13.強制的な保護と安穏とした空気
~新登場人物~
間間唯一
開いた口へ牡丹餅。何も為さずしてこんな幸運舞い降りることはない。
いや、僕は特別だからこれも運命だったのだろう。
…。
昔ならそう考えていたのかもしれない。
もう僕は昔の自分を反面教師として一般的な人間としての一生を過ごそうと思っていたのに。
昔の自分をなかったことにして、新しい人生を踏み出そうと思っていた。普通に友達を作って、普通に勉強して、普通に馬鹿みたいに騒いで、普通に遊んで、普通に卒業前に告白して、普通に振られて、普通に仕事に就いて、普通に諦めきれずにいた其の子と同窓会で再開して、普通にまた告白して、普通に成就して、普通にその後色々なトラブルに遭いながらも、普通に家庭を築いて、普通に子供が結婚して、普通に孫を見て、普通に家族に看取られる。そんな普通が過ごしたかった。
…。僕の人生の知識はyoutubeの広告や、twitter漫画に依存しているので、これが普通の人生なのかというと甚だ疑問が残るのだが。
いや、実は部隊に参加するという異常事態に心躍らないわけではない。昔の僕から過剰な自尊感情を取り除いたとしても、僕はまだ高校一年生なのだ。普通の男子高校生なのだ。非日常にワクワクしないわけがない。ただ、さっきまでの状態を見ているとなまじ阿保ではないせいで、自分がついていけるような世界ではないことぐらいわかってしまう。
怖い。
人に無神経に銃を撃てなければ生きていけないような世界が。
素手で未知に挑まなければ死んでしまうような未来が。
考え込んでしまう。
「葦名。酷なことを言うようだが…。これは半強制だ。俺たちとしてもお前を見殺しにするわけにいかないし、お前としても死にたくないだろ?」
「ちょっと凡、それは…」
「言い過ぎじゃないだろ?これが現実なんだ。どうする?」
選択の時。選択といってももうすでに二者択一ではなく一者択一なのだが。僕には「はい」としか言えない。これが定めなのかもしれない。今までの人生ねじ曲がっていた事への罪の清算なのかもしれない。
「…わかりました。僕を部隊に入れてください」
流石に僕は僕の命が惜しい。今後の人生がどうなろうが、背に腹は代えられない。
全く、僕の意見は二転三転してしまう。噺に追われていた時は死ぬことは怖くないとか考えていたのに、今では自分の命がいとおしく見えてしまう。
「良かった…。もし葦名君がこれに応じてくれなかったら多分強硬手段に出ていたからね」
え、何それ怖い。
「よっしゃ。じゃあ後は間間さんに話付けるとするか!多分あの人なら受け入れてくれると思うんだけど…」
名前からして安穏としてそうなその人は、恐らく部隊の元締めか何かなのだろうか。
「部隊長の権限で 許可 するよ。あなた には 色々 してもらわないと いけないことが たくさん あるからね」
教室の外から声が聞こえる。扉のほうを見るとそこには男が立っていた…?いや、女か?どっちだ?身長は160くらい。顔は中性的で、ほのぼの系の顔。
「うん。そう 迷うのも 仕方がない。ほら、 僕は 中性的 だからね」
「「間間さん!どうしてここに居るんですか?」」
「一気にしゃべらないでよ初代君に凡君。どうしてって、そりゃあ君たちが心配できたんだよ。何かあってからじゃあ遅いからね」
「なるほど。っていうかその話し方変わってなかったんですね」
「話し方なんてそうそう変えられるものじゃあないからねぇ。精神と一緒だよ。葉っぱや枝。幹が変わろうが、結局根底からは変わらないんだ。ねぇ? 葦名 君」
「…そうかもしれないですね」
馴れ馴れしい。いきなり現れ悟ったようなことを言う。が、その通りかもしれない。こんな風に自虐風な人間になった今も。そういう人間を演じているだけかもしれない。僕はまっとうな人間にはなりたくてもなれないかもしれない。
「なんだよ 葦名 君。初代 ちゃん みたいに 仮定 しか しなく なっちゃって。もっと お気楽に 行こうよ。ね?」
と穏やかな顔つきで僕に話しかける。
「は、はぁ」
「『なんだこの人。的確に心の声に言葉を返してくる。』って?いやいや、別に 心を 読んでいる わけじゃあ ないよ。いや、でも それに 近い事は している けどね。知ってる?読心術って」




