表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/85

ホワイトすぎるホワイト領

目を覚ますとベッドの上。


俺はホワイト領の兵士に助けられてそのまま意識を失った。


その後の記憶が無い。


部屋を出て階段を降りると受付の人と目が合う。


俺と同じくらいの年齢。

髪は長く、金髪に青い瞳。

少し幼いが異様に整った顔に白いシンプルな制服。

「おはようございます。体調はいかがですか?」

心配したように顔を覗かせる。


「おかげで、助かった。でも、金が無いんだ。返せる物が無い。」


「お気になさらないでください。まずは椅子に座りましょう。」


俺と少女はテーブルのある椅子に腰かける。


俺はガタガタと震えはじめる。ベットから起きて、薄着のまま来た為、体が冷える。

いや、食べていないから、体が冷えるのか。


「今すぐ毛布を取ってきますわ。それと食事の用意をお願いします。」

少女の言葉で、他の受付の者が食事を取りに行く。


少女はすぐに毛布を持って戻ってきた。

俺の肩にやさしく毛布を掛ける。


湯気の立つスープとパンが運ばれてくる。

テーブルに置かれると同時に俺はスープを急いで口に入れる。


舌が熱い!でも、体が暖かくなってくる。

俺は詰め込むようにパンとスープを平らげた。


その様子を見て周りの人間が集まってくる。

少女は食べ終わるまでじっと俺を見つめる。

食事に夢中な俺に気を使ってくれたんだろう。


俺が食べ終わり一息ついたタイミングで少女が口を開く。

「自己紹介が遅れました。わたくしの名はリコ・ホワイトですわ。以後お見知りおきを。」

リコ・ホワイト、この領地の血縁者、家名持ちは貴族の証だ。

俺やエステルは名前のみで家名を持たない。


「俺の名はハルト。ブラック領を追放されてここに来た。」


「よろしければ、追放されるまでの経緯を教えて欲しいのですわ。」






俺は今までの経緯を説明した。

俺の周りには部屋の全員が集まっていた。


周りにいた中年の男性が、泣き出す。

「馬鹿野郎、この野郎!目にゴミが入っちまったぜ!」


「ゲンさん、今は話中だから静かに。」

周りの男が注意するが、ゲンはずっと涙を流して泣き続けた。


「つらい話をさせてしまいましたわ。しばらくゆっくり休んでください。」


「でも、俺は金を持っていない。金を稼いで返したい。」


「いけません!しばらく安静しませんと!仕事の話は元気になってからですわ!」


「ガキが遠慮してんじゃねー!休みやがれ!」

ゲンも俺を止めに入る。


他のみんなも俺を休ませようとする。

ブラック領ではありえない対応だ。


親がおらず子供一人なら、普通は、死ぬ・冒険者になる・盗賊になる

この3択だ。

運よく冒険者以外の安全な仕事に恵まれる可能性は、かなり低い。


俺の目から、自然と涙がこぼれていた。


リコが立ち上がり、俺の背中を撫でる。






俺は2日間、みんなの世話になり、無事回復した。


ホワイト領は、明らかにブラック領とは雰囲気が違った。


皆優しく、冒険者がマウントを取ってこない。

それどころか「頑張れよ!」と優しく声をかけてくる。


何の見返りもなく俺を助けてくれる。


リコは貴族なのに、みんなと普通に話をしている。

普通は貴族が来たら距離を取る。

下手をすれば、そこら辺の犬のような感覚で平民は殺される。



そろそろ俺もお返しをしよう。

黒い制服の腰に、包丁を装備する。

「リコ、ダンジョンに行ってくる。」


リコは俺の顔をみつめる。

「まだ治っておりません。明日からがよいですわ。そうだ、この領を案内いたします。」


「借りを早く返したい。」


「いけません!いけませんよ!今日はホワイト領の案内をさせて頂きます。。さあ、行きますわよ。」

リコが俺の手を取る。


仕方がない。

今日は街を見て回ろう。


建物の外に出ると、大きめの十字路に施設が密集しているのが分かる。


「今出てきたのが総合ギルド、横に総合販売所もありますわ。道の反対側にはダンジョン、学園、学校が並びます。」

学校は6才から9年間通い、学園は15才から3年間通う。

この国は学校にも学園にも通えない者が多い。

通えるのは裕福な者か貴族か、親にコネがある場合だけだ。

俺は親のおかげで学校に通うことが出来た。

と言っても退学処分を受けてしまったわけだが。


俺は改めて辺りをぐるっと見渡す。

「うん、大事な施設が密集してて、暮らしやすそうだな。」


「その通りですわ。冒険者の方や学校、学園の方も暮らしやすいよう考えられております。」

リコは眼を輝かせた。

「さらに宿屋、酒場も近くに建てられております。今日は主要施設すべてを案内いたします。」





俺は一日かけて街を案内された。


ホワイト領の人口は約3000人。


街の外側に農場、畜産、釣り場が囲うよう作られ、山、川、森、草原と自然が豊かな場所だ。


何より町の人の表情が良い。


孤児院に多くの費用を使っている為、領主は貧乏なようだが、町の人間がのびのびと生活できているのが伝わってくる。

領主は王家の手伝いの為、常に王都におり、リコが代理で運営を任されているらしい。

リコは天才なのかもしれない。


ホワイト領の主要な利益は学園と学校だが、定員割れが続き、しかも出た利益のほとんどを孤児院の運営費に使っているらしい。

後は、農業、畜産、魚釣り、魔物狩りや素材採取で細々とやっているようだ。


俺はベッドに入る。


「早く明日にならないかな。」


明日から魔物を狩って、早く強くなるんだ。


俺はワクワクしながら眠りに落ちた。



この後、ハルトは覚醒し、驚くべき速さで成長していく。

そしてその力でホワイト領を救っていくことになる。

最後までお読み頂きありがとうございます!ここまで少しでも、ほんの少しでも面白いと思っていただけた方はブクマ、そして下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ