episode7『Invasion of the despair』
学校長に勇者とは思えない得意魔法を宣言された後、ユースはトボトボ教室に戻った。
扉をあけ、周りからの視線に怯えながら席に戻ろうとすると…
『おい!魔力貯蔵量魔王レベルってほんとか!?』
『勇者の血筋なのに破壊www』
『亀甲縛りで校長室連れてかれたってほんと!?』
「え、えぇぇ……」
さっきとの態度の違いにビビるユース。そもそも、
「俺誰にもその話してないんだけど……」
「俺だ。落ちこぼれ。」
「あ、あんた…ゴリ……ブラウ先生…」
「俺の使い魔をお前のそばに置いていた。気がつかなかっただろうけどな。」
気がつかなかったどころか使い魔という概念すら忘れていたユースだった。
「ま、まあいいや。俺別に困ることしてないし…」
「ほう………レイ=カスタニエとの同棲についてもか?」
瞬間、空気が凍った。
『どういうことだユース!!説明しやがれ!』
クラスの男子勢からすごい勢いで詰められる。
「ちょ…ブラウ先生!?」
「ああしまった。つい口が軽くてな。許せ。」
「そんなの許せるわけ……レイからもなにか………レイ?」
「………」
レイはこの騒ぎの中、一人難しい顔をして何かを考えていた。
「おーい?レイ?どうした?」
「あ、いや、なんでもないの!」
「そ、そうか…?」
「うん……なんでも……」
結局家に帰るまでレイの難しい顔は収まらなかった。
☆☆☆
家に帰った後、ユースは一人部屋の中で考え事をしていた。
「……レイは何を考えてたんだろう……」
いつも笑顔のレイがあんな顔をしているのを見るとこっちまで嫌な気分になっている。
なんで相談してくれないんだろう。
そんなことをずっと考えていた。
「……ん?」
ふと、部屋の端に目がいった。何かが光ったような気がしたのだ。
「あれは……」
あれは昨日アークとあった時にもらった剣……それとペンダント。
「そういえばこのペンダント……なんなんだ?」
よくみるとそのペンダントには大きな宝石のようなものがはめてあった。
「何も言わずにもらっちゃったけど……このペンダント、すごい高そうだな……」
剣にしろペンダントにしろ、値段で言うなら家ひとつくらいなら買えそうな代物だ。
…………。
「…………ハッ!?べ、別に売ろうかな…とか考えてないし!?」
なにかに言い訳をはじめるユース。
その時、
バァン!!
すごい勢いで部屋のドアを開けられた。
レイだ。
「ユース!逃げて!!」
「ど、どうし………!?」
急に空気が重くなった気がした。
例えるなら…絶望。
「なにが……起きる……?」
再び視界の端で何かが光った。
ペンダントだ。
「なんだあれ……」
ペンダントからはどこかへ向けて光を発し続けている。
「あの方向……まさか……ユース!それをどこで!?」
「え…人からもらったんだけど……」
「そ、そんな…それは……」
「そんなことより、一体何が起こってる?」
重い空気、光るペンダント。どう考えてもただことではない。
「落ち着いて聞いて……ユース。」
一拍おいてレイが告げる。
「魔王軍がこの街に攻め行ってきた。明日にはここら辺は焼け野原よ。」