ポーション投資
キュキュクラブがギルドに入るとみんなが驚愕する。
「エステル、メイ、ぼろぼろじゃない!」
「ハルト!魔物狩りの度が過ぎますわ!」
「違う違う!ボロボロなのは服だけだ!」
俺は慌てて説明する。
「きゅう」
きゅうにリコと受付嬢が反応する。
「キュキュですわね。かわいらしいですわ。」
きゅうの周りに他の人も集まってくる。
きゅうはしばらく可愛がられた。
受付嬢とリコが思い出したように戻ってくる。
「新しい服を用意するわ。その後サウナに行きましょう。きゅうも一緒に行こうね。」
受付嬢がエステルとメイを連れて販売所へと向かう。
「サウナが出来たのか!俺も行きたいぞ。」
どんどんホワイト領が発展してるな。
「ハルトは魔物の受け渡しからです。」
俺はリコに押されて魔物の受け渡しを済ませる。
さらに農地開拓、住宅供給、加工食品系の工房の増設の投資の手続きを済ませる。
手続きが終わった頃に、エステル・メイ・きゅうが戻ってくる。
エステルとメイはサウナと服の買い替えで全身がきれいになり、顔が少し赤らみ、うっとりとした表情を見せる。
きゅうもブラッシングされたのか、毛がサラサラになっていた。
「俺もサウナに行きたい。」
「その前にキュキュクラブの皆さんには学園に入学して欲しいのですわ。」
「学園か、俺は入るけどみんなはどうなんだろ?」
「入るよ。」
「私も入りたいです。」
「ありがとうございます。みなさまには、生徒という立場で入学して貰いますが、どちらかというと、導く者、先生としての役割を期待したいのです。学園の費用はこちらで負担させていただきますわ。」
「それともう1件、キュキュクラブの皆様に投資のお願いをしたいのですわ。」
「投資と言ってもさっきほとんど金を使ったぞ。」
「今回お願いしたいのは教育訓練による投資、採取とポーションのスキルを持った方々の魔物狩りをお手伝いしていただきたいのですわ。」
「ポーションが不足しているのか?」
「その通りです。王からポーションの生産を増やすようにと、指示を頂きました。」
「ポーションと採取のスキル持ちのレベルを上げれば良いのか?」
「はい、ステータスを上げることでポーションの増産を目指します。そして、訓練参加者からは、ギルドの報酬の一部を少しずつキュキュクラブに支払う形を取りたいのですわ。」
「なるほど、それなら資金が無くても投資出来るな。教育投資か。早速サウナに入って準備をしてから向かうぞ。」
「今すぐに行ってほしいのですわ。」
「サウナに行く時間くらいはあるだろ?」
「それが、あそこに座っている方々全員が無職で仕事に困っているのです。」
50人ほどがぎっしり座り、俺達を期待するような目で見つめる。
俺達より若い子供も多い。
服もボロボロだ。
「わ、分かった。」
「助かりますわ。物資調達や班分けなどはギルドの者が同行して行いますわ。」
俺たちが立ち上がろうとすると、エステルが引き留められる。
「エステルは学園へ入学するための学力が足りません。毎日学校に通ってお勉強ですわ。」
エステルの顔が青ざめる。
「わ、私もキュキュクラブだよ!」
「ですがこのままでは学園に入学できず、みじめな毎日をおくりますわ。さ、お勉強ですわ!」
エステルはリコに連れられて学校へと向かう。
「・・・俺達もダンジョンに出かけるか。」
「そうですね。」
ダンジョンに向かうと、訓練参加者は4つの班に分けられていた。
午前に魔物狩りをする班
午後に魔物狩りをする班
魔物狩り済みの採取ポイントで薬草を採取する班
休息する班
この4つの班をローテーションで回し、俺の料理回復ブーストにより出来るだけポーションを使わずに訓練を行う作戦だ。
中々考えられている。
俺の役割は、感知スキルで魔物をおびき寄せ、料理を作る事だ。
メイはメイド作業全般。
きゅうも水魔法によるヒールと、経験値の祝福の効果で天使のような扱いを受ける。
いや、天使そのものと言ってもいい。
きゅうは天使なのだ。
俺が感知スキルで魔物を見つけ、石を投げておびき寄せる。
待ち構えていた13名の訓練者が魔物を囲んで一気に倒す。
「お、余裕だな。もっと増やすか。」
俺は何度も魔物を呼び寄せ、魔物を訓練者に誘導する。
食事を毎日3回作り、魔物が居なくなるとキャンプを移動する生活を半年続けた。
2か月で50人の教育を修了させ、それを3セット繰り返し、150人の無職者が職を得ることが出来た。
ポーションの生産量は激増し、ホワイト領の利益はさらに上がった。
その頃エステルは、
学校の先生に勉強を教えられ、空いた時間は木材加工のスキルで、木を加工する。
いつも元気いっぱいなエステルはしおれた花のように俯き、笑顔が消えた。
そして、
「皆さま、おつかれさまです。無事ポーションの増産とエステルの学力向上を達成できました。キュキュクラブはもうすっかり英雄ですわ。」
「そんなおおげさな。」
「本当です。今まで学校、学園と、1次産業だけの貧乏領地がこの3年で2次産業を生み出し、大幅に利益は増加しました。さらに、無職の者は大幅に減り、多くの方が仕事に着けるようになったのです。その効果によって、卒業後王都に流れていた高学歴の人材も徐々にこの地に留まるようになっているのですわ。キュキュクラブの恩恵は計り知れません。」
「それはリコたちの能力が大きいだろ。」
「そんなことはありません。キュキュクラブ、特にハルトが居なければ、今頃貧乏な領地でスライムにおびえる生活を送っていましたわ。それに今ハルトは英雄にしてこの領一番の投資家です。2次産業への投資はすべてハルトが関わっていると言って良いのですわ。」
確かにたくさん投資をしてきた。
不労所得だけで生活出来る。
だが、その利益をさらに投資に回してホワイト領の発展の為に使ってきた。
「ハルトのおかげでうまく行ってるんだよ。」
「ハルトのおかげで私たちも救われました。」
「きゅう。」
きゅうが俺に抱き着いてくる。
助けられたのは俺の方だ。
エステル・メイ・リコ、美人で性格の良い人間に囲まれて、さらに夢だったきゅうもテイムできた。
ブラック領にいた頃では考えられない生活を送れている。
「ハルトにお願いしたいことがありますわ。」
「なんだ?」
「トム&ジェニファーというパーティーにポーションを支援をして欲しいのです。」
「話を聞こう。詳しく話してくれ。」
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