episode2 『Reason of the weakness』
ユースは父親、『スリート=ラインシュヴェルト』と二人暮らしだった。
勇者の血筋は母方だったが、それでも十分強いオトコだと聞いた。
母親だった人間はユースを産んだ時に死んだ。スリートは魔導警備隊隊長であり、そんな中男で一つでユースティースを育てていた。
そんなスリートがーーー
☆☆☆
そんな父親が左半身が吹き飛んだまま壁に寄りかかっている。
「お、オヤジ……なんで……」
魔導警備隊隊長の父親がここまで怪我をしたのは始めてだ。
「き、気にすんな……これくらい…魔法でなんとか……」
「ユース!?」
なかなか戻ってこないユースを心配したのか、ためらいもなく人の家に上がり込むレイ。そして、
「な……ユースのお父さん!?な、なんで!?どういうこと!?」
「そんなことより魔法!レイ!頼む!」
「う、うん…!」
回復魔法をかけるレイ。塞がり始める傷。しかし……
「既に出血量が危ない…どうすれば…」
「…………いい、俺の事は置いていけ。そんなことより……また奴が来るかもしれない……」
「奴……そいつにやられたのか!?」
「…………」
「だ、ダメ!ユース!血が足りない!このままじゃ……」
「待ってろ!今医者を……」
「……糞ガキ……」
弱々しく開かれる唇。か細く響く声。
「しゃ、喋るな!オヤジ!!」
「……ユースティース……背中貸せ……」
父親に名前で呼ばれ、それだけで父親がいまどういう状況で、自分がどんな状態なのかを思い知らされた。そして、
「せ、背中…こ、こうか…?」
「ちょっとユース!」
レイの声にも耳を傾けず、ただ父親の言葉を一言一句聞き漏らさないように集中するユース。
「…あぁ…こんなに大きくなりやがって……」
「……」
「今から…お前の封印を解く……さらに俺の魔力も全てお前につぎ込む……」
「封印…?」
「魔力を…持たない人間が…いるはず無いだろ……むしろその逆……お前は魔力が桁違いに多過ぎた……」
「……」
「すこし……いてぇかもな……っ…」
ドクン…
今までなかったものが内側から溢れ出る感覚。そして、
「……その力…正しく使えよ……」
スリートの目から光が消えた。
「……………オヤジ………」
ユースの頬を伝う一筋の雫。
その雫が表す意味を考える余裕は今のユースティースにはもう、
どこにもなかった。