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フタリノアソビ

 あれから数日。

 仙崎は緑の生える丘陵地帯で逃げ回っていた。

「ミナ!! それなし!! 僕がっ――」

 後ろから襟を掴まれ、引きずり倒されて顔に線が引かれて〝正〟の字が完成した。

「げほっ……あのねぇ!」

 ――はい、ごー、よーん、さーん……。

 ミナの指が一本ずつ折られてカウントダウンが始まる。

 遠くで巻き込まれたくないイリーガルとラズリーが傍観して、助けに来ようなんて気配は一切見せない。

 これは単なる発散だ。ミナの場合、魔力やらその他の力が溜まるがそれらを使用する魔法だとかそういう物が扱えない。基本的に他人の魔法を奪って使うスタイルのため、溜まりまくって定期的に排出しないと身体に悪い。

 そんな訳で仙崎は、魔法の精製機代わりにされて、自分の魔法から逃げ回りながら鬼ごっこのようなことをしている。捕まる度に顔に書かれる線に特に意味は無く、何かあると思わせて本気で逃げるように仕向ける為だけのもの。

「これ死ぬって!!」

 ――次は……強制詠唱フォーシングチャント

 がくんっと、踏み出した足が思うように動かせずにバランスを崩す。頭の中の魔法を処理する領域にかなりの負荷が掛かったからだろう。次は何が来るのかとビクビクしながら全属性をすぐに放てるように詠唱する。

 ミナの厄介なところは相手が使える魔法に足して、自分が知っている魔法を相手に無理矢理処理させる異能があるところだ。

「やめてもう!! 僕のドレイン魔法解放してよ!! 返してよ!!」

 仙崎の魔力が無くなると、事前に奪っておいたドレインで自分の魔力を放出する。放っておけば再び戻ってきて意味が無いから、転移系魔法で飛ばして無理矢理仙崎に吸い込ませてさらに魔法を……。

「干からびるよ!! 死んじゃうよ!!」

 ――大丈夫、普通の魔法使いじゃないからそのくらいじゃ死なない。

 ミナが腕を振り上げると無数の剣が顕現し、振り下ろされると同時に仙崎を襲う。

「まさかの召喚!?」

 属性魔法で来るかと思って物理防御は用意していなかった。

 それでも対抗できないわけじゃない。空中に無数の爆破魔法をばらまいて剣の軌道を逸らす。それでも連続して降ってくる剣の雨すべてを吹き飛ばせるわけではない。

 ――ま、発散がてら鍛えてやらんと。

 感情のない瞳で仙崎を見据え、それでいてこうして遊ぶのが楽しい? 感情が薄れていた、あいつなら何しても大丈夫だなんて思っているのは油断だろうか。怪我とか死とか、全然思考に入ってなかった。

「ミナ、ほんと無理っ、まっ――」

 そのまま動き続ければ当たらないように放っていた。あいつなら動き続けるだろうと、その前提でやっていたから、仙崎がつまずいて動きが鈍ったことに対応できなかった。

 ――まずっ。

 今から残りの剣を投げたところで間に合わない、狙撃用の魔法なんて操作する腕はない、魔法弾じゃないからキャンセルが効かない、どうする――?

 ――切れても、刺さってもどうにでもなれっ!

 ミナは即座に転移で飛んで、仙崎を押し倒す。ギリギリのタイミングで間に合った……自分の背中がバッサリと切れて、片腕は肉が千切れ飛んで骨が露出する。

「ミナっ!?」

 ――やっぱり吸収できない……か。

「なんで僕を庇ったのさバカ!」

 ――それ、は……。

 視界がぼやける、音が遠くなる、感覚が消えていく。なれたつもりでいたが、やっぱりショック症状はどうにもならないようだ。

「すぐに回復魔法使うから、いつもみたく吸収しないでよ」

 ――うわ……ダメだこれは、落ちる。

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