22.人知れず深まった仲
「おーい!大丈夫だった?」
無二さんがこちらの方を見て僕たちに話しかける。凡さんが支えてくれたから大丈夫。と言いたいが、大丈夫な訳が無い。
僕の命綱だった右腕の中の肉が恐らく切れてる。所々から鋭い痛みが走っている。もしかしたら骨も傷ついているかもしれない。ずきずきと痛んでいる。
まぁ、五階から落ちてそれだけで済んだと思ったら上々か。
…あ。
「は、初代さん!大丈夫ですか!?」
「はっちゃんは君を助けた後いきなり横になったよ!疲れたのかな?」
「いや多分それやばい奴です!初代さんの方は確実に腕の骨と肋骨折れてるんで助けてあげてください!」
「え、まじで!?わかった!今助ける!…そこらへんに太い枝落ちてない?添え木にするからさ!」
すぐに周りに太い枝が落ちていないか探してみるが、全く落ちていない。それはそうだ。太い枝なんて基本的に折れるものではないから、木にくっついたまま落ちるはずもない。
どうすればいいだろうか。何か代わりになるようなものは…。
そんなことを考えていると、凡さんがおもむろに準備体操を始める。
「…何してるんですか?」
「ん?枝がないから枝を折ろうと思ってさ。ないなら作ればいいだろ?」
「いや、それはそうなんですけど…」
まさかジャンプで枝を取ろうとしてるんじゃないよな?さっき突っ込んだ木には枝が三階あたりの高さからしか生えていないし、ジャンプじゃ到底届かないぞ?
「せーのっ、ほっ!」
凡さんが九mほど跳躍し、木に捕まる。太い枝を選定しているようだ。…そういえばこの人と最初あった時も五階の窓からこんにちはしてたもんな。
納得。
納得しねぇよ!は?その跳躍力は人知を超えてるって!
「おーい!これでいいですか~?」
「うん、そのくらいで十分!こっちに投げてもらっていいかな?」
「了解!気を付けて下さいね!」
ブォン!
下からでも空を切る音が聞こえそうな力で、無二さんの方へと枝を投げる。その枝はそのまま教室の中へと入っていった。
「うーん…。そうだ、そこの、えーと…まぁいいや!落ちていった子!この学校には保健室はあるかな?」
僕は落ちていったんじゃなくてあなたに落とされたのだが。
「まぁ、あるっちゃありますけど…。何を取ってくればいいんですか?」
「物事の把握が早くて助かるよ。包帯と睡眠薬を取ってきてもらっていいかな?」
「す、睡眠薬?包帯は添え木用だとして、睡眠薬って何に使うんですか?」
「え、そりゃあはっちゃんが帰る途中で起きて痛がらないためでしょ?君ははっちゃんの痛がる姿が見たいのかい?」
「いや、そういう訳じゃなかったんですけど…」
「じゃあ早くしてもらっていいかな?このやり取りしてる間にはっちゃんが起きちゃうかもしれないんだからさ」
…なんか話し方が癇に障るな。丁寧に丁寧に一つ一つ人の嫌がる所を触っていくような…。
無二さんはむしろ人の心を十分理解した上で逆なでしてるのではないのだろうか。
あれこれ考えているうちに、木の上から凡さんが下りてきた。
「…わかる。お前の気持ち。俺もよくあるからわかる」
「無二さんはいつもあんな感じなんですか?正直に言うとあんまり好きになれなさそうなんですけど」
「正直だなぁ。その思ってることを本人の聞えない範囲で話すの、案外嫌いじゃない。まぁあの人は普段からあんな感じだよ。さっき言った通り、普段はあの人自分の部屋から出ないしその部屋で何してるかもわからないから、普段がどうであれ、あれが普通の状態かは分からない」
「そうですか」
「ってか、そういえば包帯と睡眠薬取りに行くんだろ?早く行こうぜ?」
やべ、忘れてた。
「ほら、俺は保健室の場所解らないし、道案内よろしく頼むぜ?」
「わかりました、行きましょう!初代さんを苦痛にひずませるわけにはいきませんから!」
「そんな大層な気持ち持ってるのに、取りに行くこと忘れんなよ」
一喝入れられてしまった。




