暴走
素人クオリティですが、良かったら呼んでってください
「そういえば名乗ってなかったわね。私の名前は博麗霊夢、博麗神社の神主にして当代の博麗の巫女!」
少女……霊夢は言った
「これでようやく、真偽の確認ができるわ。まさか2日も目を覚まさないなんてね。あの怪我の治る速さからして昨日には目が覚めると踏んでたんだけど…まぁいいわ。あなたにはこれから質問に答えてもらうけど……異論はないわよね?」
有無を言わせないような圧力を感じた。
僕は状況を飲み込めなかった
「ま…待ってください!真偽以前に僕は何もして」
「黙りなさい」
霊夢が冷たく言い放つ
まるで言葉そのものに力があるかのように、僕は気圧されて、黙ってしまった。
「私だって人間に対してはこんなことはしたくないわよ、人間にはね。」
彼女はまるで僕が人間ではないような言い方をする
「ちょ…ちょっと待てよ!その言い方だとっ!?」
あまりの物言いに抗議しようとしたが、突然顔に向けて風が吹いて、言葉を遮られてしまう。いきなりであったため、反射的に目を閉じてしまったがすぐに止んだと判断し目を開けると、そこには掌底を突き出す霊夢がいた。
…反応どころか何も見えなかった
「な……ん…」
僕が呆気に取られていると
「黙るって意味がわからないかしら?この妖怪が」
言っている意味がわからなかった。言葉の意味を理解するまでに数秒もの時間を要した。そして
「……僕が妖怪だって疑っているのか?…」
再び感じた死の予感に少し涙声になってしまう
そうすると彼女は少し驚いたような顔をしたて、すぐに顔をしかめた。だが、それもほんの少しの間ですぐに無表情に戻り、言った。
「ようやく理解したようね。なら最初言ったように
私が今から聞くことに正直に答えなさい、さもないと…」
彼女の体からオーラのようなものがでているのがわかる。頭ではあんなのはただの錯覚だ、これはただの夢なんだ、と現実から目を背けようと必死で否定するが、結局目の前で起きていることから目を背けられず、これは現実なんだといやでも理解させられた。
「わ、わかった…わかったから…もう痛いのはいやなんだ…!」
彼女は、一瞬目をギュッとつぶると
「なら正直に答えなさい、まずあなたはなぜあんなにボロボロ…どころか死に体だったの?」
僕は必死で答えた
あの苦しみを2度と受けたくないと、落ち着かない心をそのままに、あの時の事を話す
「あ、あの時は突然森で目を覚ましてそれから、いきなり肺が焼けるように痛くなってそこから全身痛くなって…なんとか酸素を取り込めたと思ったら体の所々から血が噴き出てそれで……ほとんど覚えてないけどいつの間にか治ってて、夢かと思ったけど全身血まみれで周りにも血が飛び散ってて…そ、それでとりあえず生きてたことに安堵したらいきなりよ、妖怪が……でてきて………
彼は話してる途中でいきなり今までよりも一層怯えた風に震えていたが、懸命に話し続けた。
それで……手を…千切られて…ふくらはぎも…握りつぶされて、そこから視界がいきなりブレて…意識も途切れて、気づいたらここにいた……ね、ねぇ!もういいだろ!?覚えてることは話した!だから…」
彼は思い出したくもない事を懸命に話してくれた…
でも…私は湧き上がる罪悪感を押し返し、言った
「そうね、ここまで追い詰められて話したことが嘘とは思わない、ここまでは信じてもいい…」
彼は希望が見えてきたと言わんばかりに笑顔になり
「じゃ、じゃあもういいよな?質問には答えた…」
「でも!」
私が遮るように言葉を紡ぐと、彼は笑顔のまま固まる
「でもそれだと…どうやってここにきたかがわからない!」
「そんなの…仕方ないじゃないか!僕だって覚えてないんだ!気付いたらここにいたんだ!嘘じゃない!信じてくれよ!」
必死だった。私だってここまで必死な人を信じたくないわけじゃない、それに目を見ても彼は嘘をついて騙そうとしてるようにはとても思えない。それでも、あんな凄まじい勢いで地面にぶつかって、無事な人間がいるのはありえない。私だって霊力を使わなければ間違いなく死んでる。だけど彼から感じられる力は僅かだ、それにあんな状態なら余計に生きているなんてありえない、それこそ妖怪でさえなければ…だから私は確かめる。たとえ彼を傷つけたとしても…もし、体が変質して妖怪化しているようならその時は……罪もない人間が襲われてしまう前に、殺さなくてはならない。
「……落ち着いて聞いて。あなたは元は人間だったのかもしれない、でも一連の話を聞く限りあなたは…あなたの体は妖怪のそれになってしまったかもしれない。もしそうなら…あなたは近いうちに人間を襲うようになる。必ず。だから確かめたいの、あなたが本当に妖怪になっているのか。」
彼の顔は絶望に染まっている、まだ決まったわけじゃないが、こんな事を言われたら考えずにはいられないんだろう。もしそうだったら、と。そして彼は口を開いた。
「うそだ…嘘だ嘘だ嘘だ!そんなの信じられるか!とりあえず危なそうだから嘘をついて殺そうとしてるんじゃないのか!?」
「落ち着いて、だからこれから確かめるの!私は無闇に人妖を殺したりしない!」
そう、これからやる事は彼が人間であるのか、そうじゃないのかを確かめるためにやるんだでも…これを言ってもこの状態なら信じてもらえないかもしれない
…いや、絶対そうだ。ここは教えずにやろう教えて逃げられたら、本当に殺すしかなくなる。彼が妖怪になったのではなく、そういう[力]に目覚めたのだと信じるんだ。
私は無言で彼の襟を掴んで、持ち上げる
「きっと、きっと大丈夫だから」
半ば自分に言い聞かせるように言い、そして
霊力を使わずに、しかし全力で
彼の体を掌底で打ち抜いた!
骨の砕ける感触、音。そしてぐしゃっと
何かが潰れる感触が掌から伝わる
彼は前方にある木に衝突した。もし彼が妖怪になっていたら、大したダメージもない。だが、手応えからしてその線はなさそうだ。もし妖怪になっていないなら、私は彼が能力に目覚めてるかもしれないと思った。もし目覚めてるなら、自らの死を感じ取った時、本能的に使えるかもと思ったのだ。体を強化する類のものならこんな感触はしないから、体の治癒力を底上げする類のものなのか、もしそうなら今ので死んでしまっては元も子もないのだが、ただの人間でも即死しないように、霊力を使わなかったのでなんとか殺さずに済んだと安堵したが、なぜか違和感を感じる
私は彼の側まで飛んでいく、そして彼の状態を見た
彼は口から血が溢れているが、肺が潰れ、空気を吐き出せないからかそのままにしてる。
(おかしい、再生しない…このままじゃ死んでしまう!それにさっきから感じる違和感は何?)
彼の能力が発動しないことに焦りを感じていた私は違和感の正体に気づいた
(そうだ、彼は最初からありえない速度に地面に落下して生きていた!しかも瀕死の重症だったにも関わらずに…)
そして理解してしまった、もし彼が本当に能力に目覚めたのなら、実際に見ている効果をそのまま表すなら[身体機能を底上げする程度の能力]になる。それならばあの落下に耐えたことにも怪我が全て癒えたのにも説明がつく、しかしさっきの感覚は明らかに骨を砕き中の内臓をも破壊していた、霊力を使わない程度の威力で、だ。ただの人間が生きていたとしてもそのままなら確実に死なような威力なのだ。もし彼女の考察が間違っていたとしても体の再生さえ始まれば、なんとかなったが能力が発動する兆しすら見えずに、息絶えようとしていた。
「あ…あぁ…ああああああ!!!!嘘嘘嘘嘘嘘嘘!そんなの…こんなことって…こんなことってぇ!!」
私は自らしてしまった事を受け入れられず、ただ祈ることしか出来なかった、何故彼は以前あの衝撃に耐えることができて、どうしてあの怪我が治ったのか、考えすらせずに、彼の手をとって励まして、奇跡が起こる事をひたすら祈るしか出来なかった。
そして私は気づいた
「もしかして、能力を発動させる力がないのかも…」
(そうだ、もしそうなら私の霊力をわければ!)
実際には少し違ったが、彼女は手を通して霊力を送り続けた。そして、本来なら使う必要のない自らの霊力と霊夢から分けられた霊力を使い、能力を発動した
僕の心の準備も待たずに彼女は僕の着物の襟首を掴み体を持ち上げた。そしてその瞬間僕の体を凄まじい
衝撃が襲い、そして体の中からバキバキという音と、
ぐしゃりという音が、同時に響いた。そして痛みを感じるよりも早く、ドガっと体が何かに当たったような感じがして、そのまま地面に落ちる。僕はなんとか立ち上がろうとしたが、腕がほとんど動かず、そして肺が潰れたのか、熱い塊がせりあがってくる感覚があるだけで酸素を取り込むことができない。あの時とは違う、臓器が潰れて物理的に働からなくなり、いくら祈っても治らず、そして痛みも感じずに息を吸えないもどかしさ感じながらだんだんと意識が薄れていった。薄れる意識の中、手に伝わる感覚もなく頭の中は霊夢への殺意と怒りで埋め尽くされていた
「どうしてどうしてどうしてどうしてやっぱり殺す気だったんだ助けるかなんでなかったんだなんで殺すんだ僕は何もしてないのに。どうして僕がこんな目にあう!どうして!……あの女……必ず…必ず殺してやる!こんな怪我さえなければ今すぐに!ちくしょうなんで治らないんだよ!手足が生えるんだからこんな怪我くらい治れよ!
だが、願いは虚しく意識がほとんど完全に落ちようとしていたとき、体に力が流れてくるような感覚があった、その力がなんなのかを意識するよりもはやく、体は既に元に戻っていた。目の前には手を握り、涙を流して喜ぶ霊夢がいた、そしてそれを認識した瞬間
視界が真っ赤に染まった
私は力を流しているとだんだん彼の体が、目に見える速度で治っていた。とても不思議な光景だと、思った次の瞬間には彼は立ち上がっていた、そして…
「よかった!生きてて…本当によかった…」
そして顔をあげると同時に彼の体から凄まじい衝撃波が生まれ、私や、周囲の木々を吹き飛ばした
「なっ!?ちょっと!?」
突然のことに少し驚いたが、私は能力…[空を飛ぶ程度の能力]を使って、空中で体勢を戻し慌てて彼に向き直る。
「な、なに!?」
そこには、周りから霊力を吸収…いや、その霊力を体の周囲に集めている彼がいた。彼の姿は黒っぽい半透明に見えるエネルギーが、まるで悪魔を連想させるかのように、角や尻尾、そして羽の形をしていた。