13.自分勝手と他人行儀
「…なるほど ね。じゃあ そろそろ 本丸に 帰ろうか。僕は 凡くんと 一緒に 帰るから さ」
「え、俺も一緒に?」
「一人じゃ帰れないんだよ~。お願い!注意力散漫な僕を導いておくれ?」
そういうと間間さんは深々と頭を下げながら両手を合わせてお願いする。
「いいですけど…まっすぐ帰りますよ?」
「ありがと!じゃあそうと決まったら早く帰ろうか」
そう言うと間間さんはこれ見よがしに凡の腕に抱きつきじとりとこちらを見てくる。なんの主張なのかはわからないが、とりあえず自慢されているのはわかるし、楽しそうなのも伝わってくる。そういえば僕以外と話すときは間延びしないんだな。親しい人とは普通に話せるのだろうか。
「じゃあ葦名君、私たちは私たちで基地に戻ろうか」
「はぇ?」
「え、葦名君は多分部隊の本丸の場所知らないですよね?」
「そ、そうですけど…」
「じゃあ一緒に行きましょうか。そうだ。葦名君も入隊したことだし、少し話し方をフランクにしてもいいかな?」
「あ、はい、大丈夫です」
「良かった~!断られたら恥ずかしいと思ってたんだよね。じゃあ今日からよろしくね…そうだ。下の名前聞き忘れてたけど、なんていう名前なの?」
「こ、衣って言います。」
急に距離を詰められてタジタジになってしまった。今恐らく今までの人生でしたことのないような気持ち悪いニヤニヤ顔になっているだろう。青春の一ページで人間と関わらずに生きてきたせいで高校生なのに中学二年生のような反応しかすることができない。中二病な妄想は今までずっとしてきたのに、なんとも皮肉が効いている。
「じゃあ今度から衣君でいいかな?」
「は、はい。…そういえば初代さんのほうはなんていうなま…」
初代さんの下の名前を勇気を出して聞いてみよう思ったとき、ドアの奥から間の抜けた声が聞こえてくる。
「そうだ 葦名君 ひとつ 言い忘れてた けど、本丸って 言っても そんな大層な ものじゃ ないから 期待 しないでね。『元から期待してない』って…悲し い事言 うねぇ…」
いや、そんなことは言っていない…考えはしたけど。もしかしたら心を読むことが癖になっているのかもしれない。そうだとしたら、さっきまでの読心術への解釈は変えなければいけない。予測があっているとすれば、その力は諸刃の剣にすらなりえない。常に多数の情報が脳に流れ込んでくるのだろう。その状態で町中を歩くことになれば…考えたくもない。
「確 かに葦名君 は口に 出し てな いけどさぁ、そこ突 っ込ま なくていいじゃん…」
「ご、ごめんなさい、確かにそうでした」
意識せずに間間さんの心を抉ったところで、
「ちょっ、間間さん!いきなりどっかにいかないでくださいよ!」
と、凡さんがだくだくと汗を流しながら走ってくる。その様子から唐突にどこかへ行ってしまった間間さんの事を探すために、様々な場所を回ったことが容易に想像できた。
「ごめんね、なんか甘酸っぱくて得も言えぬような気持ち悪い空気が漂ってる気がしてさ」
う、読まれてた。そんな気持ち悪いとまで言わなくても…。
というかどうやって心を読んだんだ?流石に姿を見ずに読心術とは言わせない。もしかしたら間間さんも何かしらの異能を持っているのかもしれない。異能と戦う部隊だ、どんな人材がいてもおかしくないだろう。
「いやいや そんな 空気が しただけ だよ。別に 心を読んだ わけじゃ ないさ。っていうか、そういう 考えに たどり着いた ってことは 本当に そういうこと 考えてたん だねぇ」
勝手に敷いてもない罠にはまってしまった。恥ずかしい。
「まぁ 気にする ことは ないさ。じゃあ僕たちは一緒に行こうか、凡君」
「間間さん自由奔放すぎません…?」
「それが僕のアイデンティティだし、今に始まったことでもないだろ?さぁ行くよ凡君!」
間間さんはそんな戯言を溌溂と話すと、小走りに去って行ってしまった。それの後を追い、凡さんも走っていく。
「…なんだったんだろうね、今の」
「さぁ…」
疾風の如くあらわれ、突風のように去っていった二人組。教室に取り残された僕たちはあっけらかんとしていた。僕に至っては恥ずかしい部分を晒上げられただけなのだが…。
「ま、まぁ気を取り直して私たちの部隊、No-Nameの本丸に行きますか!」
「そ、そうですね!」
いろいろあった、下手をしたら今までの人生よりも有用な時間を使ったのかもしれないこの教室を後にする。




