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66 こういう場に来る人たちってたぶんネジが外れてる


 今回、この地区の洞窟を担当するパーティーは四つ。

 ラシダさん筆頭の私たち四人と、リビオが所属する五人のパーティー、それから四人のパーティーがあと二つかな。


 魔法使いは私とジュン、クローディーだけで、あとは全員物理攻撃特化だ。

 まぁ、冒険者といったらそれが普通だからね。大体は前衛二人に、後衛二人って感じのバランスだ。


 私たちのパーティーで言うなら、ジュンが前衛でラシダさんが前衛兼斥候、私とクローディーが後衛になる。

 でも、クローディーはどちらにでもなれる。ジュンが結構な人数の身体強化魔法をかけられるからね。

 もともと力も強くて動けるクローディーなら前衛も務められるってわけ。


 私は非力で小さい子どもなので前衛は無理。結界を張れば守れるけど、攻撃もできなくなっちゃうし。

 一撃でも当たれば致命傷になりかねないのでとてもじゃないけど前には出られない。


 安全な結界内で魔法をバンバン打っていくのが私の仕事。

 攻撃魔法や補助魔法を臨機応変にかけなきゃいけないからちょっと難しいけど、これも経験だからクローディーたちはあえて指示を出さないとのこと。


 優しいし無理はさせないけど……クローディーはあれで結構スパルタなのだ。


 しかし、いつもの三人でもかなり強力なチームなのに、ラシダさんも加わったらもう無敵だよね。どんな敵にも負ける気がしない。


 だって私が時魔法で相手の動きさえ止めてしまえば、他の誰かが敵をフルボッコにしちゃえるんだもん。


 部分的な時止めなら数時間はいける。魔力は有り余っているので枯渇の心配もない。

 これでも減らしてるんだけどね、ドゥニ特性の魔法陣で。

 だから本当はこの地区の洞窟も私たちだけで制圧できる。


 でも今回、私は時魔法を使わない。

 強力な魔法すぎるから変な人たちから目をつけられないために、本当にピンチの時以外は使わないようにとベル先生から言われているのだ。


 楽できないのは残念だけど、他の魔法の練度を上げるための修行だと思って参加しようと思っている。


「こんなお嬢ちゃんに何ができるってんだ! ママのとこに帰んな!」

「あんたら! か弱い女の子に頼らなきゃいけないくらい切羽詰まってんのか! 魔法使いってやつは……」


 ただねー、こういうお節介な人たちもいるんだよね。やれやれ。


 彼らも悪意があって言っているわけじゃないってことはわかる。

 子どもの私を参加させるなんて危険だ、周りの大人が止めるべきだろ、と至極真っ当なことを言ってくれているわけだから。言い方は考えたほうがいいと思うけど。


「魔法使いだからこそ、年齢関係なく実力があれば出陣できるのだ。ルージュは確かにまだ子どもだが、実力は魔塔でも上位に入る」

「なっ、そんな子どもが……」

「体一つで戦うわけではない魔法使いを見た目で判断するのは危険だぞ。それに、無害そうな子どもや老人の姿で襲ってくる魔族もいると聞く。いざという時、油断は命取りになるぞ」


 こういう時、クローディーが冷静に対応してくれるから助かるよね。ジュンだったらすぐ喧嘩になっちゃう。


 ちなみにクローディーの言うことは正論だ。魔族って卑怯な手を平気で使ってくるから。


 よく言えば生き残るための知恵なのだろうけど、敵である我々人類にとっては脅威だよ。魔族に騙されて命を落とした人間は数えきれないのだ。


「みんな、ルージュは本当に大丈夫だぞ! 俺も真剣勝負したらやばいなって思うもん」

「だはは! お前が弱いだけなんじゃねーのか? リビオ!」

「違うし! ルージュが強いんだよ!」


 突然、元気な声が聞こえたと思ったらリビオか。

 褒められたのはうれしいけど、あんまり本気にされてないぞ。


 でも、からかってくる人たちも冗談で言ってるのはわかる。

 私の実力はまだ疑っているだろうけど、頭から否定はしなくなったって感じかな。


 チラッとこちらに視線を向けたリビオがパチンとウインクしてきた。ふむ、なるほど。

 場が和んで私のことはうやむやになったから結果的に助かったよ。リビオ、やるじゃん。


 そうこうしている間に集合の合図を出され、みんなそれぞれ洞窟前に移動し始めた。


 いよいよ合同での依頼か。リビオと一緒に戦いの場に出るのも初めて……ではないのかもしれないけど覚えてないから初めてってことで。


 とはいえ、集まったのは場慣れしているプロばかりだし、最初の内は私のやることはあんまりないとは思う。

 分かれ道に差し掛かったらチームごとにばらけるらしいからね。それまでは他の人達の戦い方を見学させてもらうつもりだ。


 冒険者たちって自分の力を見せたがるし、みんな張り切ってるし、やりたい人がやればいい。


「ルージュ! 俺の戦うところ見ててよ! 実戦をお披露目すんのは初めてだろ!?」


 あ、ここにもいたわ。見せたがる人が。


「ねー、聞いてる?」

「聞いてる、聞いてる」

「絶対見てろよ? 俺のかっこいいとこ! あ、ルージュが戦うところも見せてよ。すげぇ楽しみ!」

「リビオ、気を抜きすぎじゃない? これって仕事なんだよ? 遊び感覚でいたら困るよ」

「わかってるってー。大丈夫、油断は絶対しないから」


 本当かなぁ? すぐ調子にのるからなぁ、リビオは。


 ま、今だけだろうけどね。

 リビオがやる時はきちんとやるヤツで、すごく強いってことはよく知ってる。

 ふぅ、私も気を抜かずにがんばろうって思わされちゃうね。


「怪我に気をつけて、お互いがんばろうね」

「おう! ……意外と落ち着いてるんだな、ルージュ」

「これまでもたくさん訓練してきたもん。もしかして、緊張を解そうとしてくれてたの?」

「へへ、まぁな! でも必要なかったみたいだ」


 どこまでもいいヤツだ、リビオは。

 緊張はそんなにしてないけど、元気は出たから無駄ではない。


「よし! みんな行くぞ!」


 部隊のリーダーらしき人が声をかけ、私たちは洞窟に足を踏み入れた。


 その瞬間、魔物特有の嫌な気が風に乗って感じられて、不快指数が上がる。


「強い個体がうじゃうじゃいるにゃー。これは骨が折れそうだにゃ」


 ラシダさんがそう言いながらも獰猛に笑っていた。


 お金のために依頼をこなす人だと思っていたけど、戦闘狂でもあるっぽいね?

 というか、ふと周囲を見渡せば全員そんな感じだ。


 あれ? 戦闘にそこまでワクワクしていないのは私だけじゃない?

 おかしいな、私の感覚が普通だよね? 普通だよね?


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