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木の外に出るとリクオルに魔法で元のサイズに戻してもらう。

元のサイズになったリュックから、香水瓶を一本取り出すと、今度はそれだけ十倍のサイズにしてもらった。


クリスタルイーターたちは精鋭が十人ほどついてきていた。

わたしは彼らに頭からばしゃばしゃとその香水を振り掛けた。


「うひゃっ、冷たいっ。」


「これは、なんの匂いですか?」


クリスタルイーターたちは鼻をひくひくさせて香りを嗅いでいる。

この香りは彼らにとって不快なものではないようだ。


「ぐへっ、なにそれ、くさっ!」


鼻を抑えて盛大に文句を言ったのはリクオルだった。


「うえっ、気持ち悪っ。」


ひどい言われようだ。


「これは虫よけの香り。」


これが苦手ってことは、やっぱリクオルって、虫?


「うそだっ。そんな変な匂いっ。

 お、オレっ、耐えらんないっ。」


鼻を抑えたままリクオルはひゅっと遠退いた。

ちょっと離れたところから大きな声で言う。


「これだけ離れててもまだ臭いっ。」


あー、なら効果はありそう、かな。


「リクオルはちょっとここで待ってて?」


「やだっ!」


「クリスタルのたくさん生えている谷は、ここからそんなに遠くないらしいし。すぐに帰ってくるから。」


「やだっ、オレも一緒に行くっ。」


「でも、虫がいっぱいいるし。

 リクオルにはこれは無理でしょう?」


そう言ってわたしは残っていた香水を自分の頭からばしゃばしゃかけた。


「ぐへっ!ジェルバちゃんも臭いっ。」


なによ、それ。人聞きの悪い。


「ふえ~ん、目がしぱしぱしてきたよぉ~」


リクオルは涙目になっている。


「いいから、リクオルはここにいてよ。」


リクオルは一瞬、むっ、とした顔をしたけど、匂いには勝てなかったらしい。


「分かった。じゃあ、これ。」


息を止めて近づいてくると、わたしに金色の石ころをひとつ手渡した。


「なに、これ?」


「金色の粉を固めた石。

 なんかあったらそれを投げて。

 そしたらどんだけ臭くても、ジェルバちゃんのこと助けに行くから。」


「そんな心配しなくても大丈夫だよ。」


どんだけ臭くても、というところに笑ってしまう。

そんなに臭いかなあ?

わたしにはむしろいい匂いなんだけど。

でもリクオルの心配してくれてるのが伝わってきて、なんだかちょっと嬉しかった。


「分かった。有難くもらっとく。」


まあ、お守り代わりだ、とポケットにつっこんでおく。


「無理はしないでね?

 森のなかには危険がいっぱいあるんだから。」


リクオルは心配そうに眉を顰めている。

いやいや、そんなことは、毎日森に入ってるわたしが一番よく心得ておりますともさ。

それに、そんな大冒険に出かけるわけでなし。

すぐそこの谷にちょこっとクリスタルを拾いに行くだけだよ。


「じゃ。」


軽く手を挙げて、わたしはクリスタルイーターたちと一緒に出発した。



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