episode8『Battle start』
「焼け野原!?」
レイの言葉に驚きを隠せないユース。
「うん。だから早く逃げよ……」
「………」
この場合逃げるのが得策だろう。少なくとも一般人ならそうする。
しかし。
「俺は一般人じゃない。ファルゼバルト魔法軍養成学校の一生徒、ましてや勇者の末裔なんだ。魔王軍に真っ向から立ち向かうとするよ。」
「………もう、落ちこぼれが何言ってるの!」
「えっ」
レイはすこし下を向きながらこう言った。
「私も手伝うよ。成績トップが落ちこぼれの近くにいてあげないとユースなんてすぐ死んじゃうんだから」
「はいはい。そいつぁありがてぇこって。」
「ちゃんと感謝しなさいよね!」
「………わかってるよ。いつもありがとう。」
「っ………」
『イチャイチャしてるとこ悪いんだが、いいか?』
「っ!?」
二人して飛び跳ねた。
『俺だ。ブラウだ。話は聞かせてもらった。俺たち教師陣も手伝おう。生徒だけに任せるわけにはいくまい』
「先生…あんたいい奴…」
『うるさい。お前には言ってない。』
「やっぱり嫌いだ!ジャングルに帰れ!」
『こらこら。ユース君。あまり先生をバカにしない』
どうやら校長もこの会話を聞いていたようだ。
こんだけ人がいればもしかしたら勝てるかもしれない。食い止められるかもしれない。
そう心のどこかで思っていたのだろう。
そしてその油断が、
すべてを壊すとはつゆ知らず。
☆☆☆
「ここからなら街のすべてが見渡せる。いいかい?戦いはもう始まっているんだ。油断は禁物だぞ。」
丘の上の灯台。そこに集まった人間はたった四人。校長、ブラウ、ユース、レイだけだった。
「しかし、これだけの人数で大丈夫ですかね…校長。」
ブラウが心配そうに呟く。
「大丈夫ですよ。三年前にも似たようなことがありましたが、その時は私含めて3人でした。」
「同じようなことがあったんですか!?」
「えっ、私何も知らないんですけど。」
どうやらレイも初耳のようだ。
「ええ。大規模催眠魔法で眠らせましたから。街の人間全員を。」
やはりこの先生はどこか桁が違う。そう思ったユースだった。
「む?あれじゃないか?」
ブラウが何かに気づいた。どうやら南西の方角から攻めてきたらしい。
そこでユースは違和感を感じた。
ユースたちは魔王軍が攻めてきたと聞いて集まった。
しかし魔王軍が攻めてきたのは今。
おかしい。何かがおかしい。
そういえばーーー
「ユース!!くるよ!!」
レイの声で我に返るユース。
「(そうだ…そんなこと考えてる場合じゃない……今はこの街を守ることに集中しなきゃ……)」
ふと校長が一歩前に出た。
「では、私から行かせてもらいましょう。」
「し、しかし校長、敵の位置までまだ10キロ以上……」
そう、ここは敵が見える位置から10キロ以上ある。普通なら攻撃なんて届くはずないが……
「魔力充填、魔力充填、魔力充填、魔力充填…………限界突破!!」
何もないはずの空間に魔力を集め始めた校長。すると…
「あれは……砲台?」
そこに見え始めたものは半透明な巨大な砲台だった。
「じゃあみんな。私が敵陣に穴を開ける。そこから切り崩していってくれ。」
『はい!』
「じゃあいくぞ……〝神に代わって我が汝らに制裁を下す〟……魔力開放!」
一閃。
超圧縮された魔力は光となり、10キロ先の敵に直撃した。
そしてその光が地面に触れた瞬間…
敵の居た土地は大きなクレーターと化していた。
「さて、私以来初の魔力貯蔵量魔王レベルだ。お手並み拝見と行くよ。『ユースティース=ラインシュヴェルト』君?」