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19.完全な悪口と残念過ぎる話し方

 こちらから表情が見えないが、今、確実に笑っているのだろう。まるで幼稚園児がクイズを解いて、それを説明するときのような明るく溌溂とした声。初めの注意した時とは正反対の声。


 一通り初代さんの考えを聞いた罰点がそのシンボルとでもいえるような罰点印のマスクを外す。そして、

【はぇー…すっごいね、君。頭いいね。思考しながらの戦闘なんて俺にはできないよ。参考にしようか。君が先頭でこの教室に入ってたら、すぐに逃走したかもね。僕としては君と抗争出来てうれしいけどさ。】

 と、唐突に話し始める。顔はとても格好いいのに、なんか話し方が残念だ。そんなことを考えたその時、

「あなたなんか話し方残念ですね。面白いです」

 と笑いながら言い放った。

 いや確かに。丁度僕もそう思っていたところだ。


 …。


 いやいやいやいや初代さん!?いきなり挑発してどうしたんですか?いや確かにこんな空間で正気でいられるわけはないんですけど、それにしてもハイになりすぎじゃないですか?

 初代さんともあろうお方がこの程度の状況に気がふれるとは思えないんですけど?

 とかそんなことを考えているが、全くの間違いだった。


【話し方が残念ってよく言われるよ。親に放し飼いにされたからかな?待ってあげたし、まぁ傷もある程度良くなったでしょ?この程度ではやめないよね?君の煽りはもう少し見てみたいけど、帰りの時間もあるんだ。さて、第二ラウンド始めようか。…そういえば名前知らないけど、どうせ行方知れずになるし関係ないか】

「…流石にばれてましたか。まだ背が痛むので、もう少し待って貰ってもいいですか?」

【え、やだ。】

「まぁそうですよね」


 と初代さんが苦笑いする。そうか、あの背から倒されたときにかなりの怪我を負っていたのか。いや、どちらかというと馬乗りからの右手の一撃のダメージのほうが大きそうだ。


 納得。


 ただ、頑張って時間は稼いだが、それでも足りていないらしい。肌に浮かぶ脂汗がそれを示唆している。恐らく肋骨が折れているのだろう。肋骨が折れるならまだしも、折れたそれがほかの臓器に刺さっているとしたら。そんなことを考えただけで痛くなってくる。


 初代さんに肩入れしすぎているせいか、特に痛覚を共有しているわけでもないのに痛みをこちらも感じてしまう。さながらエヴァンゲリオン。


 …しょうもない。


 時間が足りないというのなら、僕が犠牲になってでも時間を稼げばいいのではないのだろうか?いや、砂粒ほども回復しないだろう。環境の変化に耐えきれずに滑って尻もちをつくような奴が、あの戦いほども、先の話よりも時間を稼げるわけがない。


 …そういえば僕は誰に電話をしたのだろう。背面で適当に電話したせいで誰にかかっていたのかもわからない。間間さんに電話できているといいのだが。

 早く来てほしい。この状況を打破してほしい。


 ドンドン!

 扉を叩く音が聞こえる。藁にも縋る思いで反射的にそちらを見ると、ドアに気だるげに寄りかかりながらこちらを見る影が見えた。逆光のせいで姿は見えない。気づかなかったが、すでに夕焼けが空に映える時間帯だった。

 ただ、背丈・見た目で間間さんであることは容易に想像できた。


「はっちゃん。何してんの?電話よこしたと思ったらこんな場所で敵と相対するなんてはっちゃんらしくもない」

 間間さんの声が聞こえる。が、話し方は明らかにそれとは違う。ぶっきらぼうで間延びしない、優しさとは無縁な口調だった。

 え、間間さん。いきなり性格悪くなった?

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