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サバクノユキ

 ――逃げ、切った……かな?

 肌は熱い風呂に放り込まれたかの如く真っ赤、足は火傷で皮膚が剥がれそうになり痛みすら感じない。音がなんとか認識できるが、視界は赤や黄、白に灼けてまるでダメだ。真夏の炎天下で目が痛くなるアレを通り越している。いつかの氷雪地帯でも同じ目に遭った。反射光だけで人の目を殺す事が出来る砂漠は危険すぎる。

 大きく息をして、奪い取った水を少し飲む。

 ――不味い……感覚が、痺れてきた。脱水、熱中症、行き過ぎた。

 状況は、より酷くなったか。衣服をすべて失い少量の水を得た。釣り合いが取れない選択だったかと言われたら、リスクを確実に回避したかったと答えるだろう。

 ――あ、ははっ、死ぬか? 死ぬのか、また。また気づけばどこかで始まるのか。どうでもいい、どうにでもなれ、変えられないなら、流されるなら……それでも抗い続けようか。無駄と分かっても。

 吹き付ける熱風と砂。影でじっとしているだけで擦り傷を負い意識が朦朧とする。いつも通りのことだが、そろそろ無茶をしてでもここを突破した方がいいだろう。

 抗うことは無駄だ。苦しいのなら今の身体じぶんを捨ててしまえばすぐ楽になれる。

 しかし、それは別の苦しみへ続く迂回路でしかない。ならば……抗った先にある別の未来を目指して。

 ――待つのも飽いた、どうせ死んでもいいんなら結構無茶しても大丈夫じゃん。

 目を瞑って、胸に手を当て1、2、3……。

 ――行ける、ふらつくな、限界近いけど行ける、大丈夫。

 灼熱の日差しの下に飛び出て、遠くにある廃ビルを見る。あそこは別の生き残りがテリトリーにしている場所だが、襲えばそこそこの物資が手に入るだろう。正面切ってやり合えば危ないが、このままこそこそしていてもそのうち干からびる。だったら僅かな可能性にかけようじゃないかと。

 砂漠にだって雪が降ることがある、たまには積もる。絶対にあり得ないなんて決めつけるのは早い。

 ――可能性はゼロじゃない。

 動き始めれば途端に影が差した。見上げれば久しぶりに見る黒い雲、雨雲。ビュウといつもと違う風が吹いて、遅れて生温い……ちょっと熱い雨がポタポタと降り始めた。

 日焼けした肌に滲みる。それでも雨で砂が固まり、影になるだけ動きやすくはある。周辺を警戒しつつ一気に距離を詰め、近場の廃墟に隠れて様子を伺う。いくら僅かな可能性に掛けるとは言っても、昼中正面突破を掛けるような事はしない。

 先に相手の警戒パターンを観察して、交代の時に隙が出来ればそこを狙う。なければ夜の闇に紛れて各個撃破か、もしくは忍び込んで盗む。いままでだってそれでやってきた。多少装備が無いだの、怪我をして動きづらいだの制約があったところでどうと言うことはない。

 ――あいつら……こっちに来る? え、なんで、バレた?

 おおまか予想しようとしたら、向こうから来た。今までにも何度か見たことがあるが、必ず二人一組で行動して日よけのフードを被っている。しかも今回は棍棒まで装備して。

 素手でやりあってどうにか出来るが、正面切ってやり合いたくはない。

 ――来てるけど、気付いてない。隠れれば……。

 じりっと、後ろに下がれば人に当たった。

「よぉ、かくれんぼは終わりだ」

 砂色のフードに錆びた鉄パイプを持った野郎が――


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