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フタリノカンケイ

「シショー」

 そう呼ばれた彼は、照りつける焦熱の下で涼しい顔をしていた。

「なんだい、ラズリー」

「お姉さん生きてますよね?」

「生きてるよ。ミナは絶対に生きている」

 仙崎霧夜ネーベルはそう信じて旅をしている。

 あの日、いきなり戦火に巻き込まれ、そしていなくなった大切な友達と再び出会うために歩みを止めることは無い。ぼろぼろになってまで庇ってくれて、最後には爆撃に巻き込まれていなくなってしまった。

 最初は死んだ、そう考えもした。しかし死体はおろか身体の一部すらも見つからず、死んだとは思えなくなったのだ。

 ならばどこかで絶対に生きている。連れ去られたかも知れない。

 姿が見えなくても分かる、近くにいれば分かる。拒絶されなければ心で繋がっているから、お互いが求め合って探し合っていればいつかは出会える。

「シショー! あっちにおっきな建物があります!」

「廃ビル……かぁ。なんだろ、なんかあるような気がする」

 砂漠の熱に揺らめく大気の果て、蜃気楼ではないことを祈りながら二人は進路を変えた。

「ラズリー、結構距離あると思うから早め早めで休憩するよ」

 目標物のない場所では目測は狂いやすい。ほんの数キロと侮って実は光の屈折でバカみたいな距離がありましたなんてこともある。

 現に仙崎はどこぞのステップ地帯で酷い目に遭ったことがある。照りつける日差しと強風の中、平原を進んで距離を見誤り日焼けをしながら寒さに震えて死にかけた事がある。川が見えたと思い向かえば思った以上の距離が有り、辿り着くまでに何度も休憩を挟むことになった。

 そういうことをミナと二人、一緒に何度もやっているからこそ、まだやれると思った時にはなるべく休憩を挟んで、一緒にいる仲間を気にしながら動くようにはしている。

「あっつぅ……」

「シショー……涼しい顔で言わないでください。それと日陰がないです」

「そりゃあ砂漠だし……あ、砂丘。あれ越えたら影があるんじゃないかな」

 全身をぼろ切れで覆っているとは言え、容赦なく突き抜けてくる日差しと吹き込んでくる砂混じりの熱風に身体はとっくに悲鳴を上げて乾き始めている。

「お姉さん干からびてないですよね」

「大丈夫だと思うよ? 前に砂漠を旅したときは、砂を掘って水を集めたりサボテン食べたり……あと虫とか死骸とか食べて自分のおしっこ飲んだりしてたし。ミナは追い込めばなんだってやるから」

「えぇーお姉さんって結構……」

「まあ……僕には無理」

 そんなことを話しながら歩いていれば、

「あれ?」

「シショー、沈みます」

「砂が変わった? ……砂丘手前なら流砂もありか」

 昔、何度も沈みかけてミナに助けてもらった覚えがある。

「引き返して回り道しようか」

「やーです疲れましたー」

「ここで休憩して干からびるかー、それとも無理矢理進んで身動き取れなくなるかー、回り道して涼しい影に進むか。どれがいい?」

「シショーは意地悪です!」

「というか休憩よりも影に入ること優先しないとちょっと不味い。もうすぐお昼だからさ、酷いことになるよ?」

「急ぎましょうシショー!」

「こら走らない! ってか置いて行かないで!?」

 一歩進む度にずぼずぼと沈む場所でささっと走って行くラズリーを追いかけていく。なんで軽く走れるのだろうか、体重が軽いから?







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