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4.忘却と変化、静かな脅威

~新登場人物~

加嶋かしま

雨晴あまはら


 数学の授業。


 それは一番いらない授業だ。答えが一つしか出ないというのは現実とは背反している。人間は死ぬというひとつの結末にたどり着くということを教えたいのなら、それは極論すぎる。

 数学でいうところの1≒1000みたいなものだ。


 紛いなりにも人生を教えるのが学校なのだから、こんな醜悪な授業はやりたい人だけやればいいのではないのかと常々思っている。


「さて、じゃあ今日の授業では正弦定理についての話をするぞ~」


 いつも通りの授業。


 怠惰。


 そんな時。


 教室のドアからスーツを着た五人の大人たち(うち一人は子供)が入ってきた。


「ん…?あぁ、であるから、ここの等式に当てはめることで答えを出すことができるぞー」


 先生は一瞬そちらに目をやったかと思うとすぐに板書を再開する。しかしまわりの生徒や僕は何となくざわめき始めている。

 それもそのはず。今日は授業参観では無い。誰かが訪問してくるとも聞いていない。


「せんせーい!」


 ざわめきの中お調子者ポジションの雨晴が声を発した。それに応じて周りが静かになる。


「今日って外部の人たちが授業を見に来る日なんですかー?」


 そういって首を傾げる。そんな仕草に女子全員(男子も少人数)がときめいているところを見ると、可愛い男子も結構需要があるのかもしれない。


 閑話休題。


 雨晴の言う通り外部からの来客が授業を見に来ているのかもしれない。いやそれでも子供も一緒に入ってくるなんてことあり得るのだろうか?まぁそれで面白いことが起きるのならそれでもいい。


「いや、先生は今日来客があるなんて知らされていないが、まぁおそらくPTAかなんかの抜き打ち調査的なものだろ。このまま授業するぞ」


 そう言って授業を再開した。…これは自分にとって都合のいい状態だけをだけを選択するという選択的思考から来たものではないか?まぁ僕は面白ければいいから特に言及しないでいよう。


「…はぁ。外部からの侵略とかだったら面白かったのに」




 昼休みに入る。今日も例の空き教室へと足を運び、いつも通り一人で昼食をとる。いつもと変わらない昼食。


 見知らぬ誰かがこの教室に居たなら…などと妄想をする。ただ、それは期待空しく。まぁ、孟子の尽心下が読めただけ良いことにしよう。


 昼休みが終わる。いつもだったら退屈で仕方がないのだが、今日はいつもと違う一日。外部の人間は昼休みが終わっても後ろで立ち続けている。


 これは妄想が現実になるときも近いのではないのだろうか。

 しかし結局外部からの来客たちは本当に見に来ただけなのか、放課前の集会になっても教室の様子を見ていた。


(この人たちいきなり大変な事しでかさないかなぁ。そういう場面に遭遇したいんだけど。)


「じゃあ、今日の集会は校長先生からのお話だ!ひとつひとつの教室を回ってこられるから、ちゃんと挨拶しろよ。特に葦名!お前はいっつもぼーっとしてるんだからこの時ぐらいシャキッとしとけよ?」


 担任の加嶋先生が僕に話しかける。この先生はTop of 熱血教師のような人格の持ち主で、いつでもどこでも常にジャージで廊下を歩き回っている。


 そして、通りすがる生徒たちに時間関係なしに「おはよう!今日もいい天気だな!」と暑苦しいあいさつをしてくる。


 ちょっとぐらい礼儀礼節天候を重んじてほしい。ついでに時間を勝手に前後させないように、時間の概念も重んじてほしい。

 時間は一つの方向にしか進まないとエディントンも言っているし。


「はい。っていうかいつも校長先生の時はちゃんと聞いてるの先生知ってるじゃないですか」

「そうだったな!じゃあ安心だ!」


(校長先生か…今日はどんな話するんだろ。戦争の話かな、創作の話かな。)


 この学校の校長先生は世間一般の校長とは違い、だいぶ変わっている。

 というのも葦名という名簿番号一番がほとんど当たり前という苗字がクラスの席の一番後ろになってるのも校長先生のおかしな所の一角ではあるのだが、そのほかにも外国へ行って実際に経験した戦争の話などをしたり、自分の創作した話をプリントにしてみんなに配ったりすることがある。


 直近の話だと、異能力を使えるようになった人間が世界を変えていく話を書いていた。このように、結構突飛なことを行動に移したりするので、そこ目当てでこの学校に入る人も少なくないそうだ。


 校長先生が回ってくるまでの時間を僕は妄想で。みんなは加嶋先生との雑談で時間を潰していると、教室のドアががらりと開く。それと同時にみんなが一斉に挨拶する。


『こんにちは~』


「失礼。お久しぶり、皆さん。お元気そうで」


 容姿端麗、高身長、インテリ系眼鏡。敏腕公務員のような見た目をしている。とっても頭がよさそう。

 この服装からあんなぶっ飛んだ思考回路の持ち主だと気づくことは出来ないだろう。この校長先生を見るたびに、見た目は大事なんだと改めて実感する。


「さて、今日はお話…というか、みんなに教えてほしい事がありまして。おーい、皆さん少しこちらへ」


 そういうと後ろにいた五人を前へ呼び出す。ん?PTAからのお話?なんかこのクラスであったのか?不純異性交遊?犯罪系統か?とうとう妄想が実現するときが来るのか?何にしろ面白くなればそれでいい。


 やっぱり昔から僕のいるクラスや学校は特別なことが起きる。僕が小学校に入った年にはその小学校が閉校したり、中学校に入った年には僕のクラスは体育祭で全ての賞を取って優勝したり。高校に入ってもいろいろな事が起こってしまう。やっぱり僕は特別な存在なのだ。


「本当にこの中に居るのですか?…わかりました。皆さーん、少しいいですか?皆さんの中で異能を持っている人はいますか?もしいたらここで名乗っていただきたいのですが」

あれ…与一さん?

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