25話
「いや、え?」
結論から言うと、ストーンサーペントは無事倒す事が出来た。出来たが、まさかLevel3の魔物すらも一撃で屠るとは思っていなかった。
それにストーンサーペントは明らかに俺より強かった。何故そんな事が言えるかと言うと、俺が本気で踏み込んで接近した時ストーンサーペントは俺に気付いていた。一度目を合わせ、呆れる様に俺から目を逸らした。その上で[魔穿]の弾を避けなかった。
恐らく俺の攻撃なんか当たっても問題無いと力を見せつけるつもりだったんだろうが、俺も想像だにしてなかった[魔穿]の威力に一撃で沈んでしまったのだ。正直、目が合った瞬間死んだと思った。今でも心臓の音がうるさい位だ。
「命拾いしたな。ストーンサーペントがアホじゃなければ死んだのは俺だった」
本気がどうとかじゃなかった。油断なんて微塵もしてなかったが勝てる気がしなかった。でも勝ってしまった。
その後5分くらいボーとして、戦利品の確認を始めた。
・ストーンサーペントの魔石
薄い緑色の魔石。これは本当にビー玉サイズ。錬金素材的には薄翠の魔石(小)だ。Level3の魔物から翠になるんだろう。次は近接系の武器でも作ろかな?
・エスケープ:ダンジョン内の行った事がある場所へ転移する事が出来る。ボス部屋への直接転移は出来ない。能力使用後5分間のリキャストタイムが必要となる。
バリ有難い能力。ダンジョン限定能力だがそれでも余りある効果だ。これからのダンジョン攻略時間を圧倒的に短縮出来る。帰りに後50時間掛かると思っていたが、エスケープの能力があるので一瞬で帰れる。
後、リキャストタイムってのは再使用待機時間の事で、一度エスケープ能力使用後5分間は再度エスケープ能力を使えない事になる。つまり、戦闘の切り札にはなるけど、常時使える様な便利な能力ではない。
ここでまたダンジョン攻略を進めるか迷ったが、流石に今回の成果は十分なのでささっと帰る事にした。エスケープ能力の使い方は簡単で転移したい場所を思い浮かべてエスケープと言うだけ。
地下1階の洞窟入り口を思い浮かべて、
「エスケープ。おぉ」
ホント一瞬で景色が変わった。分かっていたが少しだけ驚いた。目の前は直ぐにダンジョンの出入り口だ。
「こりゃ便利な能力だな」
第2回ダンジョン攻略、所要時間102時間5分、到達階数60階。
「十分だな」
◇◇◇◇◇◇◇
家に帰ってから速攻で風呂に入って、今回は何年振りかの湯船に浸かった。普段は水道代節約の為にシャワーで5分。家だけは田舎だしそこそこ大きいが生活は一般の学生と比べると少々貧しいだろう。勿論俺なんかより苦労してる人は沢山いると思うので贅沢は言えないが。
「はぁ〜、気持ちよかった〜」
ダンジョン攻略を終えて家に帰りついたのは28日、日曜日の午前5時。まだ外は暗かった。それから風呂に入る事1時間。今の時刻は午前6時。
こっちの時間で約1日分予定よりも早く帰って来たので今日1日暇になってしまった。何をしようか麦茶を飲みながら考えていた。
「ん〜、どうすっかな〜」
色々考えていたが、やっぱ考えるのは10トンある金塊の処理だ。色々強制閲覧で確認しながら模索していた所、良い案が見つかった。今回もBBAに手伝って貰う。だが、今回はBBAも懇願するだろうなぁ。靴でも舐めさそうか笑
BBAはまだ寝てるだろうから8時くらいまでは錬金リストから睨めっこしながら、良さげな物があれば作れる範囲で作る事にした。
そして、8時。
プルルルプルルル、プルッ
「はい、もしもし安藤です」
「よぉ、ばぁさん」
「またアンタかい。はぁ。今度はなんだい」
「今直ぐ家に来てくれ。今直ぐだ。要件は来てから話す」
「はぁ。アンタはおばさん使いの荒い孫だね〜」
「んじゃ」
ガチャッ。
1時間後。
ピンポーン。
「入れ」
ガチャ。
「玄関に迎えに来るくらいしたらどうだい?」
「ばぁさんには必要ないだろう。まぁ座ってくれ早速要件を伝える」
「はぁ。お茶くらい出せないもんかね〜」
「必要なら自分でやれ」
「はいはい」
麦茶を取りに行くBBA。
「勝手に進めるから聞いとけよ。今回の要件も金だ」
「なんだ、またかい?アンタ金なんか一体どこで手に入れてんのよ?」
「それはばぁさんに必要な情報ではない。それと最後まで話を聞いてから質問しろ」
「はぁ。分かったよ。どーぞ」
「今回も金だが、前回とは額が違う。金額で約1億相当だ」
ブボォォォ。
このBBA麦茶吹きやがった。最悪だわ。
「きったねぇな。良い歳して頼むわ。」
「誰のせいだと思ってんだい!?アンタ今いくらって言ったね!??」
「だがら1億だよ。いいから早く拭けよ。ティッシュ勿体ないからタオルでな」
「1億。。。」
遂に死んだか?動かんくなった。
「おい、ばぁさん。早く拭け」
「あ、あぁ、そうだな。1億で拭くんだな。」
頭おかしいな。このBBA。1億で拭くってなんだよ。
「もう茶飲むなよ。また吹かれても困るからな」
「もう吹かないさ。そこまで老いてもないよ」
「あっそ。んで今回売って貰うのはコレだ。」
袋に10個の金塊を入れた物を机に置く。
ドンッ。
「・・・こんな。金塊・・・」
「そう、1つ30kgきっかしある。それが10個だ。これを売って貰う。」
「こ、こんな。こんな物売れるのかい?それに、この金塊恐ろしい程に綺麗だが、必要な印が何一つないじゃないかい。前回もそうだったけど、この量は無理じゃないかい???」
「そこに気付くのは流石だな。その通り、本来取り扱いされている金にはその証がある。18Kとかの印が入ってるが、その金塊には一切ない。少なくとも正規取引されてる物ではないと言う事だ。だから普通には売れない」
「前回もそうだったね〜。あの店、あの金を買い取った時点でだいぶ黒い店の筈さね。アンタは何も知らないのかと思ってたら知識はあったんだね。でも今回は訳が違う。絶対にこの量の非正規な金買う所なんてないさ」
「そうだな、だから今回は売らない」
「はぃ?それじゃ只の宝の持ち腐れじゃないかい」
「売らないが、現金は頂く」
「一体どうやって?」
「こんな所まではばぁさんも知らないか。なぁばぁさん、埋蔵金ってどうなるか知ってるか??」
「知らないね〜。少なくとも私には関係の無かった話さね」
「埋蔵金は発見次第、警察に届けなければならない。その後、埋蔵金の価値を見定めると同時に所有者を探す。これには3ヶ月かかる。そして所有者が見つからなった場合、それは発見者と発見された土地の所有者の物になる。要するに3ヶ月所有者が出なければこの金塊は俺とばぁさんの物になる。そしてこの金塊は詳しくは言わないが、俺以外の所有者は絶対に現れない。現れたとしても金塊欲しさに集る野次馬だ」
「って事は・・その金塊は私の・・ん?いやそれだと結局売れないから意味ないじゃないかい?」
「そこでだ。日本には文化財保護法と言う法律がある。簡単に言えば日本国的に価値在るものを保護する事が目的の法律だ。この金塊には一切の印も傷も無く、且つ純金だ。国は保護するだろうなぁ、その場合、保護指定物同等の価値が報奨金として支払われる事になってる。本来、この金の量だと今の相場で15億はする。だが、国は汚い。15億丸々くれる訳がない。まぁ、貰えて1億って所に落ち着くだろうな。」
「へぇ〜、そんな方法があったとはねぇ」
「そこで、今回はばぁさんにも分け前を用意する。国がくれる報奨金の9割だ。」
「んっ!?ゴホッゴホッ!はぃっ!?アンタ一体どうゆう風の吹き回しだい!?」
「寧ろ正当だ。今回はかなり手間が掛かる。警察への報告、その後の連絡、野次馬の対応、文化庁の対応、報奨金の受け渡し等、後1番面倒なのは親族や知人。埋蔵金は所有者探しの為に報道される、要は出元がバレる。宝くじ当てると友達増える様なもんだな。薄汚い彼奴らが集るだろうな。その辺の処理も含めての金額だ」
「あぁ、確かに正当かも知れないね〜。いや、寧ろ報奨金次第では損さね」
「金塊の発見者はばぁさん。発見場所は家の下。シロアリ退治でもして穴掘ったら出て来たとでも言っとけ」
「無茶苦茶だね〜、そんなで通るのかい?」
「大丈夫だ。発見した土地の所有者と発見者、そして物の所有者が現れなければいいのだからな。なんか聞かれたら適当にあしらえばいいだろう」
「はいはい。金の為ならなんでもやるさね」
「んじゃ、早速警察持ってくか」
その後、警察に預け詳しい発見場所等、諸々の事情聴取をBBAが受けさせ、俺は先に帰宅した。
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