15話
今更だが、このダンジョンは第6のダンジョンらしい。第100まであって、数字が大きくなればなるほどダンジョンの難易度も上がるらしい。
「初ダンジョンだし、低めで良かった」
それでも迅速の羽衣とゴールドショットガン無しでは地下1階すら怪しかったと思うが。錬金術様様である。そして強制閲覧が無ければ錬金術を習得出来ず、このダンジョンも上層でグルグルグルグルしていた事だろう。
地下21階も景観は変わらない。道幅はまた少し広くなった。この階で発見した魔物はこいつ。
・名前:なし
・年齢:1000
・種族:ストーンボア
・Level:1
・能力:なし
完全に岩。2mくらいの岩。ボアだから猪なんだろうけど、頭どこ??強制閲覧無かったら本当に岩と間違うレベルの偽装だ。
取り敢えず作戦は今までと変わらない。
シュンッッ!ボンッ!
・ストーンボアの魔石
うん、問題無さそうだな。如何にも耐久力ありそうな雰囲気だったが、一発で仕留められるならば問題ない。
地下21階は1時間もかかった。迅速の羽衣の効果もありで走ってこのペースだからな。一般人だとどれくらいかかるんだろうか??考えるのもイヤになる広さだ。
地下22階の魔物は、
・名前:なし
・年齢:1000
・種族:ホーンボア
・Level:1
・能力:突進
・突進:体当たりに威力補正がかかる能力。
2mの体躯に1mくらいの大きな双角を携えた猪だ。アレで刺されたら痛いだろうな・・・。いや普通に死ねるばい。
シュンッッ!ズヴァンッ!!
・ホーンボアの魔石
いや〜良かった。難なく仕留められて一安心である。クリアタイムは1時間10分。
地下23階、
・名前:なし
・年齢:1000
・種族:スモールボア
・Level:1
・能力:なし
小さい。30㎝くらいだろうか??そしてちょっとかわいい。殺し辛いな。角も無いし、岩も無い。歩幅が小さくテクテクしてる。かわいい。
あっ、こっち向いた。
「おいでおいで〜」
膝をついて手を出した瞬間。
シュッ。ズドッ。
「カハッ!!ゴホッゴボッ!」
嘘だろ!おい!50mはあったぞ。俺の体制が悪かったのもあったが、まさか避けられないとは。
「バリ速いやん」
クッソ。見た目の愛らしさに油断した。間違い無く肋骨と内臓をやってる。バリ痛い。意識が朦朧としてくる。口から血が溢れて呼吸しにくい。
「こりゃちょっとヤバ、ゴボッ!」
早く倒して回復しないと・・。気合いで立ち上がりスモールボアを見るとまた目が合う。来るッ!!
シュッ。チッ。
右太ももに掠り、大きく傷が出来る。
「こりゃ次はねぇな。」
右足に力が入らない。満身創痍だ。攻撃を躱す程の余力は無い。一か八か賭けるしかねぇ。
確かにスモールボアは速い。だが、それだけだ。スタートの瞬間は何となく分かる。そしてスタートしたら一直線に突進してくる。今の状況でスモールボアに追いつく事は出来なくてもショットガンを撃つ事は出来る。後はスモールボアが勝手に弾に当たるのを待つだけだ。
勝負は一瞬。その一瞬に俺の命がかかっている。スモールボアと目が合う。
ボンッ!!シュッ。
バタッ。・・・。
「よっしゃぁぁぁぁっ、ゴホッゴホ!」
やべぇ。早く回復しないと。リュックから損傷回復薬を入れたペットボトルを取り出し一口飲む。
次の瞬間、体中を襲っていた節々の痛みが綺麗に無くなった。一瞬で。
「これ又とんでもない薬だな。作っといて正解だったな」
・スモールボアの魔石
今回ちょっとした油断から死にかけた。考えを改めないとダメだ。今まではどこか夢のような冒険を楽しんでいるような気分だったがこれは命の奪い合いだ。殺し、殺される関係なのだ。今まで戦闘が余りにも一方的だったから失念していたが、俺自身が強い訳では無い。あくまでもアイテムが優れているだけなのだ。
「防具も作った方がいいかもな」
迅速の羽衣に防御力は皆無だ。よく考えれば今の俺は紙装甲もいいとこだろう。攻撃を食らってはいけないのだ。鉄の板1枚でもあれば肋骨は逝っても内臓までは届かなかったかも知れない。そうなればもっと楽に倒せたかも知れない。
「もっと強くならないとな。それに改良点は沢山ある筈だ」
それから一戦一戦全力でやり、この階は50分で抜けた。
地下24階、
・名前:なし
・年齢:1000
・種族:ビッグボア
・Level:1
・能力:なし
4m。天井まであと1mの大きさの猪。ダンジョンの通路をほぼ塞いでいる。大きい分動きは鈍重だが、乗っかられたら一溜まりもないだろうな。
チュンッ!ズヴァンッ!ズヴァンッ!!
ビッグボアはタフで仕留めるのに二発必要だった。
地下24階クリアタイムは1時間20分。かなり時間がかかった。ゴールドショットガンの残弾数も500を切った。無くなれば強制的にダンジョン攻略は終了だ。帰りの分も考えないといけないので地下30階まで行けばギリギリだろう。
地下25階は21から24階の総集編。複数で行動してしいる事もあったが、先ずはスモールボアを仕留め、他は大きい順に倒していけば問題無く抜けれた。クリアタイムは1時間半。
地下26階、
・名前:なし
・年齢:1000
・種族:ストーンベア
・Level:1
・能力:剛腕
・剛腕:腕の筋力に強化補正がかかる。
熊の彫刻かな??確かに強そう。腕バリゴツい。でも俺には関係ない。何故ならどんだけ高威力でも当たらなければ意味はない!
・ストーンベアの魔石。
色は濃い青だが、テニスボールくらいの大きさになって来た。ストーンベアは頭狙えば一発で仕留められる。クリアタイムは2時間。
地下27階、
・名前:なし
・年齢:1000
・種族:サンドベア
・Level:1
・能力:剛腕
コイツは尻尾が弱点でそれ以外の部位にダメージはないタイプだった。頭吹き飛ばしても再生したので、倒す時は常に後ろを取る必要がある。正攻法では倒せない厄介な敵だった。それでもクリアタイムは2時間20分。
地下28階、
・名前:なし
・年齢:1000
・種族:アイアンベア
・Level:1
・能力:剛腕
腕に鋼鉄を纏った熊。腕は如何にもギラギラしているが、サンドベアよりも仕留めやすかった。クリアタイムは2時間40分。
地下29階、
・名前:なし
・年齢:1000
・種族:シルバーベア
・Level:1
・能力:剛腕
お次は全身銀色の熊。所詮はゴールドショットガンの餌食でクリアタイムは3時間。
地下30階は26〜29階の総集編。この階の熊達は何故か群れる事は無かった。どれも必ず単体で行動しており地下25階よりも楽だったかも知れない。クリアタイムは3時間20分。
そして立ちはだかる漆黒の門。今回のボスは倒せるかどうか五分五分だろうか。
・名前:なし
・年齢:1000
・種族:キングベア
・Level:2
・能力:豪腕、威圧
・豪腕:腕の筋力にかなり強化補正がかかる。
・威圧:自身よりもLevelの低い存在を恐慌状態にする。眼を合わせる事で効果を発揮する。
ここに来てLevel上位敵。今まで熊のとは格が違う。キングベアの攻撃が掠りでもすれば俺の人生はゲームオーバーだろう。更に威圧の能力があるから直視出来ない。直視して眼が合えばそれも恐らくゲームオーバー。
俺の本気のスピードがキングベアの速度を上回っていて、且つゴールドショットガンによる攻撃が通らないと負けだな。
ボス部屋は入ったら最後、ボスが死ぬか挑戦者が死ぬかの2択だ。途中で抜ける事は出来なくなっている。
帰るか??
いや、ここで引いても時間の無駄にしかならない。今帰れば次来た時も帰る羽目になるだろう。システムとやらが変わったのだから、それこそ世界の見方。生き方も変えて行かないといけない。今この世界で必要なのは強さだ。いや、強さが必要なのは前のシステムでも同じ筈だ。この世界で必要なのは圧倒的な力。理不尽なんぞ糞喰らえだ!
門に手をかけ、門がゆっくりと開く。
奥に5mはあろう熊を視界に捉える。ここから先はもう熊を見る事は出来ない。熊の足だけを頼りに攻撃する。
「さぁ、やってやろうじゃないか。命の奪い合いを」
シュンッ!!ボンッ!!ボンッ!
「グアァァ!!」ブンッ!!
キングベアの足元まで近付き、先ずは左足を狙い、直ぐに壁側に離脱する。キングベアが体制を崩しながらも腕でカウンターをしてくる。一応ダメージは入っている事に安心しながらも、あの一瞬で反撃までしてくる反応速度に冷や汗が止まらない。
恐らくキングベアは俺を睨んでいるんだろう。強烈な視線を感じるが、俺は眼を合わせる事は絶対にしない。最初に足を狙って機動力を奪ったのは正解だったのだろう。
キングベアは最初の位置から動かない。カウンター狙いか。果たして捉えられるかな?
シュンッッ!シュンッッ!ズヴァンッ!!
「ガァァッ!!」ドンッ
一旦、キングベアの左側を通り過ぎ後ろから右側に移動してショットガンを撃ちこむ。今度はカウンターを入れる事も出来ずにキングベアが手をついた。
絶好のチャンス。この機は逃さない。今の俺は油断など微塵もしていないのだから。
シュンッ!!ボンッ!ボンッ!
「グルァァ!」ブンッ!
シュンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッッ!!!
「グァ・。」
《第6ダンジョン地下30階層ボスの初討伐を確認。初討伐報酬【収納袋】を獲得》
《Level上昇》
「ハァ、ハァ、ハァ。やった」
極限の集中状態から解放されて気が抜けたのかその場に座り込んでしまった。
最後のカウンターはバリギリギリだった。あの攻撃で俺が死んでいる側になっていてもおかしくなかっただろう。
何はともあれ、俺は勝った!!
・収納袋:収納に優れた袋。物の大きさに関係無く容量は10トン。生物を収納する事は出来ない。
・キングベアの魔石
収納袋!!この小さな袋に10トンも入るらしい!!なんて素晴らしいアイテムだよおい!!魔石がリュックに入りきらなくなる所だったから助かる。早速、袋にリュックの中身を移して、袋をリュックの中に入れた。これで持ち運びも楽だ。
そしてキングベアの魔石なんだが、薄い黄色の魔石だった。てっきり青くてでっかいヤツを予想していたんだが、色が変わりサイズはスライムの魔石並。青より黄色の方が上と考えるのが妥当かな??
ゴールドショットガンの残弾数が210発。かなり消費してしまっているので今回はもう帰るしかないだろう。節約しながら帰らないとな。まぁ最悪魔物は無視してもいい。今はLevelも上がり熊達も剣でなら倒せるだろう。素手だといい勝負かもな。
初ダンジョン攻略にしては上等すぎる結果に満足したがら来た道を戻る。
◇◇◇◇◇
・名前:安藤 匠
・年齢:15
・種族:人種
・Level:2
・能力:強制閲覧、錬金術、テイムマスター
お読みいただきありがとうございます。




