告白できない
《村木くんへ
好きです。付き合って下さい。》
小学5年生の林間学校で私は人生2度目の告白をした。
林間学校の夜といえば恋バナ‼︎友達が次々と好きな人を言いあってノリで告白をしていた。友達の佑衣がまさかの三角関係になって負けて、私は慰め役…。慰めにならない慰めをしていると、佑衣がヤケクソで
「咲蘭の好きな人誰なん?」
と聞いてきた。周りの友達は一斉に私の方を向き、目を輝かせた。私に好きな人なんていなかったけど、言わなくちゃいけない雰囲気になってしまった。そんなにめちゃくちゃ好きじゃなかったけど、
「村木くんかな…?」と答えた。
周りの友達はえ?という顔をしている。なぜならそいつは猿顔だし、そんなにルックスがかっこいいわけでもない。
「咲蘭は村木のどこが好きなん?」
佑衣はニヤニヤしながら私に尋ねた。数秒考えると、私は
「やっぱあのノリ?別にそんなにかっこよくないけど、ノリの良さと面白さがいい感じやわ」
自分で言ったことに恥ずかしくなったけど、だんだん恥ずかしさなんてどうでもよくなって村木くんについてつい語ってしまった。佑衣がボソッと
「告白しちゃいなよ。」と呟いた。それを聞き取った友達は私に告白を勧めてきた。調子に乗っていた私はノリに乗って思い切って手紙で告白をした。
《村木くんへ
好きです。付き合って下さい。》
本気で恋はしていなかったけれど、一応気持ちのこもった短い文章にまとめ、持っていた可愛めのメモに書いて佑衣に渡してもらった。ドキドキと共に返事1日待ったけれど、返事は来なかった。佑衣に手紙の返事を聞いてもらった。
「咲蘭の手紙のやつ、どーすんの?」
佑衣の背後には私。目の前には村木くん。私の心臓は村木くんに聞こえそうなくらいバクバク音を立て、顔は真っ赤になっていた。すると、村木くんはパジャマであるジャージのポケットから私の手紙を出し、これのこと?と尋ねこう言った。
「こーいうのさ、俺興味ないし。興味あっても他の人と付き合うし。」
村木くんはそういうと私の書いた手紙を目の前で両手でぐしゃっと潰した。そして、近くにあったゴミ箱へと投げ入れた。心が抉られそうな胸が痛みが私に襲いかかった。佑衣も驚きのあまり声が出ていなかった。私は声を振り絞り、
「やっぱそーやんな‼︎ノリでやったし無理に決まってたし‼︎」
そう言って笑った。その日の夜、佑衣は私に土下座の勢いで謝った。私は
「大丈夫大丈夫‼︎そんな本気じゃなかったし‼︎」
そう言ったものの心の傷は深かった。もう告白どころか恋ができなくなってしまった。