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事情

大雅目線の話です。

うーん、上手くまとめられなかった。


和久と別れた大雅は圭介と一緒に学生寮に向かい管理人さんに聞くと部屋は圭介と偶然同じ部屋だった。

事前に送った荷物はすでに各部屋に置いてあり、寮の管理人さんの話を聞いた後2人で部屋に向かった。

そして圭介は地元の友人が他クラスにいて、会う約束をしていたらしく早々と支度をして出かけていった。


誰もいなくなった部屋で大雅は、備え付けのベットに座る。


「はぁー、疲れた」


思わずため息と独り言が出てしまうが、それも仕方ない。ここまで来るまでにかなりの視線を向けられてきたからだ。


(遅刻したことそんなに広まってるのかー)


本当はそれだけではないのだが、大雅は今まで恋愛をしたことがないし、するような環境で生活をしてきていないため、そういう感情に疎かった。


(それにしても、隊長も高校に入学しろなんて急なんだよなー)


大雅はちょうど1ヶ月前の記憶を思い出す。



大雅は任務を終え、本部へ戻ってきて八雲の隊長である「陽炎」こと堤 誠二に任務の報告をしに、執務室に向かった。部屋に入ると珍しく副隊長の「刹那」深野 美由紀もいた。


「隊長。今帰りました」


「ああ、お帰り。どうだった、今回の任務は」


「敵グループのアジトは壊滅。グループのリーダーは捕らえて現在「懺悔」が取り調べ中です」


「さすがSランクだな。仕事が早い」


大雅はまるで自分のことのように嬉しそうに言う誠二に、くすぐったい気持ちになり少し目を逸らして早口で言う。


「何いってるんですか。俺より誠治さんや美由紀さんがやった方が早いですよ」


日本トップの能力者の組織「八雲」をまとめる隊長、副隊長である2人も当然のようにSランクである。大雅もSランクではあるものの、やはり今までの経験や遂行してきた任務の量などの違いから、2人に勝つことは難しい。

また2人は大雅にとって親同然の存在である。幼い頃、能力者のテロ行為によって両親を失った大雅を、その現場に駆けつけた2人が保護し今に至る。


「んー、どうかしらね。能力を使うセンスだったら多分私や誠二より、大雅の方が上じゃないかしら」


美由紀が大雅を褒め、うんうんと誠二が頷く。若干親バカなところも入っているが、客観的に見ても大雅の戦闘センスは高く、特に能力の使い方が上手く、流石最年少Sランクの持ち主であると言ったところだ。


そんな大雅は自分を褒める2人に居た堪れない気持ちになり、話題を変えるために口を開く。


「そんなことより、美由紀さんがこの部屋にいるなんて、なんかあったんですか」


大雅がそう言うと、2人はちらっと目を合わしたあと、真剣な表情になる。


「実は、大雅に新しい任務をしてもらうことになった」


誠二の真剣な声に大雅は不思議に思う。


(こんなに誠治さんが真剣な声で言うなんてなんかすごい危険な任務なのか…?)


「なんの任務なんですか?」


恐る恐る大雅が誠二に尋ねると、美由紀が口を開いた。


「大雅。あなた東京能力高校に入学しなさい」


「…………え?」


「だから、今年の四月から東京能力高校に通うのよ」


「…………えぇぇええーーー!!!」


大雅の大きな声が執務室に響く。


「なんでですか!?俺今まで学校なんて通ったことないんですよ!」


「まぁまぁ、落ち着け。今回の任務にだってしっかり理由はある」


慌てている大雅に誠二が声をかける。


「1つ目の理由として、東京能力高校の教育状況の報告をしてほしい。なぜかわかるか?」


「…最近高校卒業の能力者のレベルがあまり良くないからですよね」


冷静さを取り戻した大雅が誠二からの質問に答える。


「そうだ。最近日本全体の能力者のレベルの低下が見られる。特に高校卒業時のレベルが低下している。そのため大雅には実際に生徒になって、その教育について報告してほしい。それで2つ目の理由なんだが、近頃学生の能力者が何者かに狙われるという事件が発生しているだろ」


学生の能力者が狙われる事件。ここ半年で10件ほど発生している。初めは暴力など命にかかわるほどではなかったのだが、ついに最近死者が出た。また学生の能力者の行方不明の届け出も増えており、関連性があるとして現在捜査中である。


「この件については、裏に大きな組織がいると推定されている。それに今はまだ報告されていないが、万が一「回収屋」がこの件に関わっているなんてことになったら、最悪の場合を予想せざるを得ないだろうな」



回収屋。

ここ2、3年で名が知られるようになり現在3000万円の賞金がかけられている裏社会の人物。本名不明、10代後半から20代前半の男性と推定される。トレードマークは左目の隠れたガスマスクで顔が一切わからない。能力は兎にも角にも、能力者かどうかすらもはっきりとしていない。というのも、回収屋が能力を使っているところを見たものが誰もいないのだ。使用する武器は、現在確認されているのでも銃、ナイフ、手榴弾、毒など。その時の状況によって武器を変える。主に、臓器取引を中心としておりターゲットの体内から臓器と呼ばれるものを全て取り、裏社会の業者に売っている。その他暗殺なども行なっている。


大雅は誠二の口から出た言葉に思わず疑問を口にする。


「そんなになんですか…?」


「ああ。あいつ、回収屋の実力は計り知れない。以前うちのレベルAの奴が回収屋と対峙したが、そいつは回収屋に手出しも出来ずに戦闘不能にさせられたしな」


これはかなり八雲の間でも騒ぎになったことだ。レベルAの能力者といっても八雲のレベルAの能力者である。そこらのレベルAとは格が違う。しかし回収屋はその能力者を自分は無傷で戦闘不能にさせた。


「それに回収屋は200m以上離れてた俺に気付きやがった。俺能力使っていたのによ」


「えっ」


誠二の言葉に、大雅は驚く。

誠二の能力は光操作。その能力の利用の1つで自身の周りの光を操作し自分を他人に認識させないようにすることができる。そのようにして、誠二は敵アジトに侵入し敵を倒す。また誠二は姿を見えなくするだけでなく、自身の気配も消すため、姿を消した誠二を見つけるなど不可能に等しい。

それなのに、回収屋は姿を消した誠二に、加えて200m以上離れた場所から、気づいている。


大雅が呆然としていると、誠二が口を開く。


「まぁ、回収屋が関わってるっていうのはもしもの話だから、あんまり気張りすぎるなよ。それで大雅には、被害拡大を防ぐために、東能高校に入学して学生達の護衛をしてほしいってわけだ」


「同然、大雅が霧氷だなんて知られる訳にもいかないから、入学試験を受けなきゃいけないの」


誠二が大雅に今回の任務の目的を伝えた後、美由紀が続いて話す。


「いつなんですか?入学試験」


「今日よ」


「…え?」


「手続きはもうしてあるから。受付が9時からで、10時から試験だからね」


大雅は恐る恐る執務室の壁にかけてある時計を見る。

現在の時刻は、8時50分。


「ええぇぇぇええーーーー!!!」


大雅の本日2度目の絶叫が執務室に響く。


「美由紀さん!なんでもっと早く言っといてくれないんですか!!!」


少なくともここから、東京能力高校までは30分以上かかる。

しかもまだ朝ごはんを食べていないし、準備など当然のようにしていない。


「大丈夫よ。大雅だったら簡単に合格できるわよ」


そういう話ではない。


「あー、懐かしいな。俺の母校、東能高校なんだよ」


「へぇーそうなんですかってそれどころじゃないです!」


その後はバタバタと支度をして9時50分になんとか東能高校にたどり着いた。



(いやー、あの時は大変だった。試験開始10分前に来たからだいぶ周りから変な目で見られてたけど)


大雅は1ヶ月前の出来事を思い出し遠い目をする。


(それなのに、今日は学校遅刻するし。こういう日に限って任務入るし)



昨夜、大通りから離れた人気のない路地から銃声が聞こえたと連絡を受け、大雅は現場に向かった。しかし大雅が着いた時には、現場には誰もおらず頭を銃で撃ち抜かれたような血痕が、3人分残っているだけだった。

その後は結局朝まで、現場周辺の調査や報告書の作成などをしていたため、大雅は学校に遅刻した。


入学式の時間をとっくに過ぎた頃に学校に着いた大雅は、事務の人に教室の場所を聞き走って教室に向かった。その結果かなり大きい音で扉を開けてしまい、そして1人の生徒の自己紹介の邪魔をしてしまった。クラスの人や自己紹介をしていた男子生徒から驚いた顔で見られ、大雅は帰りたい気持ちでいっぱいだった。

その後は、自己紹介をして自分の席に着き、隣の席だった自己紹介を邪魔してしまった男子生徒に謝り、話をした。その男子生徒の名前は観月 和久。黒髪で全体的に薄い顔立ちの、あまり目立たない雰囲気の男子生徒である。しかし和久は、大雅が今まで出会ったことのない性格の持ち主で大雅が人に囲まれていた間に、大雅と同じ部屋である菊地 圭介といつのまにか仲良くなっていた。


(遅刻したけど、和久や圭介と仲良くなれたし、高校生活楽しみだな)


そう思いながら、大雅は荷物の整理を始めた。






たくさんのブックマーク、評価ありがとうございます。

この話は、とにかく狂っている主人公が書きたくて書き始めました。

そのため主人公和久はかなり狂ってます。主人公のラブコメ要素は皆無の予定です。

温かい目で見てもらえると嬉しいです。

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