episode4『End of the happiness』
「っくぁぁぁ!助かったぁぁぁ!」
結局ベンチで寝てた男に飯をおごることになったユース。
「………食い過ぎだろ…」
男の食べたメニューはこちら。
ハンバーグカレー
ラーメン
サラダ
ラーメン
ビール
ビール
ラーメン
焼き鳥
ラーメン
……以上だ。
財布の中は見ない方がいいかもしれない。
「いやぁ少年!ほんとに助かった。ありがとう。人にここまで感謝したのはいつぶりだろうな!」
「俺に聞くな。」
おごりでここまで食べる人はこの人以外にいるのだろうか。
「少年!なにかお礼がしたい。名前は?」
「……ユースティース=ラインシュヴェルト。ユースでいい。」
「……ラインシュヴェルト、だと?」
「あぁ、うちは勇者の末裔だ。」
「………」
顎に手を当て何かを考える男。やがて…
「……よし、俺の名前は『アーク=ベルクムント』アークでいいよ。よろしく。」
「あ、あぁ…」
「さあ、お礼をしよう。ついてきてくれ。」
「……はぁ?どこに?」
「いいからいいから。」
ユースは言われるがまま、とりあえずアークについていくことにした。
☆☆☆
ユースが連れてこられた場所は小さな小屋だった。
「…ここは?」
「俺の暇潰し用の隠れ家。うちの家の奴らがうるさくってさ。時々ここに隠れてダラダラしてんの。」
「へぇ…奥さんとか?」
瞬間、アークの顔が暗くなった。
「…いや、妻はいないよ。元から。」
「……なんか、ごめん」
「ああいや!違う!こんな話をするためにここに連れてきたんじゃないよ!ちょっと待ってて!」
そういって小屋に入っていくアーク。何かを探しているのだろうか。
10分後、アークは何かを持って戻ってきた。
「これ、やるよ」
渡されたのはペンダントと…
「……剣?」
立派な装飾のされた剣だった。
「あぁ。それ、俺もう抜くことができなくてさ。」
「…?簡単に抜けるけど…」
鞘から抜いた剣は白銀の光をまとっていた。
「はは、違うよ。抜くことを許されていないのさ。」
「……?」
「わからなくていいよ。ここまで連れてきちゃってごめんね。」
「いや、いいけど……」
こんな豪勢なものをもらってしまって良いのだろうか?そう考えるも、言葉にできなかったユースであった。
「じゃあ、俺は帰るよ。あいつらも必死こいて探してるだろうし。」
「それならとっとと帰れよ…」
「そうだな。あいつらなら俺を探すために街を焼きかねないからな…」
「は?」
「いや、こっちの話。」
今コイツはとてつもないことを口走ったのではないだろうか。
「じゃあユース。また近いうち会えることを祈って。」
「あぁ。じゃあな。」
森の奥に消えていくアーク。その姿をぼーっと見送るユース。
いろいろあったが、まあ、気分転換にはなったかもしれない。
☆☆☆
「ユース!?」
「あ、あぁ、ただいィィィィィ!?」
家に帰るなりレイに抱きつかれた。
「ちょ、ちょっとレイ!な、なしたのさ!?」
「ユースが…えぐっ…ユースが死んじゃったかと思った…っく…」
どうやら帰ってくるのが遅くてかなり心配させていたらしい。無理もない。家を出る前のユースは生ける屍同然だったのだから。
ユースは抱きついたまま涙で服をビシャビシャにしてるレイの頭をなでながら、
「大丈夫。俺はもうどこにも行かないよ。」
と言った。
「……ほんと…?」
「あぁほんと。絶対に。」
「……なら許す…」
これで養成学校主席なのだから、世界は不思議である。
「…ご飯、冷めちゃった…」
ユースを待っていたら飯が冷めてしまったらしい。
「いいよ。一緒に食べよう」
「…うん!」
そして二人で席につく。父親が死んでから初めてまともに食べる食事。
「……レイ」
「…ん?」
「……ありがと」
「…どういたしまして」
こんな幸せな時間がずっと続けばいいのに。そう思うユースティースだったが、
この時はまだ、
後一年で世界が魔王軍によって滅ぼされることに『誰も』気が付いていなかった。




