8.読めない心象、捉えられない気持ち
「よくここまで逃げてこれましたね、お疲れ様です。後は私たちに任せてください。あ、でも私は頼りにしないでください…」
そういうと女は少し悩み顔で手に持っていた拳銃で噺とかいう大男を容赦なく撃ち始めた。
っていうか、え?拳銃?人に撃つ?なんて事をしているんだこの女。銃刀法違反を知らないのか?
そういえば噺はすでに死んでいるのだろうか。いや、どんなに大男でも三発も撃たれたら死ぬだろう。人間撃たれたら死ぬ。
「ちょ、やめてよ、そんなに銃って撃つもんかな。いや、そんなもんかもなぁ」
生きているっぽい。どういうことなのだろう。噺のほうを向く。噺は的を持っていた。何だ?挑発しているのか?拳銃持ちの相手に?いや、そもそもどこから的を持ってきたんだろうか。
「君、この人の異能は知ってる?若しくは手掛かりになりそうなことはない?」
「ゴホッ…。し、しらないです…」
唐突な質問。今僕は息を整える時間が欲しい。さすがにすぐには話せない。全力疾走した後の口からなんて逆流してくる胃酸くらいしか出ない。いや、それは出さないように気を付けよう。
苦しそうに蹲る僕をよそに、両者相対している。しかしそのままどちらも動かない。
なんとなく動いていないという訳ではなく、西部劇でよく見る早打ちの前のヒリヒリした空気感が流れていた。
「あ、そうだ…。あの、束間が、布に…」
「なるほど」
パァン。
銃弾は噺の心臓へ向けて発射された。しかしそれを予測していたのだろうか。手を胸の前へと持っていき、銃弾を手で受け止める。
そうしたかと思ったら、一つ的が増える。
「なるほど。多分きっとおそらく少しわかりました」
何かがわかったように女は呟く。何がわかったんですか?そんな質問をしようとしたが、質問をした人がとんでもない目に合うというジンクスがそれを拒む。ここになって頭が冷えてきたようだ。
しかし、説明してほしいようなそれとない雰囲気が出ていたのか女は説明を始める。
「あの人の異能はおそらく手に触れたものをほかの物質に変える力なのでしょう。多分」
「へぇ」
気の入らない生返事を返してしまう。
確かに今の瞬間を見ればそんな能力なのだろうが。いや、そんなことよりこの人自信なさすぎじゃないか?多分・きっと・恐らくを多用しているところからそれが窺える。
「ふーん…。そういう解釈ね。近いけど…なるほど、それも良いかもしれないね」
違うっぽい。反応がそうだもん。絶対。
「でも、何となく攻略法がわかったような気がします。違ったらごめんなさい」
「いや、違ってても僕は別に気にしないですよ」
「間違ってたら私たち人間以外になりますね」
「お姉さん!!!頑張って!!!」
この人自信がないようなこと言うくせに、爆弾発言はさらっと断言するのか。全くとんでもない。
「じゃあ頑張ります。頑張りますけど、期待しないで下さいね」
僕を不安にさせないためか、少し笑みを浮かべる。刹那、銃声が鳴り響いた。パァン、パァン、パァン。一斉に弾丸を頭、右肩、腹に一発づつ撃つ。なるほど、手は二本しかない。三発撃てば二発しか抑えられない。残り一発は食らうしかないのか。
ただ、ここで大誤算。的を鉄製のドアに変えた。それで弾を食い止める。
それはそうだ。ものをなんにでも変える異能があるなら、そういうこともできるはずだ。そこまで頭が回らなかった僕たちの負けだ。僕は何もやっていないが。
「で、これどうするの?そっちの負けってことで終わっとく?俺が用あるの男のほうだけだからそれでもいいよ」
「確かにとってもいい提案かもしれませんね…。勝ち目がなければ」
「え、あるんですか?」
提案には乗らずに、勝ち方を見つけたような話し方をする。
さっき言っていた事には次失敗すれば死ぬ手筈じゃなかったのか?相手も怪訝な顔をしている。いや、どちらかというと不満な顔か?
女は難しそうな顔をしながら相手の能力について説明し始める。




