決意
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グチャグチャ
ベチャガブガブリグシャ
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グチャカプリグチャグチャグチャ
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ツノの生えた狼達が少女を食べている。いや、もうそれは、少女とは言えない。
「数分前まで少女だったモノ」 この表現の方がおそらく正しい。
…腕を引きちぎり、…頭蓋を噛み砕き、足は持ち帰って食べるのだろうか。
少女を跡形もなく喰らい尽くした狼達は、次の獲物を探しに行くのか、森の中に消えていった。
「キモチガワルイ」
狼の立ち去り、誰もいない静かな空間に、どこか生物らしさを感じない、しかししっかりとした意味を持つ、そんな声が響いた。
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ああ、俺死んだんだな。
狼に食い殺され、死んだ俺は、全てが白の不思議な空間にいた。何も見えず、何も聞こえず、手の感覚もなければ足の感覚もない。しかしながら、しっかりと思考することができる。とても現実とは考えられない空間である。
ここはどこだろうか?これが、「死ぬ」ということなのか?
その質問に答えるものはいない。
たった1日だった。たった1日で死んでしまった。もっと生きたかった。でも、仕方がないだろう。
日も十分に当たらない、あんな猛獣の存在する森の中、なんの能力も無い非力な少女が、半日もっただけでも上出来というものだ。頑張った。普通の少女なら、泣いてしまうだろう。しかし俺は、少し普通ではない。中途半端ではあるが、前世の知識や性格が受け継がれてれいた。そして、人や川を探して歩いた。歩きまわって、疲れて、寝て、死んだ。
やれるだけやった。仕方がなっかった。
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………………それでも、………それでも、やっぱり死にたくない。
そう思ってしまうのが、生物としての本質だ。
嫌だ、、死にたくない、………イヤダ、……死にたくない、イヤダ、シニタクナイ、マダ、…シニタクナイ
思考できる時間も有限のようだ。五感に加え、考えることさえも、許されないのか。
当たり前だ。それが、本当の意味で、「死ぬ」ということなのだから。
それでも、願う
マダシニタクナイ と
ガン!!
!?!?イッ!タイ!?
その時、脳(と言って良いのかはわからないが)に強い衝撃がはしった。
ううっ!!!イタイ!イタイ!ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!
感覚は、消えているはずなのに、あり得ない痛みが、襲ってくる。
イタイイタイイタイイタイイタイいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい痛い痛い痛い痛い!!!………
………‥その痛みがようやく治まった時、ある事を思い出した。
それは、前世の、おそらく最も親しかった二人の親友の記憶だ。
一人は、高身長で、整った顔つきをした、17、8歳くらいの男子だ。
もう一人は、絶世といっても過言では無いほどの、どこか高貴さを感じさせる笑みを浮かべる同じく17歳くらいの女子だ。
無口で、面白みもなく、いつも一人でいながらも、寂しさを感じていた俺に、その二人だけは、何故か話しかけてくれた。相性が良かったのだろう。出会ってからというもの三人はいつも一緒だった。登下校も食事も休日も。何も無かった俺に全てを与えてくれた存在。
ハジメ!ミヤビ!!
横一 一、如月 雅 それが、二人の名前である。
しかし、思い出したのは、顔と名前だけである。彼らの、性格、声色、出会った時のこと、どこに行って何をして楽しんだのか、それら全てが、記憶にロックをかけたかのように思い出せない。
取り戻したい。彼らとの記憶を、思い出を!そして、もう一度会いたい!!
だから、まだ死にたくない!まだ!死なない!!
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『スキル:霊化 の発動条件を満たしました。種族:異世界人 から 種族:ゴースト へ進化します。』
五感はまだもどっていないのに声が聞こえた。
『種族変化に伴い 世界:地球 の住民 から 世界:アバンテス の住民 となったため スキル:ステータス を使用可能になりました。』
あばんてす?すてーたす? ゲームみたいだ。
『ゴーストの種族スキル:実体化、魔力化、具現化 を使用可能になりました。』
それは、精神に直接響くような女性の声で、機械的にも感じられる。
『スキル:ステータス を使用します。』
種族: ゴースト(魔力化状態)
名前: ******
性別: ♀
スキル: ステータス
実体化
魔力化
具現化
記憶(未解放)
称号: 地球からの転生者
記憶解放を望む者
*****
*****
ゴーストつまり幽霊。俺は死んで人からゴーストになった。条件がなんだったのかはわからないが、おそらく、そうなることが、俺を概念的にも実態的にも アバンテス つまり俺が転生した世界 の存在にする鍵だったのだろう。そして、ステータス、このスキルが…
『スキル:ステータス は世界:アバンテスの全ての住民に与えられるスキルです。スキル、称号などの自身の情報はもちろん、相対したり、出会ったりした相手の情報も種族、名前、性別まで知ることが出来ます。』
ステータスこそが、この世界の住民である証なのだろう。
『スキル:ステータスの付属機能、鑑定を行います。』
『種族:ゴースト:極めて貴重な種族。肉体的に完全に死ななかった生物は、大気中の正気に当てられ、ゾンビやグール、スケルトンなど、様々な形に進化することはあるが、先天的に魂が存在する事は無い。しかし、肉体的に死んでも尚、精神的に死なないで、生きる事を強く望んだ者や強い恨みを持った者は、この種族に進化する。
夜にしか現世で活動できないと言う欠点があるが、聖属性、神族性以外の攻撃で死ぬ事はない。』
『スキル:実体化:ゴーストの種族スキル。夜のみ使用可能。このスキルを使用する事で、現世で活動できる。』
『魔力化:ゴーストの種族スキル。ゴーストは夜以外は大気中の魔力と同化している。魔力化した状態で移動することもできる。』
『具現化:ゴーストの種族スキル。魔力を大量に消費し、物質を作れる。ただし、複数の物質から合成されるような、複雑な物質は作れない。』
『記憶:未解放』
『地球からの転生者:地球という魔力や魔法が存在しない、そしてそのかわりに科学や技術が発達したとても珍しい世界から転生してきた者。魔力量が多くなる。』
『記憶解放を望む者:記憶を取り戻す事を望み続ける』
スキル:実体化、魔力化、具現化この三つのスキルで俺は、アバンテスを生きていくのか。
この世界には、あのツノ狼を始めとした数多くの猛獣が存在している。中には、人間など米粒程度にしか思えない存在もいるかも知れない。
だが、俺は戦う術を手に入れた。実際に戦闘と言うものをした事はないけれど、この全身に満ち渡る力、魔力を使えば、勝てると言う自信がある。
そして、未解放の記憶スキル。未解放という事は、解放する方法があると言う事だ。絶対に取り戻す。その為なら、なんでもする。動物も人も必要とあらば、殺す。
始めようか。記憶を取り戻すための冒険を!
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………ところで…ここからどうやって出ればいんだ?
いつのまにか、はっきりしていた思考で考える。
『ゴーストはスキル:実体化を使用することで、現世に降り立つことができます。』
なるほど…
というか、これもステータスの効果なのか…このスキル、便利すぎだろ!この世界の人はみんなこのスキルを使っているのか。…ズルイな…
行くか。
「実体化!!」
全身を何かに包まれるような感覚になる。分散していた力が一点に集中する。
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気づいた時には、あの森の中に戻ってきていた。
先ず初めに気づいたのは、足が無くなった事だ。足だった部分は、白くてふわふわしたものに変わっている。常に浮遊した状態になったわけだ。よく画像でみる一般的な幽霊といった感じだ。
それでも、五感はあるらしく、風が当たる感触はあるし、動物の奇怪な鳴き声も聞こえる。
ああ、戻ってきた。
怖いはずなのに、それ以上に、少し懐かしくも感じる。
あたりを見回すと、そこには、食い尽くされた少女だったものがあった。それはもうただの骨の残骸なのだが、何故か少女だと分かったのは、それが、転生初日に狼に殺された俺だったからだ。
「キモチワルイ」
ゴーストになったためか、匂いもしないし、吐き気もない。しかし、そう思ってしまうのは、たった半日程度でも、自分の体だったからだ。
俺は、残骸の近くまで寄って、それを埋めた。ゴーストになっても、実体化する事で、触れる事ができるようだ。近くにあった比較的鮮やかな色合いの花を摘み、埋めた場所の上に手向ける。
「さようなら。行ってきます。」
それだけ言って、歩き出す。
転生してすぐ死んじゃうって言う珍しい一話目のわりに結構テンプレっぽくなるかもです。
想像力がなさすぎて………
おまけに国語力も無いので間違ってる所があるかも知れないです。
出来るだけ間違えないように精進します!