24.ここが本丸、ビルの一室
無二さんが初代さんを介抱し、凡さんが初代さんを担いでいく。
だいぶ歩くと、大きなビルが見えてきた。
「…ここが本丸ですか?」
「ああ、そうだよ。ここの一階から二階までは俺たちの本丸だ。そこから上は普通の賃貸だから、間違えてそこまで行くなよ?」
「あ、そんな感じなんですね。てっきりこのビル全体だと思っていました」
「僕に そんな 財力は ないよ。ここの ビル 丸々一個は 高すぎるしさ」
「そうなんですね…って間間さん!?いつの間に!?」
そこにはビルの塀に寄りかかる、先程までのきっちりとしたスーツを脱いでだぼだぼのパーカーを着た間間さんがいた。
「ん?みんなが ここに 着く気配が してさ。『一声かけてくれればよかったのに』って?そんなこと したら 驚かない でしょ?」
「いや、まぁそうですけど…」
「間間さん…。俺の索敵超えてくるのやめてくださいよ。っていうかどうやって超えてるんですか?」
「『毎回毎回意識外から話しかけられて心臓に悪い』って?んー。方法は企業秘密!まぁ、葦名君ならわかるかもね。葦名君 どうやって 超えてるか わかった?」
「…まぁ、何となく?心が読めるから、隙というか、心の死角がわかるんじゃないんでしょうか?」
「ふふ、君は 丁寧 すぎるし 自信が 無さすぎるよ。もっと 堂々と いこうぜ?『そんなことは出来ない。昔の自分と重なってしまうし、変わろうとしてるから無理』…ふふ、昔って。まだ 今日の 出来事だよ?昔に するには 早すぎるんじゃ ないかな?」
「…心を簡単に読まないでくださいよ。思ってることまで代弁されて、結構恥ずかしいんですけど」
「うん。ごめん ごめん、少し 意地悪 したく なっちゃった。あぁ、無二は どう思う?」
「私に話を振らないでよ。あんまり話すの好きじゃないの知ってるでしょ?」
「うん。でも、せっかくだから 知りたくて さ。」
「まったく。まぁ、私も唯一の意見に賛成だよ。昔にするには早すぎる。後悔するにも早すぎる。とりあえず、今は何をするにしても早すぎると思うよ」
「『哲学的すぎてわかりにくい。もう少しわかりやすくしてほしい』って?うーん、まぁ 私も そう思う よ。ただ、何を するにも 遅いことは ないけど、何かを 成そうと する時に 早すぎるって ことは 致命的だからね。駆け引きに すぐ 負けちゃうし」
「その考えも哲学的というか、入り組んでいて理解しにくいです…」
「え、本 当に?わかり に くかっ たら言っても らっ て構わな いよ?」
「だいぶ心揺れてるね。そんなに自分を大きく見せたら馬鹿みたいだよ?」
「…うぅ。いもう とに 当た りき ついね ぇ」
「姉は妹に気づきを与える存在でしょ?っていうか、双子なんだから姉も妹もほとんど関係なくない?」
双子か。…なんか別に驚きがないな。見た目も似てたし、声も似ていたし、対照的だったし。そこを鑑みると最初にその考えにたどり着いてもよかったかもしれないな。
「確かに 無二と 出会った 時点で 勘づいても よかった と 思うけど ね。まぁ そんな ことを 指摘しても 仕方がないし、とりあえず 中に 入らない?」
「そうですね、無二さんもそろそろ部屋が恋しいだろうし」
「凡君良く解ってるじゃん。そういう察しのいいところ好きだよ?」
「そうですか?あんまり察しのいい方では無いんですけどね、視線から早く帰りたいっていうのがひしひしと伝わってきてて」
「目付きが悪いって言いたいの?」
「いやいや!そういう事じゃないんですよ!?」
「かはっ、冗談だよ。それじゃあ入ろうか」
無二さんって冗談言うのか。などと考えながら、ビルへと入っていく。
…もしかしたらここが後戻りできる最後のラインなのかもしれないなどと考えながら。




