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大きくなったら

作者: 七夜

 キリン!

 家の荷物整理をして出てきた一枚のはがき。20年以上前の年賀状だった。私が5歳、2つしたの妹が3歳の時。

 我が家のその年の年賀状のテーマは「大きくなったらなにになりたい?」だった。妹の写真から吹き出しが伸び「キリン!」と書かれている。隣に映っている私の写真から伸びた吹き出しには「プリンセス」と書かれていた。

 その前は妹はゾウになりたかったらしい。大きくなったら何になりたい?という質問の意図を成長ではなく、物理的な大きさとして捉えてしまっていたのだろう。

 その年、サンタさんはリクエストを叶え、私にプリンセスのお化粧セットを、妹には木製の汽車セットを送ってくれた。

 思えば妹は女の子が欲しがりそうなものをものをあまりプレゼントとしてリクエストしてこなかった。虫眼鏡に望遠鏡、時計、貯金箱はたまたマトリョシカ…等と男の子らしいわけでは決してないが、世の女の子が欲しがるものというセレクトでもない。一方や私は、リカちゃん人形、服、靴、財布と典型的な女の子のような注文ばかりしていた。

 

 学校に行けば必ずと言っていいほど将来の夢について考えさせられる。将来の夢という名の将来なりたい職業選びだ。小学生の頃は何の引っ掛かりもなくクラスの子と同じようになりたい職業について考え発表していた。だけどだんだん働きたいと思えなくなった。中学生のころには専業主婦になりたいと心の底から思いながら、無理やりつっくた「夢」について作文を書いた。高校生になって進路を決めるとき看護の専門学校を選ぶ友達が多かった。友達は看護師なら就職もスムーズだし、子どもが生まれた後もまた仕事をすることができるから看護師になりたいのだと言った。私は結婚した後も仕事をする前提で考えているのが信じられない気持ちだった。女性が活躍する社会、夫婦共働き。別に珍しくない。おかしいとも思わない。でも世の女性の大半が夫の稼ぎだけでは不安だから働いているのだと思っていた。違った。働きたくて働いている人は思っているより多いらしい。

 妹は成績優秀だった。動物が好きで将来は獣医師になりたいと言っていた。だけどだんだん学校へ行けなくなった。別にいじめがあったわけではない。でも心の内を多く語ったわけではないため何が原因なのかわわからない。何かが少しずつ積み重なったのかもしれない。結局高校を5年かけて卒業した。

 私は大学に行って司書の資格を取り公務員試験を潜り抜け司書になった。変わらない淡々とした日々。出社は私服だけど、華美な服装はNGなので持っている私服も地味なものばかりになりヒールの靴もほとんどない。見た目も中身もすかっり地味な女になった。もちろん彼氏もいない。

 妹は学校を出て結婚した。専業主婦になった。


 明日から妹は家を出て新婚生活が始まる。私の夢だったドレスを着て夢だった専業主婦になる。

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