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学年別個人戦1

学年別個人戦が始まる。1週間かけて行われる個人戦は、トーナメント式で10分間の対人戦だ。

会場は学年ごとに分かれており、1年が第1アリーナ、2年が第2アリーナ、3年が第3アリーナである。


開会式はアリーナごとに行われ、その後個人戦に入る。アリーナは中央に戦闘を行う競技場があり、その競技場を囲うように観客席がある。競技場はA、B2つに区切られており、一回に2組が個人戦を行うことができる。競技中は各アリーナを行き来することができ、上級生の戦闘を学ぼうとする者、優秀な下級生を探す者などそれぞれ目的を持っている者も多い。また保護者や、能力者の事務所の関係者など観客も多くいる。


今回1年で個人戦に参加する生徒は、198人。戦闘系の能力者はおおよそ能力者全体の4割と言われている。しかし戦闘系、サポート系の判断をするのは政府や教師が行う紙の上での判断であるため、工夫の仕方次第では戦闘系として活躍するサポート系の能力者もいる。



「大雅くんもう少しで試合だよね?」


「ああ、Bコートの3試合目だからそろそろコートに向かわないとな」


「僕はAコートの6試合目でまだちょっと時間あるから大雅くんの応援してるね」


「ありがとな。俺も早く終わったら和久の応援するな」


開会式が終わり、大雅と和久は試合を観戦しながら自分の試合を待つ。

ちなみに圭介はAコートの2試合目で、先程アナウンスを聞いて大声で気合を入れながら向かっていった。

そろそろAコートの2試合目が始まるようで、圭介がコートの隅で準備をしている。


「結局和久は武器ナイフにしたんだな。練習の時、銃もかなりいい感じに使えてたのにな」


「うーん、なんかあの銃しっくりこなかったんだよねー。それだったらナイフの方がいいなって思って」


回収屋の仕事をする時、基本ナイフは使い捨てだったり、一度に何本もその時の用途に合わせ種類を変えて使ったりするのでほとんどのナイフを使うことは慣れている。

だが銃は愛用のを長い間使っているため、他の型の銃を使うことに慣れていないのだ。ちなみに愛用の銃は改良に改良を重ねているため、和久にしか使えない。



「そうか。それならナイフの方がいいな。……なあ、和久」


「うん?どうしたの、大雅くん」


「…なんで俺たち前後になって話してるんだっけ」


そう、和久と大雅は席に並んで座って話しているわけではない。和久は大雅の後ろの列の席に座っている。和久だってできれば大雅くんの横に座って観戦したい(大雅くんが普通の高校生能力者の戦闘を見てどう思うのか観察したい)がそうしない、いや最初はそうしていた。だがそうできなくなったため和久は大雅の後ろの席に座っているわけで、


「ちょっと、あんた大雅から離れなさいよ!」


「いや、大雅は私の。…私が、先に大雅と会った」


大雅の腕にひっつき、ギャーギャーと言い合っているのは、大雅のハーレム第1号四ノ宮鈴音と先日の大雅にぼろ負けしたツインテール少女でありハーレム第2号海堂遥である。

圭介が競技場に向かって行った後2人が大雅の取り合いをはじめため、幸い(?)圭介は騒いで和久に殴られてはいない。


「うーん、それはそこのお二人さんが大雅くんにくっついて僕が座ってた席を奪ったからだよねー」


「なに、あんた誰?影薄いから気づかなかったわ」


「………」


「うわー、ズバッと言うね。あと、四ノ宮さん睨まないでほしいなぁ」


後ろにいた和久を訝しげに見て失礼なことを言う海堂遥と無言で和久を睨む四ノ宮鈴音。四ノ宮鈴音は先日の和久の感情がなかった事件から和久を警戒しているようだ。


そんな2人に大雅は顔をしかめ、注意しようと口を開きかけたが丁度アナウンスが響いた。


「Bコート3試合目の生徒はコート付近に集まり準備をして下さい。繰り返します。Bコートーーーー……」


「あ、大雅くん。時間だね」


「…ああ。ってことだから2人とも腕から離れてくれ。あと、遥。和久は俺の友達だから。次和久のこと悪く言ったら、俺お前と関わらないから。鈴音も同じだからな」


女子2人に釘を刺して大雅はコートへ向かって行く。正直この場に2人を置いていっては欲しくないが、はっきり言ってくれたことには感謝しようと思う。


だが、大雅に言われたあと暫く呆然としていた2人は、大雅が見えなくなると2人して後ろの席に座る和久を睨んだ。


「あんたのせいで、大雅に怒られたじゃないの!この平凡!」


「……あなたほんと邪魔。…大雅の近くに、いないで」


大雅が自分たちより友人の和久を優先したのが気に食わないのだろう。まあ、四ノ宮鈴音はそれだけではないと思うが。


「えー、そんなこと言われたって、大雅くんが僕のこと友達と思ってるんだったらしょうがないんじゃない?それに、僕は僕の意思で大雅くんと一緒に行動しているんだよ。他人にどうこう言われる筋合いはないね」


和久の言葉に海堂遥は顔を真っ赤に、四ノ宮鈴音はキッと和久を睨む。

なんだか、この2人と和久は相性が合わないようだ。基本和久は誰とでも仲良くなるのだが、こう言った好きな相手1人にしか目に入っていない視界や思考の狭い相手とは相性が良くない。


「あ。だけど、もし僕の邪魔するんだったら。その時は……、叩きのめ(殺す)すから」


和久がにこりと笑って放った言葉に、2人はピシリと固まった。

和久が大雅と仲良くしているのは、面白そうだからという興味本位だが、それを他人に邪魔されるのは腹が立つ。


「なーんてね!冗談、冗談!真に受けないでって。個人戦での話だよ。だって2人ともAコートでの試合でしょ?だったら上がってけば2人とも試合するかもしれないし。だけどもし僕と当たったら、僕能力治癒だから手加減してくれると嬉しいなぁーなんて思ったり。じゃあ、僕は他のとこで試合観戦するから、お2人はここでゆっくり大雅くんの活躍でもご覧くださーい」


じゃあねーと和久はクスクスと笑いながら、その場を去った。


(あー、面白い。あんなに意気がってたのに怯えちゃって。あの2人見てるぶんにはいいけど、実際に関わるのには勘弁したいね。あ、邪魔だったら消すっていう選択肢も…いや、生徒がいなくなったらダメか。それに大雅くんにも疑われちゃうし、めんどくさい。うーん、だったら放置が1番いいかなぁ。まぁ、大雅くんがいる前ではあの2人も大人しいと思うし)


和久は暫く歩き、席を探す。アリーナだからと言っても、生徒400人にプラス保護者やその他観客など多くいるため、それなりに人が多い。

自分の試合も近いのでそれほどゆっくりとはできないが歩きながらも試合を見る。Bコートでは2試合が始まったばかりで、圭介が戦っている。様子を見ている限り、圭介が優勢でこのままなら圭介が勝つだろう。


さあ、自分はどこまで勝とうか。


本気を出してはいけない。自分の正体がバレてはいけない。疑われてもいけない。あくまで、この学校での和久は体術が上手くて少し頭の回る生徒。担任が少し和久に注意を向けているが、あんなものすぐに誤魔化せる。


だがそのスリルを楽しんでいる自分もいる。

クスっと和久は平和で安全だと思い込んでいる生徒や教師、人々を見て、静かに笑う。


(あー、嗤える)


そんなことを思いながら、和久は人ごみに紛れた。



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