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神狼と精霊姫による聖なる世界への~  作者: ヤマト撫子
第1章 光霊姫の章
15/18

13話 素敵な夢 ~神狼と光霊姫の朝~

 レイとマリナが出会った日の翌朝。

 

 マリナは窓から差し込む朝日に、薄っすらと目を開けた。

 マリナがメイドとして働いていた毎日。朝から晩まで様々な仕事をこなして疲労しようとも、必ず夜明けとともに起きていた。

 もはや習慣となっている目覚めであったが、いつも倦怠感や疲労感を感じながら、毎日の勤めをこなしていたのである。



 (いつもの天井よね・・・。)



 まだ意識が覚醒していないマリナは、寝ぼけ眼で自室の天井を眺めていた。

 そして、ゆっくりと身体を起こし、何気なく朝日の差し込む窓の方を眺めた。



 (何だかとても素敵な夢を見ていたような気がするわ。)



 とても信じられない出来事の数々を思い浮かべるが、どれも実感が湧かない。

 まだ夢だと思い込んでいるマリナであったが、ふと自分の姿を見て、疑問を抱いた。



 (わたし、メイド服のまま寝るなんて・・・。)



 マリナは姫という立場でありながら、身の回りの事も自分一人でこなし、様々なことに几帳面な性格であったため、初めてメイド服のまま寝てしまっていたことに妙な違和感を感じた。

 そして、目線をベッドの上にずらすと、もう()()違和感を抱いたのである。



 まず、自分の足元に白く美しい毛並みをした、なんとも可愛らしい子狐が体を丸めて眠っていたのである。

 もう一つは、自分の横の毛布が不可思議に小さく膨らんでいることに気が付いたマリナ。

 その二つを見比べるいると、次第にマリナの頭が覚醒しはじめた。

 そして、徐々に彼女の眼が大きく見開かれていった。



 (っ!!うそっ!!!あれは夢ではなくてっ!!!!)



 自身の理解を確かめるため、マリナは毛布をゆっくりと開けてみると



 「れっ、レイ様・・・。」



 マリナの目の前には、朝日に照らされ美しくも銀色の輝きを放つ長髪をベッドになびかせ、身体をくの字に折り曲げながら健やかな顔のレイが眠っていた。

 毛布に丸々くるまっていたのだが、その衣服には、目立った皺などは見られず、美しい姿のままでマリナの視線を釘付けにしてしまっていた。

 驚きのあまり、意識せずに出してしまったマリナの声に、レイの頭にある銀色の毛並みで覆われた2本の獣耳がピクピクと反応を示した。

 そして、ゆっくりと瞼を開け、目覚めたレイはマリナの方を見たのである。



 「おはよう、マリナ。よく眠れたかな?」



 「はっ、はい!とてもよく眠れていま()た!」


 レイの言葉にあわてて答えたため、少し噛んでしまったマリナ。

 そんなマリナに、上体を起こしたレイは彼女の正面から少し彼女を見上げるように問いを投げかけた。



 「なにかあったの?本当に大丈夫?」



 レイの意図しない上目遣いの問いに、さらに慌てるマリナであったが、何も考えることができず、正直に答えることしかできなかった。



 「じっ、実は・・・。

  レイ様にお会いしたこと。お父様やお母様が助かったことをつい先ほどまで、すべて夢であったと思っていたのですが・・・。

  お隣にレイ様が寝ていらっしゃる姿を見ましたら、頭の中がパニックになってしまいまして・・・。」



 マリナは答えているうちに、少し顔が赤くなってしまっていた。

 そんなマリナの言葉を聞いたレイは、彼女に優し気な笑顔を向け、さらに彼女の気持ちを落ち着かせるように言葉を投げかけた。



 「そうだよね。

  マリナにとって信じられないことがたくさん起きて、まだ整理が付かないよね。

  でも、僕がゆっくりとマリナに()()()()()()()()()から安心して。

  だからマリナも、君の好きな国や人々のことを僕にたくさん教えて欲しいんだ。」



 レイの言葉を聞くと、さらに顔を赤くするマリナであったが



 「はっ、はい!

  よろしくお願いいたします、レイ様!」



 ようやく落ち着きを取り戻しつつ、笑顔を見せてくれたマリナに、レイも自然と笑みを返した。

 そんな中、自分の太ももをぽふぽふと撫でる感触に視線を下したマリナ。

 そこには、『自分も忘れないで!』と言いたげに尻尾を激しく振るわせている、彼女の契約精霊(ヒカリ)がいたのである。



 「ごめんなさいね、ヒカリ!

  あらためて、これからもよろしくお願いしますね!」



 そう言ってマリナは、ヒカリの顔の横を優しく撫でてあげた。

 それに応えるようにヒカリも、嬉しそうに彼女の手に顔を擦りつけるのであった。

 そんな二人の様子を見ながら、穏やかな笑顔を向けていたレイであったが、ベッドから起き上がると小さく背筋を伸ばした。



 「さぁ。そろそろ行こうか。」



 「はっ、はい。レイ様。」



 ごく自然に差し出されたレイの手を、少し躊躇いながらも嬉しそうに取るマリナ。


 その動きには、いつもの倦怠感や疲労感は一切感じられない。


 こんな幸せな朝が来る日がやってくることを、マリナは()()()()()()()()()()()のであろう。

お正月に時間があったので、「神狼と精霊姫による聖なる世界への~」の過去の設定や今後のストーリーを練り直してみました。(※12話までのストーリーも多少改稿しております)


過去にこの作品を読んでくれた方、これからこの作品を読む方

是非、今後の展開を楽しみにしていただければと思います!


次回は、1月10日(月)14時 投稿予定です。

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