真相は……
すいません、やっと終わりました。
夢には2種類あると聞いたことがある。1つ目は今見ているのが夢だと気づかない夢。もう1つは自覚がある夢。そしてまさに今見ている夢は後者だと思う。なぜなら今まさに夢だという自覚があるからだ。
そんな思考をよそにどんどん夢は進んでいく。内容はいつものあの事だった。もうすでにに慣れてしまった、こんな風に自覚がある時は尚更だ。しかし慣れたてもくるものはくるものだ。
「お前は元々嫌われてるんだから、今更印象悪くなったって変わらないんだよ!」
もはや聞き慣れるほど聞いたこの言葉は、いつ聞いても僕の心を抉る。
今まではここまでしか見なかったのに、その続きまで再現していく。
「もういいよ、いつまで見るんだよこれ…」
呆れたように、もしくは心が限界を迎え、つい呟いてしまったかのように言葉をこぼす。
「お前みたいなやつはやめて正解だよ。自分だけ無関係を装うクソ野郎はいらないんだよ。さっさと失せろ。」
人が変わる。
「俺はお前とも仲良くやりたかったけど、無理だよ。お前みたいなやつは。どこへ行っても受け入れられない。」
人が変わる。
「自分だけ責任逃れして言い訳三昧、これならまだ素直に謝ったあいつらの方がいいな。いらねぇよ、テメェみたいな責任感のないやつ。」
人が変わる。
「お前はいい決断したよ、お前みたいな奴がいても部隊のガンにしかならないからな。まぁどこへ行こうが、がんはがんだ。異物は異物らしくクソみたいな人生送っておけよ。もう2度と顔見せんな。」
人が、変わる。人が変わる人が変わる人が変わる人が変わる人が変わる人変わる人が変わる人が変わる変わる変わる変わる変わる変わるカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワルカワル。
ひ と が か わ る
もうやめてよ、もう…いいだろ!?やめたんだよ!もう許してくれよ!いつまで僕を苦しめるんだよ!なんなんだよ!
「もうやめて…」
そして景色が切り替わる。なんというか、周り全てサーモグラフィーを通して見てるような景色だ。
「ふーん大変だったんだねぇ。」
「…………誰?」
どこからか声が聞こえる。
「うーん…今は秘密かな?まぁ誰でもいいじゃない。君が知らないことには変わりない。」
「………あっそう……」
そう、淡白に返す。
「うわ、本当に興味なさげ。もうちょい興味持ってくれてもいいんじゃない?」
そんなこと言われても…
「興味ないものはないし、どうでもいいし。てか疲れたし。教えてくれないならどうでもいい。」
「うーん。本格的に衰弱してるね…」
響くような声がいつの間にかすぐ目の前から聞こえてきた。顔を上げると、そこには青い髪に青い瞳をもち、サンタがかぶってそうな帽子を被ってボンボンがたくさんついてる白黒のワンピース?を着ている。容姿は整っていて美少女と言っても過言ではない。てかこんなにボンボンついててワンピースっていうのか?
まぁそこは置いといて。
「衰弱?こんな動けるのに?」
手足を動かしてみる。
「違うよ、肉体的な話じゃなくて精神的なものだよ。」
…確かに精神的にはクッソ疲れてる。
「まぁ色々あったし。ほとんど心が休まる時がなかったしね。いや、今もないか。てかここどこ?夢なの?僕の妄想?それとも死後の世界ですか?」
「私を君の妄想の産物にしないでよ。ここは夢であってるよ。知ってる?夢っていうのは全て繋がってるんだよ、だから夢ってのは一種の異世界だね。まぁそんな事はどうでもよくて、私はあの人と敵対してしまったっていう人間が気になって見に来たんだから。」
…あの人?
「あの人って誰?」
彼女はやっちゃった、みたいな顔をする。
「あーあー言っちゃったよ。大丈夫かな?まぁいいか、どうせ忘れるだろうし。」
どーゆーことだってばよ。
「で、誰なの?てか、忘れるってこの会話を?」
「うん。だってこれは夢だから。それに君が自発的にみてる夢じゃない、私が干渉してるんだから、忘れさせるのも思いのままってね。」
なーんかチートくさ〜
「じゃあ教えてよ、そのなんとかさんについて。」
とりあえず忘れるんだとしても色々聞き出そう。
「えー嫌だよ、私も死にたくないんだよ?」
死ぬって…そんな怖いの?
「いやいや、そんな物騒なの?じゃあ名前とかいいからさ、最終的な目的とか教えてよ、あと最初いつ接触してくるとか。」
「最終目的とか知らないから。でもそうだね、まだ気づいたないっぽいしこれは教えてあげる。」
含みを持った笑みを浮かべる
「今日のフランドールが暴れたのあるでしょ?」
いや、なぜ知ってるし。
「なんで知ってるの?」
君の夢を通じて、と簡単に言う。こやつなかなかやるな。
「まぁそれはいいとして、あれはあの人の計画の一端だよ。」
…………は?
「え?マジで?」
「そうだよ、てかもっと怒ると思ったのに。」
いやなんていうか…
「確かにムカつくけど、いまはキレる気力もないしどっちかというと今日のからすでに関係していたことにおどろいてるからさ。」
なるほどーと彼女が呟いた瞬間。景色が歪み始める。
「な、なに!?」
動揺する僕。
「お目覚めが近いんだね。そろそろお別れかな?まぁ私的には目的も達したし、ちょうどよかったな。」
なーるほど、目が覚めるのか。
「てか今のことほんとに忘れさせるの?」
うんと頷く。えーまじか…
「頼むよ!せめてフランドール?だっけ?あの吸血鬼の件に関してだけ覚えさせてよ!」
うーんと悩む素振りを見せて。
「確かにせっかく教えてあげたもんねー。じゃあ約束、私のことを絶対口外しないこと。」
「わ、わかった。」
歪みがひどくなり、彼女の声も遠くなる。そして遠くから聞こえるように。
「約束だよ、私は常に見ているからね。」
そして意識が遠くなりどんどん沈んでいく。
そしていつの間にか意識は逆にどんどん浮上していくような感じがして
「ん………しらないてんじょうだぁ。」
とりあえずボケてみるけどなんの反応も返ってこない。
「あーいてて。てか誰もおらんのかい…」
ぶつぶつ言いながら起きようと両手をベッドにつこうとすると、左手が何かの上にのる。そしてついそのまま少しだが、力を込めてしまう。
「むきゅっ!?」
「?おっと。」
負荷をかけられた何かはなんだか可愛らしい悲鳴をあげる。
「………痛いわね。」
僕の手と下敷きにしてた自分の手で圧迫された頭…主な額をさすりながら女の子が顔をあげる。見た感じはなんとなくパジャマっぽい紫の服を着た、これまた紫色の透き通るような綺麗な髪をした女の人がいた。
「なぜ今まで知り合った人は全員性別女でしかも全員ある程度容姿が整ってるんだ?」
顔をガン見しながらついつい呟く。
「…褒めてもらったのはお礼を言うけど何かああことがあるんじゃないかしら。」
「あ、すみません。つい気づかなくて。ごめんなさい。」
「ま、いいわ。結果的にあなたも無事そうだし、許してあげるわ。」
こっちが悪いのはわかるけど上から目線すぎません?てかこれ、言い方的に治療か看病してくれたのか?
「あ、えーと看病してくれたんですか?ありがとうございます。それと、申し訳ないんですけど今起きる以前まで何してたかちょっと覚えてなくて…」
教えてくれませんかと尋ねようとすると、言わんとすることを察したのかすごく、驚いたような顔をする。
「あなた……あんな事をして、覚えがないの?最後のあれも?全て無意識だって言うの?」
あんな事って言われても……覚えがなあ!?
「うっ!?」
ずきんと頭が痛み、手で頭を触り気を紛らわそうとするが次の瞬間。流れるように全てを思い出した。
「そうだ…確か咲夜さんと戦おうとして…そうだ!!霊夢は!?」
いきなり叫んだせいか、紫の服を着た女性は耳を塞ぐようにして
「いきなり叫ばないでちょうだい。博麗の巫女ならそこで寝てるわ。」
見ると隣のベッドに、いい夢を見てるのかニヤニヤして眠る霊夢がいる。
「霊夢!!よかった…生きてた…でも、足が…」
霊夢が生きているのを確認して安堵するが、足をやられたのを思い出して喜べる状態じゃないのを思い出す。でもその割にはうなされてたりしないような…
「?何を言っているの?あなたが治したんだじゃない。」
「へ?」
いや。いやいやいやいやいや。
「いや何言ってるんですか!僕にそんな事…」
「できない、じゃなくて実際にやっているのよ。そしてあの子も…」
「あの子?」
「もしかして、本当に何も覚えてないの?」
「いや、なんていうか…なんかやばいことやったなっていうか…すごい夢心地な感じで、正直ほとんどわかりません。」
「そう。なら簡単に教えてあげる。あなたは霊夢が足を失った後、自我を失い能力が暴走。その影響で紅魔館の玄関が半壊し、元凶となったフランも並の妖怪なら消滅してもおかしくないレベルの傷を負ったわ。その後、足を負傷しながらも貴方を止めようと霊夢が対処をしようとしたが、あなたの抵抗が激しく失敗したかとおもったけど、あなたが落ちる霊夢を掴まえ、足やその他の怪我を治療し、あなた自体も意識を失う。そして失った瞬間、あなたの集めていた力が全て霧散したかと思ったら、今回の戦いで負傷した者の怪我や、紅魔館自体を修復し始めたわ。もちろんフランも。そして倒れて意識のないあなたと霊夢をここに運び、フランも一時的な拘束を施して牢獄に入れてある、という状況かしら。おそらくすぐ解放するけどね。」
「………ほんとに?」
「まぁ、信じられないのも無理ないわ。あなた、ついこの間までただの人間だったんでしょ?でも、少しずつでもこれからの自分受け入れなさい。既にあなたはただの人間ではないのだから…私はレミィに伝えてくるわ。ここで待っててちょうだい…そういえばあなたの名前知らないわね。」
「え?ああ。僕の名前は翔です。寺田翔。」
「そう、よろしくね翔。私はパチュリー・ノーレッジよ。それじゃあまた後で。」
そう言ってパチュリーは部屋の外に出る。彼女が扉を閉めた瞬間、体が小刻みに震え出した。
「ほんとに………僕が…そんな事を…?」
実際、痕跡とかは何も残っていないのだ。傷も戦ったような跡もない。けど、覚えていなくてもすんなり受け入れられてしまうのだ、自分がそういう事をしたと、僕自身が拒否してもどうしても心が受け入れるのだ。その事がより、僕を恐怖させる。まるで僕の体に僕じゃない何かがいるみたいに…
そして僕はベッドに座り込み
「こわいよ…助けてよ霊夢……」
そう呟き、縋るように霊夢を見る。そして、そのまま横になり目を閉じ、意識が落ちるのを待った。
何かに揺すられるような感じがして目が覚める。
「おはようございます。お気付きになられましたか?」
僕は体を起こして、声の主を見る。咲夜さんだった。
…………なんだ
「夢か」
そしてまた布団に入る。そうすると耳を引っ張られた。
「いでっ!いででででで!?ちょっ!たんまたんまたすけててててて!」
「じゃあ早く起きてください。起きないとナイフで耳を切り落としますよ。」
サクッと恐ろしい事を言いながら手を離す。
「はい起きました!ばっちりと起きました!なんの御用でございましょう!」
咲夜さんがため息をつく。
「はぁ…お嬢様に言われたとはいえせっかく起こしに来てあげたのに、いきなり夢か、はないでしょ?」
えーだってそんなこと言ってもー
「だってこんな美人が僕の寝てるとこまで来てわざわざ起こすなんてあり得ないじゃないですか。じゃあ一番最初に思いつくのって言ったら僕の欲望をそのまま体現したかのような夢じゃないですか。」
「なんかそこまで素な感じで言われると一周回って何も感じないわね。」
だって事実だもん。1と1を足したら2になるのと同じじゃないか。
「まぁ事実ですし。」
「はいはいありがとう。ほら、霊夢も!起きなさい!」
「ふがっ!?」
霊夢はいきなり鼻を摘まれて女の子らしからぬ悲鳴をあげる。そういえばお隣で寝てましたね。さっきの聞かれてないよね?寝る前のやつ…
「い、いきなり何するのよ!?」
霊夢が飛び起きる。
「お嬢様がお呼びだから起こしに来てあげたのよ。」
「えーなんで私が行かなきゃいけないのよ?私あなたのとこの吸血鬼に足やられた怪我人だし?なんか体もだるいし?寝ててもいいんじゃない?話し合いなんて明日でよくない?」
すっごい怠惰なお方ですな。まぁ事実っちゃ事実だけども。咲夜さんは呆れたような顔で霊夢を見たあと、少し思案する様な顔をして
「じゃあ仕方ないわね、私と翔で!お嬢様のところ行ってくるわねー!」
咲夜さんが僕の手を取る。そうすると霊夢が今初めて僕がいることに気づいたかの様にこっちを見て、その後僕の手を握る咲夜さんを見て何か言おうとするが
「じゃあ翔、行きましょうか!私と2人で!お嬢様のところに。翔は夢に見るくらい私と一緒にいるのが好きみたいだから!翔もその方がいいわよね?」
咲夜さんはすっごい芝居がかった感じで言う。いや、待って?なんと言うか…ちょっと待って?なんか事実が少しどころか結構改竄されてる様な……
「な、な、なななな…」
霊夢は顔を真っ赤にして口をパクパクさせる。今のセリフでなぜそこまで憤るのじゃ。そんな要素ないよね?なかったよね?そう思っていると
「それじゃあ霊夢はそこで寝てなさい、話し合いが終わったらまた呼びに来てあげる。いきましょうか翔。」
咲夜さんはニヤニヤしながら霊夢を見て、そのまま僕の手を引いて外に出る。
「ちょっ……ま……!!」
出る瞬間何か聞こえたが
「ちょっと失礼。」
と言って咲夜さんは僕をお姫様抱っこする。この人力強ない?と思った瞬間。景色が変わる。いきなり図書館みたいなとこに出る。そして咲夜さんが僕を下ろして
「ふふっ、霊夢のあんな顔初めて見たわ。」
これはからかいがいがあるわね、と言う咲夜さんは今までになく楽しそうだ。
ちなみに僕は今何が起きたのかついていけなくて唖然としていたのだが、咲夜さんがあまりに楽しそうだったので、つられてついつい顔が綻ぶ。すると上から声がして、すぐに声の主が現れる。
「あら、咲夜。やっときたのね、ちょっと遅いわよ。」
そう咲夜に声をかける。えーと、なんだっけレミリア?だったよね?確か。
「申し訳ありませんお嬢様。言われた通り、彼を連れてきました。霊夢についてはすぐに来るかと。」
「そう、わかったわ。……で?そこの人間、体の具合はどうかしら?」
咲夜さんに言ったあと僕に声をかけてくるが、なんか心なしか少し殺気を帯びてるような気がする。
「お、おかげさまで一応問題ないです。」
「そう、じゃあ話を聞かせてもらおうかしら。」
そう言っていつの間に用意されたのか、白い椅子に座り、机の上にある紅茶を飲む。
「話って言われても…正直ほとんど覚えてなくて……」
「ふーん、私の妹を八つ裂きにしたことも覚えてないの?」
こ、怖いんですけど。なんかちょっと殺気を感じる理由わかったけど。確かになんかすごいひどい怪我させたような気がするけど、あんまり覚えてないしてかアレ不可抗力だから仕方なくない!?
「まぁかすかには…」
「正直あなたに今すぐフランが受けた苦痛を何十倍にもして味わわせた後血を吸ってそのまま殺してやりたいところだけど…」
いや、そんな具体的に言われても…めっちゃ怖いじゃん。確かに大怪我させたけどさぁ。
「いや、でもあれは…」
「もしそんなことしたら私があなたを殺すわよ。」
僕が喋っているところに被せるように言う霊夢。どこから現れたし。
「わかっているわ、それにあれはフランから始めたんだもの、勝手な私情で敵討ちをしたりしないわ。それに万が一さっきみたいな感じになられたら、正直手に負えないわ。」
えーと、とりあえず僕は悲惨な目に遭わずに済むってことでいいんてますよね?
「ふぅー」
少し安心して大きなため息をつく。
「まぁとりあえずあなたたちも座りなさい、今のフランの状態について話すわ。魔理沙と仙人もこっちにいらっしゃい!」
初めからいたであろう魔理沙と華扇を呼ぶレミリア。
「大丈夫だったか!?怪我残ってたりしないか!?具合悪くないか?」
霊夢を質問責めする魔理沙。すごく心配してたんだろうな。
「まぁ何はともあれ2人とも無事でよかったわ。」
肩の荷が降りたように息をつく華扇。この人は大概お姉さんポジだな。そこでパチュリーがきた。
「レミィ、これで全員かしら?」
「ええ、じゃあお願いねパチェ。」
パチュリーは頷く魔法陣を描く。そうするとどこかの映像が浮かぶ。そこは檻のようだった、隅に赤い服の女の子…フランが座っている。どうやら泣いているようだった。しかし彼女の姿を見ると、どうしても霊夢の足がやられた光景が脳裏に浮かび、無意識で表情に怒りが滲む。それによって能力も使われたのだろうか、映像が少し乱れる。気付いたレミリアがこっちを向くが
「大丈夫、落ち着いて。」
と、霊夢が小声で呟き僕の手に自分の手を重ねる。
「………うん、ごめん」
僕は意識的に体の力を抜く。そうすると乱れかけていた映像は元の鮮明なものに戻る。レミリアも、何もないとわかったのか鼻を鳴らして映像に向き直る。そこでパチュリーが声色を整え、言う。
「んんっ!さて、いいかしら?今写っているのは、知っての通りフランよ。今は地下の…彼女の部屋とはまた違う牢に入れてあるわ。身体的な拘束は特にせず、今のところは閉じ込めてあるだけよ。」
そんなの意味ないだろ!?だってさっきの時だって色々ぶっ壊してたんだから牢屋くらい…そう思い言おうとするが、パチュリーが手を前に上げて制する。
「まぁとりあえず落ち着きなさい、これはあくまでフランに私達への攻撃の意思がないというのを示させているのよ。彼女は抜け出そうとすればいくらでもいけるわ、けれどもしない。これは立派な私達を襲わない証明にならないかしら?」
そうは言っても…
「もし壊して抜け出したらどうするんですか?」
「もちろんそういう時は物理的な拘束をするわ。具体的にはあの周囲に魔法陣のトラップを仕込んであって、破壊されたと同時にフランを流水の檻に閉じ込めるわ。」
は?水?
「いや…いやいや!水で何ができるんですか!?足止めにもならないんじゃ…」
「あなたは吸血鬼の弱点を知っているかしら?」
僕の言葉を遮り、言う。
「弱点?ニンニクと十字架と……後太陽の光と聖水とか?」
そうねと頷くパチュリー。
「まぁ関係ないのもあるけど、実際はそれに流水も含まれるわ。その流水によって拘束するの。わかったかしら?」
「わ、わかりました。」
「よろしい、じゃあ現状の説明をするわ。さっき、私が彼女を尋問して、わかったことがいくつかあるわ。一つ目、彼女は自分がやった自覚がない。正確には何をやったかはわかっているが、なぜやったのかわからないそうよ。」
な…なんだよそれ!?
「それって僕と同じで暴走していたってことかすか!?」
「あなたちょっとうるさいから黙りなさい。」
レミリアに冷たい視線を向けられながら言われる。
「す…すいません。」
「そのままおとなしくしてなさい。それで、パチェ?どう言うことなのかしら?」
「フランは彼が言うように一種の暴走状態だったわ。ただし、第三者による故意的なもの、だけどね。」
それって…
「操られていたってことかしら?」
横から凄まじい殺気を放ち、パチュリーに聞くレミリア。こっわ…あ、さっきまで似たような感じでしたね自分。
「っ!!え、ええ。その通りよ、そして二つ目だけど、彼女曰くあなたたちが来る直前にそいつはきたらしいわ。」
「それは誰なのかしら?」
「わからないわ、部屋に声が響いたと思ったらまるで夢でも見てるかのような感じになったと言っていたわ。」
「…………」
「つまり、これは何者かが意図的に引き起こしたものなのよ、特に霊夢。あなたを標的としてね。」
「わ、私?ってことは今回の事も妖怪の仕業ってわけなの?」
「そんなのはわからないわ、でもフランを操るなんて真似、人間に出来るとは思えない。第一紅魔館に侵入する事自体ほぼ不可能よ。」
「じゃあ一体誰が……」
「わからないわ…真相は闇の中って感じね。足取りを掴めないからどうしようもないわ。」
「くそっ!」
ガンッと机を殴るレミリア。殴られた机が砕ける。いや机が砕けるってなによ。ムカつくのはわかるけどさ。
そして
「咲夜!フランを連れてきて!」
その瞬間壊れた机が跡形も無くきえて、いつの間にか新しい机があった。
「お嬢様…よろしいのですか?今は精神が安定してなくてまた暴れそうなのでは…?」
「いいえ咲夜、精神が不安定なのはそうだけどこの場では暴れないわ。」
「なぜそこまで断言できるのかしら?」
華扇が聞く。
「原因がそこにいるからよ。」
レミリアは僕を指さす。
「へ?」
「さっきそこの間抜けそうな男に両手がなくなったりお腹を貫かれたりされて死にかけたでしょ?それがトラウマなっているのよ。むしろ今牢に閉じ込めている方が危ないわ。恐怖で暴れ出しそうだもの。」
な、なんかそこまでなってるって……まぁ操られて挙句に死にかけるんだもんね…本人からしたらいきなり死にかけでそりゃトラウマにもなるか。てか僕もなりかけたし。
「逆にあの状態をどうにかできるのもこの男だと思うけどね。」
「どーゆー事だ?」
「例えばあなたがパチェからいっつも本を盗んでいくじゃない?」
「人聞き悪いな、私は借りてるだけだぜ。死ぬまでな!」
それものはいいようには程が……
「ほぼ一緒じゃない。それでパチェに怒られるとするじゃない?そのあとちゃんと謝って何もない状態で会うのと謝らずに許してもらえてないかもって思いながら次会うの、どっちがいいかしらね?」
「それは断然後者だぜ!」
「脳筋には難しいかったかしらね。」
なんだと!と憤る魔理沙。
確かにそうかもね。今僕は気にしてないけど、それをどんなに他人に言われても本人に言われないと実際どう思われてるかわからないしね。この身で体験したし。
「そーゆーわけで、今連れてくるからなんとか言ってやってもらえないかしら?」
そう言いながら僕を見るレミリア。その顔には有無を言わせない凄みがあった。えー癇癪起こされてそのついでに死んじゃったらどーすんのさ。
「わ、わかりました。」
そんなことは言えずに受け入れる僕。弱いなぁ。
「それじゃあ咲夜連れてきて…」
「レミィ、咲夜に頼まなくても大丈夫よ。」
そう言ってパチュリーはいつ仕込んだのか、床に魔力を流して魔法陣を起動する。
「こんなのいつの間に…」
「今さっきよ、正確には拘束用のトラップ用の魔法陣を用意したついでって感じかしら。まぁいいわ、これでフランのある牢屋の前に直接転移するから、レミィ行ってきてもらえるかしら?」
「な、なんでわた…そういうことね。」
「そういうことよ、昨夜にいかせて何かあったら洒落にならないわ。」
わかったわ、連れてくるわね。と言ってレミリアは魔法陣にのる。そしてすぐにどこかに消える。
「よくこんなの作れるな…」
「こんなの簡単よ、それに使える範囲も限られるから、大したことはないわ。」
転移が大したことないとかおかしいから。この人実はかなりすごい人なんじゃ……
「あ、着いたようね。」
僕が呆気に取られていると、後ろの映像にレミリアらしいのが映る。本当にこれリアルタイムなんだ。
「さて、フランがちゃんときてくれるかどうか…」
そういえばなんでフランを読んだんだろ。今更聞いてもわかることはないだろうに
「なんでまたフランさん?をここに連れてくるんですか?パチュリーさんが聞いてあまり参考になるようなことはなかったのに。」
「さっきレミィも言ってたけど、フランはいつもとはまた別の意味で精神が不安定だわ。それが解消されれば少しはまともに話せるようになるでしょう。それにフランが戦えるようになれば戦力は大分増えるわ。」
なるほど…
「あ、説得に…失敗したようね。お姫様抱っこしてるわ。」
「まぁまともに話せないなら無理ですよね。」
その原因が言うようなことでは無いと思うが一応言ってみる。
そしてレミリアが魔法陣の上にのる。すると映像に映っていた姿がなくなる。そして数瞬遅れてこっちの魔法陣が光り始めて、そこにレミリアが現れる。もちろんフランを抱えたまま。
「お、お姉様…もうやだよ…死にたく無いよ……お願いだからまた地下室に戻して…」
錯乱って感じじゃないな。ただ単にトラウマ化しかけてるのか。まぁ吸血鬼が死にかけるようなことなんて今までなかっただろうしね。
そしてフランがこっちを見る。その瞳が僕を捉えた瞬間。
「い、いやぁぁぁぁああ!!もういたいのはいやぁ!!お姉様も私にまだ怒ってるんだ!また酷い目に遭わせようとしてるんだ!!離してよ!離して!!」
な、なんかそこまで恐怖されるとすっごい複雑……
すごい罪悪感を感じつつ、フランに近づこうとするが、霊夢が重ねるだけだった手を掴む。
「え?」
後ろを向くと、霊夢が真剣な顔をして
「大丈夫なのよね?」
と、聞いてくる。実際大丈夫じゃない気しかしないが
「大丈夫。ちゃんと帰ってくるよ。」
そんな顔されたらこう言うしかないでしょ。
霊夢は手を離すと無言で離れる。僕は前を向いて歩みを進める。レミリアに拘束されて、見た目相応の態度で暴れるフラン。なんでこいつ能力使わないんだろ。そして僕に気づくフラン。
「いや…いや!来ないで!来ないでよ!いやぁ!」
なんか絵面的にちっちゃい女の子を無理やり攫おうとする大人って感じだよね。
だんだん自分が悪いような気がしてきていたが、気にせず近く。
フランはレミリアのお姫様抱っこから逃げ出そうとするが足に力が入らないのか、立てずに尻餅をつく。
「あうっ!あ…ひ、ひぃっ!!」
そうしている間に僕はフランの目の前に立つ。そして声をかけようとするが
「ごめんなさいごめんなさい許してもう痛いのやだよぉ…死にたくないよぉ。ううぐすっ」
とうとう泣いてしまった。これ僕が悪いの!?僕が謝るべきですか!?
僕はしゃがんで
「えーと、フラン?落ち着いて?僕は別に怒ってないし、何をしようとも思ってないから。大丈夫だよ。」
出来るだけ優しい声色でいい、頭を優しく撫でる。
「う、嘘だもん!だ…だってフランあんな事したのに怒ってないわけないもん!また前回みたいに痛い目に合わせるつもりなんでしょ!?ううぅぅー」
ああもう!
「な、泣かないで!本当になんも思ってないから!大丈夫だから!ねっ?」
あああ早く泣き止んだくれぇぇ!さっきから後ろでレミリアが超怖いんだって!!
「…………………ホント?」
お、希望の光が見えてきたって顔してますね
「本当だよ、大丈夫。嘘じゃないから、ね?だから泣き止んで?」
「ううぅ…うわーん!ごめんなさい!酷い事してごめんなさい!ううぅ。」
よ、余計泣いてもーた。ま、まぁでもいっけんらくちゃうわっ!?
フランが飛びついてきて、僕は尻餅をついた。
「おっと!」
「ううぅぅ!」
そのまま抱きついて顔を埋めてなくフランに、どうしていいのかホールドアップしながらレミリアを見ると。なんか凄まじい顔でこっちを見ている。いや、顔は笑顔なのに雰囲気が笑顔を別のものに変えているようだ。
え、なに!?どっち!?あやせしなさいっていう顔?それとも変な事したら殺すって事!?どっちなんだよ!?!?
しかしそう思っているのも束の間。
「すぅーすぅー」
「あ、寝た。」
精神的に疲れていたのか、静かに寝息をたてながら寝ていた。それを見たレミリアが
「咲夜!フランを地下の部屋に寝かしつけなさい!」
「わかりました。」
そういうや否や、手慣れた手つきでフランを僕から剥がし、そのまま抱き上げてどこかに消える。そしてちょっと間が空いてすぐに帰ってきた。
「床につかせてきました。」
「わかったわ。さて。そこの人間。」
なんか話しかけてきた。
「な…なんでしょう?」
「よくさっきの言いたい事がわかったわね、あのまま抱き締めていたりしていたらフランがいなくなった瞬間にを絞り尽くしていたわ。」
「そ、それはどーもです。」
こっわ…
「今回の事、あなたが直接の原因とはいえ、ちゃんとフランも戻ったようだし、条件付きで許してあげるわ。」
おっかしいなぁ。どっちかっていうと狙われたの僕なのに。なぜ僕が上から目線で許されなきゃいけないんですか?
「はぁ…ありがとうございます。それで、条件って?」
「犯人を見つけるのに協力なさい。」
なんだそんなことか。
「言われなくても、全力を尽くしますよ。」
「あら、ずいぶんやる気じゃない。」
「当たり前ですよ、こっちの大切な人が直接的ではないにしろ大怪我させられたんだから。」
後ろで「私明日吹き飛ばされたのにごめんの一言もないんだけど…」と萎えていた霊夢がそれを聞いて、赤面する。
「まぁ、いい報告を期待するわ。さて、貴方達この後どうするのかしら?ちょうど今昼過ぎくらいだし、一緒に食事でもどうかしら?」
僕は後ろを向いて霊夢を見て
「どーする?僕的には今すぐなんか食べたい感じだからありがたく頂戴したいんだけど。」
「そ、そうね。いただきましょう!」
「私もご一緒していいかしら?」
「私もいただくんだぜ!」
「ついでで魔導書は頂かないでよ。」
「そんなことしないんだぜ…なぁその持ってる本面白そうだな。貸してくれよ!」
「言ったそばからなんなのよ貴方は!」
いいだろー貸してくれよーと魔理沙はパチュリーの本をとろうとするがパチュリーはかわして、そのまま追いかけっこが始まる。
「あの2人も大概元気だな。」
「そうね。」
そう霊夢が返す。
「じゃあ料理の準備をしますので、皆さんテーブルで待っていてください。」
そう咲夜さんが言って、僕たちはテーブルについたのだった。
ちょっと微妙な終わりですみません。