30話
前半、字詰まってて読みづらいかもです。
両親を探してダンジョンに入ってしまった広末さん。途中で気を失い倒れた所を助け、取り敢えず地下10階のボス部屋にて今後の行動を考えている所だ。
今になって冷静に考えれば助けたのは失敗だったな。
取り敢えず、両親の件を伝えるのは難しい。方法的にも、その場合のリスク的にも。
勿論、可哀想だと思う。両親の死も、広末さんが後に味わう気持ちも。でもそれは偶々知ってしまったから可哀想だと思ったに過ぎない。
ダンジョンが能力の無い人にも認識出来るようになってから約1ヶ月。現在、ダンジョンで死んだのは4540人。これは各国の調査隊員も含めた総人数だ。
1年間に死ぬ人は約6000万人。1月辺り約500万人が死んでいる状況だ。この数値を見てどうこう言う気は無い。
ただ、人が死ぬ度、それを知る度、毎回毎回悲しんでいたらそれだけで人生終わってしまう。
確かに、身内や大切な人の死や不幸は悲しいし憤りもするだろう。だが、面識も無い他人の死や不幸に感情移入して悲しんでいる暇は無い。中には身内の死すら弔わない人間も存在するのだ。
自分の考え方や価値観を他人と比べても仕方がない。他人の不幸なんかどうでもいい人、慈しみはするが何もしない人、せめてもと祈りを捧げる人、偽善だとしても募金やメッセージを送る人、実際に人命を救った人。それぞれがそれぞれの考え方や価値観を持って生きている。
俺はこの中で言うと慈しみはするが何もしない人だ。勿論、あくまでも他人の話だ。健太と舞が危険に晒されるようであれば全部捨ててでも助ける為にあらゆる手を尽くす。今回は広末さんをあまり考えず助けてしまったが。。。
俺と同じような考えの人もたくさんいるだろう。でもその中の多くは何もしないと言うより何も出来ない人であるはずだ。TVニュースで事故死を知ったとして、大変だな〜、自分も気を付けよう。そう思う人が大多数の筈だ。事故で死んだ人の名前を次の日、明確に言える人がどれだけいるだろうか??
俺がもし、事故現場に居合わせた場合、助ける事は容易である。だが、1人助けて身バレでもしようものなら他の人も助けを縋り始める。挙句の果てに助けてくれなかった事を理由に恨み文句を言い始める。
助ける力があろうが無かろうが、全てを助ける事が出来、その為に全てを投げ出す覚悟が無いならそんなヒーローごっこやるべきではない。スーパーマンが全ての悪党や事故から人々を救えている訳では無いのだ。
俺が魔物を倒した事でダンジョンを認識出来る様になったと世界中の人が知った時、多くの人は俺の事を責めるだろう。全ての元凶はお前だ。無責任だ。ダンジョンで死んだ人に対してどう思うのか。死ね。
これはあくまでも予想でしか無いが、実際に起こってもおかしくないと思っている。そして、俺は仮にこうなったとてどうでもいい。
責任を感じないのか?と言われると勿論感じている。感じてはいるが、責任を取る必要は無いと思っている。
理由は2つ。先ず1つ目に、魔物が溢れて一般民を襲う可能性が基本的に無いから。これはキチンとダンジョンと魔物について先程より深く調べた結果分かった事で、魔物は契約されていない限り階層の移動が出来ないのだ。俺が持ってるテイムマスターの様な能力で契約して初めて他の階への移動が出来、外での生存が可能になるのだ。俺もずっと魔物が溢れる想像をしていたんだが、今のシステム上、誰かがテイムの能力を持っていてそれを悪用するしか魔物が地上で暴れる構図は出来上がらない。因みに契約なしで無理やり階層の移動を試みた場合、階段もしくは出入り口の透明な膜に触れた瞬間、その階層のどこかに自動転送されるシステムになっている。
2つ目はダンジョンで死んだ人はあくまでも自分の意思でダンジョンに入り、スライムやその先の階の魔物に殺されているのだ。謎の洞窟と言われているのがダンジョンであり、中にいるのがスライムで、しかもかなり凶悪な存在である事を知っていようが、知らなかろうが自らの意思で入ると。もしくは組織に属していて上からの指示に従うと。そう決め行動した結果、待っていたのが死だったのだ。
俺が魔物を倒さなければ??ダンジョンを早く報告して塞いでいれば??情報を提供していれば??
魔物からの犠牲者はきっと減った事だろう。だが、減った所で全てを救う事は出来ない。1人救えば次はこっち。次はこっち。断れば、なんて無責任なんだ!死ねよ!w。
俺は救わなかった事を後悔はしないし、これからも考え方は変わらないだろう。俺は責任感に溢れる人間ではない。隠せる間は隠すし、バレた時に責められるのも構わないが、俺は俺の思った通りに生きていく。
話が逸れてしまったが、広末さんを助けてしまった以上、何らかの対策をしなければいけない。いっそのこと魔物に殺させるか、俺が殺すのが一番合理的である。
合理的ではあるが、なんか俺の中でピンと来ない。殺さなくて済むならそれでいい。俺は別に殺人願望がある訳では無いからな。俺の存在と能力がバレない事と言う条件を満たせるなら手軽に助けられる命、助けても損はないだろう。得もないが。
そこで今回、広末さんをどうバレずに帰すかだが。マネージャーの中野さんに迎えに来て貰うことにした。というか、もう既に山の麓まで来ている。広末さんがダンジョンの前で電話をしていた相手だ。
ダンジョンに入ってまだ1時間と少しくらいなので、外だと20分程しか経っていない。電話をする前からもうGPSで居場所を特定して向かっていたんだろう。でないとこんな田舎の山にそんな早く来れない。
そうと分かれば後は難しくない。広末さんが起きる前にダンジョンの外に出して、山の登山道中にそっと寝かせておけば勝手に拾って帰るだろう。広末さんが起きなければマネージャーさんはおぶるの大変だと思うが、そこは頑張って貰おう。因みにこのマネージャー中野さんは女性だ。
早速、運び出してスタンバイしたい所だが、先ずやらなけらば行けない事がある。それはスマホの電源を切る事。
スマホの電源を切るのはダンジョンから出たら通信が復活し、またGPSが機能し始める。ログを辿ればダンジョンに入って出てきた事がバレるだろう。これを防ぐためにだ。スマホは今ダンジョン内にあるので、GPSも機能していない状態、恐らくマネージャー中野さんはここ20分程、スマホの電源が切れたのかと物凄く焦っているだろう。
広末さんのポケットからスマホを取り出して電源を切る。指紋など残らないように拭き取ってから戻した。それと一緒にスライムの魔石も抜いて置く。魔石の存在やその利用価値をある程度知ってる人に持ってるのバレたら確実にお縄だろうからな。
その後、もう一度広末さんを抱えて、ダンジョンの外へと出る。山の途中、半分より手前くらいの所でうつ伏せの状態で寝かせた。
外に運ぶまでに広末さんが起きないかだけ心配だったが、余程疲れているのかぐっすりだった。
・・・・・
広末さんを山の途中に放置する事30分。漸くマネージャー中野さんが到着した。
「はっ!!すずっ!!こんな所で倒れて、ねぇ、すず!大丈夫!?すず!起きてっ!ってすず、熱あるんじゃない!?怪我はないっ!?」
「ん、んぅ〜、おかぁさん??」
「何寝ぼけてんのよっ!私よ!中野 明美!すずのマネージャー!分かる!?」
「んぁ、中野さんかぁ、ごめんなさい、私、やっぱり、心配で、、」
「分かってるよ!警察にも捜索願いは出してるから!すずがこんな所に1人で来る事ないよ!行くなら、せめて私に一言くれれば私もついて来たのに」
「ごめんなさぃ」
「今はいいわよ!兎に角無事で良かったわ。今日はもう撮影断ってるから帰りましょう。」
「でも、お母さんと、お父さんが、洞窟にいるかも知れないから、、ぁれ?ここ洞窟じゃなぃ??」
「洞窟??何言ってんのよ、此処は山の途中よ」
「ぇ、でも、私、確かに洞窟の中に入って、それで、ぷよぷよさんが飛んできて、、なんで私、ここにいるの??」
「もう、言ってる事意味不明よ。今は混乱してるのよ。今日は帰って体休めなさい。また明日にでも話は聞いてあげるわ」
「でも、、」
「今日は帰る!わかった!?」
「はぃ」
「ほら、じゃぁ乗って、おぶってあげるから」
「そんなの、中野さんに、悪いよぉ」
「病人は黙ってなさい。裏で体張るのが芸能マネの仕事なのよ。給料は事務所から踏んだくるから安心して乗りなさい。」
「えぇ、、」
その後も少し揉めていたが、無事マネージャー中野さんにおぶられて山を降りていった。軽いとはいえ女性では大変だろうが、頑張れ。
広末さんの中では摩訶不思議な事が沢山あるだろうが、今はどうしようもないので放置だ。恐らくダンジョンの事はマネージャーに話すだろうし、その結果近々ダンジョンは発見されるだろう。
自衛隊にダンジョン入り口を囲われてもミラージュ帽があるので、出入りは基本的に出来るはずだ。ただ、リスクが無い訳では無いので、出来ればそうなる前に攻略しきってしまいたいものだ。
お読みいただきありがとうございます。
この作品を投稿し始めた時、ブックマーク500件というのを目標にして始めたんですが、なんと4倍の2000件まで増えました!お読み頂いた方々、ブクマしてくれた方々、評価してくれた方々、感想くれた方々、本当にありがとうございます。
至らない点も多々あるかと思いますが、今後もお楽しみいただければ幸いです。




