードさんって、その。ベル先生のかわりに魔王討伐の旅に出たっていう魔法使いだよね? どうしてそこでサイードさんが出て……え、あ、まさか」


 まるで、この魔道具を作ったのがサイードさんだって言っているみたいだったよね!?


「おい、ベルナール。言ってなかったのか?」

「あ。忘れてた」

「おい」


 思わず立ち上がると、バンさんが呆れたようにベル先生を見ていた。

 忘れてた、じゃないんだよ。ベル先生、そういうとこ!!


「暗黒騎士とともにいたという仮面の男は、まず間違いなくサイードだよ」

「えぇ……?」


 なんか、こう。ものすごく驚いてはいるんだけど。

 今言うの? とか、そんなあっさりとか、どうして? とかの気持ちが混ざり合って脱力してしまったよ。


 ただ、妙に納得もしている。そっか、フクロウ仮面はサイードさんだったのか。いや、サイードでいいや。敬称はいらない。


 あー、あー、思い返してみればベル先生の名前を聞いて過剰に反応していたもんね。なるほど、そういう因縁があったわけだ。


「フクロウ仮面……その、サイードはノアールを崇拝していたけど。元々そういうタイプの人なの?」

「あー、そうだにゃ。サイードの基準で尊敬できる人を見つけると、これでもかってくらい敬うところはあったにゃー」

「最初はベルナールも崇められていたな。でもそれ以上にビクターか」


 あ、そうなんだ。たしかにあの人、常に誰かを崇拝してそうな雰囲気ある。

 独自の世界に引きこもって入るけど、崇拝の対象の言うことは絶対! みたいな過激派なとこあるよね。


「ビクターに対する視線は熱かったね。僕以上に傾倒したんじゃないかな。魔法を使わずにあれほどの強さだったのと、調子に乗らない物静かさがサイードにとって素晴らしいと思えたのかもね」

「ベルナールは実力の高さを堂々とひけらかすもんにゃ」

「人聞きが悪いなぁ。僕が優秀なのは周知の事実なんだから謙遜したって意味がないだけさ」

「そーいうとこにゃ」


 あー、たしかに。ベル先生に憧れる人も尊敬する人も多いけど、みんな最終的には呆れてしまうんだよね。その気持ちはわかる。


「で、今は暗黒騎士を崇拝、か。ちょっと納得いかねぇなぁ。ビクターを殺した魔王の一派を、あいつが許せるとは思えないんだが」

「だにゃ。よっぽどのことがない限り、ビクターの仇の味方になんかならにゃい気がするにゃ」

「その辺りはやはり、よほどのことがあったと考えるしかないね」


 よほどのこと、か。ふむ、そういうことならフクロウ仮面に、どうしてノアールを崇拝しているのか聞いておけばよかったな。

 ま、覚えていたら再会した時にでも聞いてみようっと。


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