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20.伝統的ネットスラングと意地汚い精神

【…やべ、帰るね。ばいばい】


 何かを感じ取ったのだろうか。突然罰点がマスクを着けなおして窓から飛び降りる。直後にに、

【に゛】

 というあの聞き覚えのある優しい濁声が聞こえた。


 罰点の声だ。それと共に、

「ほいほーい!」

 と二色の声が聞こえる。あのスーツの子供だ。走って窓から身を乗り出し外の様子を窺うと、二色が罰点をお姫様抱っこしながら自由落下していくのが見える。


 …二色は罰点の声を聞いたよな?普通より弱い状態になっているんだよな?なら、二人とも死ぬんじゃないのか?ここは四階、普通に落ちたら死ぬ高さだ。


 ドォン!


 地響きが起こる。落ちていった二人は形状を保ったままだった。なんだったらその足で民家の屋根を渡り、遠くへと走っていった。


 …なんだったんだ?いや、どういうことだ?何かトリックがあるのか?この学校は飛び降りても死なないようになっているのか?


「ほい」


 何か声が聞こえたかと思うと、後ろから体を押された。窓から体が半分出ていく。

 は?


「くぁwせdrftgyふじこlp」


 声にならない悲鳴を上げる。え、落ちる?死ぬ?

 体が窓から完全に出る。右手がじたばたと掴むところを探すが、どこも触らずに空を切る。くっそ、どこも掴めねぇ。どうすれば死なない?どうすれば…どうすれば?


 あぁ、無理だ。もう何もできないわ。

 潔いのが一番いい。人生あきらめが肝心だ。今は人生自体を諦めている。

 いきなり突き落とされるような行いを今までした来たのだから仕方がないか。


 はぁ、もっと長く生きていたかった。長生きすれば罪の清算くらいできたのかもしれないのに。まぁ罪を償うつもりなんてほとんどなかったが、普通の人生を歩もうと考えていた。


 …今は落ちているのだろうか。それとも刹那を繰り返し感じているのか。体感時間が長い。はぁ。落ちるなら早いところ落ちたい。


「ーっ!」


 急に体が制止する。空中に浮かぶ力でも手に入れたのだろうか。そんなことを考えながら声の聞えてきた方向、上を向く。そこには僕の腕を苦悶の表情で掴む初代さんの姿があった。


 骨が折れている状態でそんなことをすれば…いや、そもそも片手で人をつなぎとめるなんてこと。片手を失う覚悟がなければできない。


「ふっ、ふぅー!…むーちゃん、助けてもらって、いいかな?さ、流石に片手でこの状態は保てないや…」

「え。こいつこの窓から落ちてみたかったんじゃないのか!?」

「そんな、人いない、よ…!」

「私は。落ちてみたいけどね」

「いや、そんなことより、早く助けてもらって、いいかな?」

「あぁ!ごめんごめん!」


 もう一つの手が僕の手に触れる。いや、本当に触れてるだけのような感覚なのだが…。


「むーちゃん?力入れてる?」

「私の筋力世界一少ないの知ってるでしょ!これが、本気だって!」

 本気だったらしい。これはこれはなんともひ弱な。


 さて、今の状態を考えてみよう。ここは五階の窓の外。僕はそこに放りだされている。今の命綱は女性の腕二本。


 …これは死んだな。それでも覚悟はできてない。

 僕の悪いところだ。僕は死に近づくとそれに抗わずに生をすぐに諦め、生きていける可能性があれば、それに意地汚く縋る。


「おーい!落としても大丈夫だぞ!」


 あぁ。前だってそうだ。しりとりの一部にされかけて生きるのを諦めたかと思ったら、初代さんという絶対的存在の偉大さに縋った。


「凡!ありがとう!」

 どうすればこの性格は治るのだろう。どうす


 ぱっ。


 手が離れる。

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