12.体と頭のどちらが早い?
なんだ?教室の扉と窓は連動しているのか?さっき起きたことも必然だったのか?いや、窓とドアを接続させておくのが主流になっているのかもしれない。しかしさっきと違うことは、人が違うという事だ。扉の奥には噺がいて、窓にはさっき教室にいた子供が立っていた。
最近は五階の窓に立つのが流行りなのか?
こんな冗談を頭で思っている間に初代さんと凡さんはすでに相手に向かって構えていた。
窓のほうを初代さんが銃で、扉のほうを凡さんが素手で相対していた。
「どうも。…お前が噺?」
「そうだけど。あぁ…奥にいるの初代ちゃんか。まだ帰ってなかったの?」
「その呼び方は噺さんですか?」
「お!はーちゃん!あれ?はーちゃんだとはーくんと同じになっちゃうから変えたんだっけ?あれ?」
快活に少年が初代さんと話し始める。話している内容的に知り合い同士なのだろうか。
「確かそうだったと思いますよ。というか二色さんもこの学校来てたんですね」
「うん!あ、そうだ!このマントカッコいいでしょ!はーくんに作ってもらったんだ!」
そう言って背に身に着けた束間だったものを見せる。子供らしい残忍さだった。無垢な精神攻撃ほどつらいものはないはずだが、僕の心は全く傷つかなかった。
「そうなんですね。それで、今日は何の用でしょうか?」
「んー…。ほかにこの学校に僕たちを見た人がいるか調べてきてって言われたんだけど…」
「この通り私たち三人以外には誰もいませんけど」
「確かに…。っていうかその部屋の真ん中で立ちっぱなしの子、その子も君たちの仲間なの?」
忘れられていた。
あんな醜態をさらして。椅子を蹴り無様な走りを見せてクラスの皆を見捨てて、印象にすら残らない。いったい前世でどんな罪を犯したらこんな人間になってしまうんだろうか。
キラーピエロ。もといジョン・ゲイシーかなんかだったりするのかもしれない。いやいや殺人鬼だったとしてもこの仕打ちは酷すぎないか?ブクブクに太った自尊心をいきなりケバブのようにそぎ落とさないで欲しい。
「そうだねぇ…、この子は見たことない子だね」
「新しく入った子なんですよ。こっちも人手が足りてないんで」
「そうなんだぁ」
噺はこちらに話を合わせてくれている。今一旦は味方として接してくれるらしい。
「はーくん、どうする?ほっといて帰る?」
「うん、面倒だし帰ろうか」
「へぇ。見逃してくれるんだな」
「うん。俺が言われたのはさっきの現場を見た人がいたら消して来いってだけだったから」
「そりゃ嬉しい。じゃあ帰ってもらっていいかな」
「うん。いないなら残念。はーくん、もう戻ろー?もう疲れたよ~」
「うん。帰ろうか」
そう言うと噺は教室から出ていき、二色くんは窓から飛び降りる。その2秒後あたりに地響きまがいの音が聞こえた。飛び降りた音だろうか。
「…はぁ。帰ったな」
「…多分帰ったね。怖かったぁ…」
「いっつもお前怖がってるよなぁ。どうして?」
「いや、そりゃあ怖いでしょ!自分より明らかに強い人が目の前に居るんだよ!?」
「頑張ればどうにかなるでしょ」
「そんなわけないでしょ!そんな考え持ってるの凡だけだよ!…っと、そうだ。葦名君。とっても言いづらいことがあるんだけど…」
「はい、なんですか?」
妙に深刻な顔をしながら僕のほうを向く。まぁ何となく言いたいことはわかる。ここから先は守れないかもしれないとかそういう感じになるのだろう。が、一応分からないふりをしておこう。
「葦名君。君も私たちの部隊に入ってください」
「うん。相手に味方だと公言した手前、君も狙われる確率が高くなったんだ。味方になってくれればこっちも守りやすいし、ね」
「そして、仲間になると、恐らく普段の生活に一生戻ることはないかもしれない」
「…。」
「もしかしたら、もう家の元には帰ることができないかもしれません」
なんてこった。




