14話 色々なやり取り ~家族の会話~
王城の一室にて、身だしなみを整えたマリナとレイは、アルフレッドとアリサとともにテーブルを囲んでいた。
「昨晩は、何も言わずいなくなってしまって、申し訳なかったですね。」
突如、応接部屋より姿を消して心配をかけてしまったことに対するレイからの謝罪を受けたアルフレッドとアリサであったが
「とんでもございません。
神狼様は、城内にて自由に過ごしていただいて何も問題ございません。
・・・と思ってはいたのですが・・・。
マリナと共に一晩を過ごしていたのですな・・・。
これは・・・どうなんだろうな、アリサ?」
「さぁ~、どうなのでしょうね~。あなたっ。」
神狼の前で平静を装いながら応えるアルフレッドと、彼の問いかけに対してなんともにこやかな笑顔でアリサ。
未婚の姫であり、ましてや自分の大切な娘と他人が一晩をともにするなど、いくら穏やかな性格のアルフレッドであったとしても、通常であれば相手に然るべき措置をとっていただろう。
しかし、相手は神狼様である。
そもそも、マリナの異性となるのか?そもそも、性別という概念のある存在なのか?
どこにぶつける事もできず、悶々とした気持ちでいるアルフレッドの横では、娘の恥ずかしくもどこか嬉しそうな表情を見て、アリサは様々な妄想を膨らませていた。
「お父様っ!
レイ様とは、ただご一緒のベッドで寝ただけですっ!
べっ、別に変なことなど誓って一切ありませんでしたっ!」
どんどん顔を赤くする娘を見て、後で二人きりで詳細を聞かせてもらおうと決意するアリサであった。
この後の朝食の世話をするため、部屋の壁越しに待機している執事やメイドたちも一連のやり取りを見て、一様に顔をニヤニヤと綻ばせていた。
「???ただ一緒に寝ただけですよ?」
心の底からなぜマリナと一緒に寝たことをアルフレッドが心配しているのかわからない様子で、レイが首をこてんと横に傾げていた。
その様子にマリナやアリサ、周りのメイドたちも胸がキュンとなるのを感じながらアルフレッドの言葉を待った。
レイの言葉と様子、そして神狼様という存在を自分の常識で考えること自体がそもそもの間違いであると心で納得したアルフレッドは
「いや、失礼をいたしました。何かを疑って訳ではないのです。
それよりも、大変お待たせして申し訳ございません。
早速ですが、朝食を食べながらにはなりますが、あらためて今後の神狼様や我々のことなど、お話など聞かせてていただければと考えておりますが、よろしいでしょうか?」
「もちろんです。人族のため、何でもお話させてもらいますね。」
アルフレッドとレイの言葉に、表情を引き締めた周囲の人々。
そして、4人で食事を取りつつ、概ねアルフレッドとレイで会話を行い、時折アリサやマリナも質問を挟む形の会話が行われた。
その場では大まかに3つのことについて、レイから明らかにされた。
まず1つ目は、神狼について。
昨日の一連の騒動の中で、大まかな説明は受けていたものの、あらためて各自が疑問に思っていることに対して質問がなされ、答えられる範囲でレイが丁寧に答えていった。
そして2つ目は、精霊について。
これまでに考えられていた、帝級精霊から下級精霊のランクや、光属性など属性についてレイにあらためて確認が行われた。
マリナが契約することのできた神級精霊の存在を含め、存在が知られていないこと、存在が忘れられてしまったことなど、未知の内容に驚愕の表情を見せるアルフレッドたちであった。
最後に3つ目は、今後のレイの行動や計画について。
「他の6つの神霊樹もそうだけど、人族の神霊樹の力を復活させることはすぐには不可能なんだ。
詳しくは今は話せないのだけど、ある場所であることをする必要があって・・・。みんなの不安をすぐに取り除いてあげることができなくてごめんね・・・。」
神霊樹の加護が戻りさえすれば、アルカディア王国、つまり人族を魔物の脅威から守り、安心して人々が生活を送ることができるため、アルフレッドたちにとってもレイの言葉は決して望ましい答えではなかったが
「とんでもございません、神狼様。
元はと言えば、人族の責任であり、人族が解決に当たらなければならない問題。」
「そのとおりですわ。
神狼様が謝りになられることではありませんもの・・・。」
レイの言葉を受け、王と王妃としての責任を感じ、答えるアルフレッドとアリサと同じく心苦しい顔をしているマリナ。
そんな彼らの表情を見て、場を和ませるために明るい表情をつくったレイは
「世界を守護する神狼として、まずは人族を魔物の脅威から守るため、僅かですが協力をしていきたいと思っています。
そのため今日から、城内の精霊使いや騎士との訓練。終わったら城下町の冒険者ギルドなどにも行くつもりです。」
「それは!誠に、大変ありがたく存じます!」
レイに感謝を述べるアルフレッドとともに、アリサとマリナもレイへとお辞儀をする。
そんな彼らに、笑顔で応えるレイ。
「それでは、レイ様のご案内は私にお任せくださいっ!」
力強く提案をするマリナに対し、当のレイも
「僕からもマリナにお願いしようと思っていたよ。」
とても良い笑顔で向かい合う二人。
そんな二人を見ながら、『これは・・・どうなんだろうな、アリサ?』『さぁ~、どうなのでしょうね~。あなたっ。』と目で会話をするアルフレッドとアリサであった。
いかがでしょうか。
次回は、これまであまり詳しく説明をしてこなかった精霊や精霊術の説明を入れます。
また1章が終わりあたりで、設定の回も作成する予定です。
この作品を気に入っていただけましたら、今後の活動のやる気にも繋がりますので、「感想」「評価」などいただけましたら幸いです。
次回は、1月13日配信予定です。
どうぞお楽しみにしてもらえたら嬉しいです!