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ツインテール少女

声がした方を見ると、案の定大雅がいた。

大雅の近くには、何人か生徒が倒れているところを見ると、大雅はかなり得点を稼いでいるみたいだ。

そして大雅の視線の先には、長い髪をツインテールでまとめた、見る感じ気の強そうな女子。

和久は模擬戦が終わるまで木の上で、大雅たちのことを見ることにした。



「間宮 大雅!あなたのことは知ってるわよ!身体能力測定でオール5だったらしいじゃない。あなたがどんなに身体能力が高くても、この学校でトップになるのはこの私よ!」


「別にトップになりたいわけではないんだが」


女子が威勢のいい声に対して、大雅は特に普段と変わりない声で答える。和久もいきなり始めて会った人にこんなことを言われたら、大雅のような反応をしてしまうだろう。

しかしその女子は大雅の反応が気に入らなかったのか、それとも自分の行動への羞恥心なのかはわからないが、顔を真っ赤にして自分の手を握りしめてしまった。


大雅はその様子を見て首を傾げている。これはどう見ても、俺何かした?って思ってるよね。


「と、とにかく!私がこの学校のトップになるの!だから、今ここであなたを倒すわ!」


無理矢理話をまとめた感があるが、それはスルーしてあげよう。


意気込んだツインテール少女は、地面を蹴って一瞬で大雅に近づき、その勢いを利用して大雅に上段蹴りを放った。


大雅は少し驚いた顔をしたが、それも一瞬。ツインテール少女の蹴りをいとも簡単に腕で受ける。


(あれは、風…?多分あのツインテール少女、風の能力かな。足元に風の気流を作ってその勢いを利用してるのか。この歳でこんな利用の仕方をするなんて、これはまた家が能力者関係だったりするのかなぁ)


和久はそんな風にツインテール少女の能力について考察をする。ちなみに和久がいる場所から、大雅たちのいる場所は70メートルほど離れているが、和久にはバッチリ声も聞こえるし動作も見える距離なので問題はない。


まあ、そんなことは置いといて、すんなりとツインテール少女の蹴りを受け止めた大雅に対し、ツインテール少女は驚いた顔になり素早い動きで大雅から距離を取る。

実際あのツインテール少女の蹴りを受け止められる高校一年生はあまりいないだろう。そう言えるほどツインテール少女の動きは速かったし、体術のレベルも高い。

だけど、相手はあの大雅だ。隠しているとしてもSランクである大雅にとってはお遊びぐらいの攻撃である。


「ふん!私の蹴りを止めるなんて、あなたなかなかやるわね。だったら、次の攻撃よ!」


そう言ってツインテール少女は、意気揚々と自分の両手を前に出した。するとたちまち大雅は風の渦に囲まれて見えなくなる。


「どう?竜巻の中にいる気持ちは。竜巻ほどの威力はないから死なないけど、その風に触ったら普通に怪我するわ。もうあなたはその竜巻の外に出ることはできない。出たけりゃ、傷だらけになるしかないわ。どう?降参する?」


自信満々の表情でツインテール少女は話す。確かにこれは普通だったら、降参するしかないだろう。もしこの竜巻から抜け出すことができても、どこかしら怪我をして万全で戦うことは出来ないだろう。でもそれは、普通なら。


スパッ


空気を切り裂くような音がして、竜巻が消えた。


「はっ?えっ?なんで?」


ツインテール少女から、困惑の声がする。

消えた竜巻のあった場所に立つのは、いつもと変わらない表情の大雅。その手にはキラキラと輝く刀のようなものを持っている。


(氷の刀か…)


おそらく空気中の水分で作ったのだろう。

それで竜巻を斬ったと。


(…うん、あのさ、色々と常識はずれすぎるよね。僕も人のこと言えないけどさ。というより、こんなに派手にやって大丈夫なのかな?普通に考えて一般生徒がやる技じゃないよ?)


そんな風に和久が思っている間にも、戦いは続く。すぐさま大雅は呆然としているツインテール少女の下半身を凍らせ、戦闘不能にさせた。ツインテール少女は状況が理解できず、黙ったままだ。


その瞬間、模擬戦終了を伝えるアナウンスが施設内に鳴り響いた。生徒たちは戦闘を終え、それぞれの健闘を褒めあったり、自分の点数に一喜一憂したりしている。


「えっ…、負けたの…?この私が?」


ポツリとツインテール少女が呟く。

大雅はそのツインテール少女に近づき、声をかける。


「すまん。いくら戦闘だと言っても、凍らしすぎた。すぐに炎系の能力のやつを呼んでくる」


そう言って大雅は近くにいた炎系の能力の生徒を連れてきた。その生徒に事情を話し、ツインテール少女の氷を溶かしてもらう。

終始ツインテール少女は黙って俯いていたため、大雅に連れてこられた炎系の生徒はチラチラと様子を伺っていた。


その生徒が去った後も、ツインテール少女は黙ったままだった。

流石に大雅も困ったのか、声をかけようか迷っているようだ。しかしその時各クラスごと始めの場所に戻るようアナウンスがかかり、大雅はツインテール少女を気にしながらも、歩き出そうとした。


「待ちなさいよ…」


ツインテール少女は大雅の戦闘服を掴み大雅を引き止める。大雅が振り返ったところで、顔を上げたツインテール少女は今にも泣き出しそうな顔だ。大雅もギョッとしている。


「今回は負けたけど、次は私が勝つわ!貴方を負かすのはこの私、海堂 遥よ!覚えておきなさい!」


ツインテール少女はそう言うと、走って自分のクラスのところへ帰っていった。残された大雅はぽかーんとしている。


(じゃあ、なんだかひと段落したところだし、そろそろ僕もクラスのところに行こう)


そして和久は木から降りてクラスの人たちが集まる場所へと向かう。その途中、ぽかーんとしている大雅の所へ行き話しかける。


「やあ、大雅くん。おつかれ」


「あ、ああ。和久、お疲れ」


「最後10分の戦闘見てたよ。大雅くんすごかったね」


「見てたって…、戦わなくてよかったのか?」


「いいのいいの。僕もしっかり点数稼いだからね」


相手を気絶させて戦闘不能にしたしね。(ただし、肋骨6本複雑骨折させた)


「おーい、大雅ー、和久ー」


大雅と和久が歩きながら会話をしているとこちらに近づいてくる声がした。まあ、それはお決まりの圭介だが。


「圭介くん、お疲れー」


「お疲れ」


「ああ、2人もな。そんで、どうよ。2人とも点数の方は」


圭介は近づいてきたと思ったら、すぐに点数のことを聞いてきた。


「圭介くんは?圭介くんが言ったら僕も言うよ」


「えー、まあいいけど。俺の点数はな、聞いて驚くなよ。なんと1900点だ!五分五分の相手が多かったから、点数取ったり取られたりの繰り返しだったけど、それでこの点数はいい方だろ!」


とびっきりの笑顔で言う圭介。


「僕、2000点」


「俺、7000点」


和久、大雅の順番で自分の点数を言う。それを聞いた瞬間、圭介は固まった。だが和久と大雅は気にせずに歩き続け、集合場所へ向かう。


「大雅くん、7000点なんて流石だね。僕なんてたったの2000点だよ」


「いや、2000点ってかなりいい点だろ。どんな相手だったんだ?」


「なんか、西園寺って言うお坊ちゃんでさぁーーー「っておい!俺を置いてくなよ!!!」


和久の話を遮ってきたのは、先ほど固まってた圭介。昨日と合わせて話を遮られたのは2回目だ。


「何、圭介くん。いきなり大きな声で五月蝿いんだけど。昨日もやめてって僕言ったよね」


「あ、ああ。ごめんなさい…。ってそうじゃなくて、なんで2人ともそんなに点数高いんだよ!大雅は強そうだから納得できるけど、なんで和久は俺より点数高いんだ!」


悲痛そうな声で叫ぶ圭介。大雅は呆れた顔で圭介を見ている。


「なんか、心外なんですけど。普通に相手を倒したのに、そんなこと言われるなんて」


「そうだぞ、圭介。和久に失礼だぞ」


「いや、でもさ。どうやったら和久が勝てるんだよ。だって和久の能力治癒だろ。どうやって戦うーーー」


圭介が知りたそうなので、和久は期待に応えて拳を振りかぶり圭介の鼻スレスレで止める。


「っ!」


「体術でだよ?」


そのまま和久がニコっと笑う。


***


そのあとは、クラスで集まり点数の集計をして順位発表があった。和久たちの組は惜しくも2位だった。


圭介から「和久、お前こえーよ」と言われたが特に気にしていない。


明日から2日間振替休日で水曜日からまた今まで通りに学校がある。

なんか色々あったが、無事に終わってよかったなと思った。

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