ロンドン帰り
今日はサムが帰ってくる。意外と早いお帰りだからため息をついた。どうせなら、もう少し遊びたかったから。
ガチャ・・・
私『おかえりー。葉、パパからお土産貰っておいで。』
葉は玄関に駆けていった。
1週間越えのつもりで身構えていたから、急いで部屋の掃除をして機嫌が悪いのだ。
葉がお土産を持ってきたけど・・・なんだこれ・・・。
私『あ、ありがとう・・・はは・・・ははは・・・。』
佐村『パンクの聖地だから、こんな置物があったんだよ。ロンドン土産って感じがするだろ(笑)』
私『葉が寝たら、ちょっと来て。』
バンッ!!
私『これ幾らしたの!!』
佐村『小遣いから出したんだから、値段なんて、どうでもいいだろ(笑)それよりもさ・・・。』
私『どうでも良くない!!正気なの!?こんなガラクタどこに飾ればいいのよ!!』
佐村『まあ・・・スタジオにでも・・・。』
私『結局、自分へのご褒美じゃない!!』
佐村『葉が面白がってくれるかと思って・・・。』
私『ちょっと、怖がってたじゃない!!黙ってたけど、今までも酷かったよ!!』
佐村『今度から相談するから・・・そんなことより・・・。』
私『もう夜遅いから、明日話そう。さっさとお風呂に入ってきて。』
佐村『じゃあ、風呂の中で話そう。』
私『私は朝にシャワー浴びるから。』
佐村『もう一人欲しいって言ってただろ?そのことについて話があるんだ。』
はあ、別にサムも明日は暇だから明日、話せばいいのに・・・面倒くさいなあ・・・眠たいなあ・・・。
ガチャ・・・
湯船に浸かると、まず私は縁に顎をついた。
私『疲れてる。』
佐村『ああ、お前が疲れているのは承知だ。ただ、一つ勘違いがある・・・俺も疲れてる。』
私『嘘ばっかり。』
佐村『嘘じゃない。男は弱音を吐かないのが美徳だと思ってるから・・・。』
私『それって、私が弱音を吐いてばかりって意味?』
佐村『お互いさまっていう意味だよ。』
私『あっそ。で、子供の話は?』
佐村『ああ、それなんだけど、二人きりで休暇なんてどうかと思って・・・。』
私『・・・葉がいるじゃない。』
佐村『色々、思うことはあるだろうけど、旅行中は実家に預かって貰おうと思ってるんだ。』
私『お義母さんは嫌いじゃないよ。お義父さんも優しい。でも、『私たちは旅行に行くので、預かってください。』なんて、言える?私は言えないよ。』
佐村『俺が誤解がないようにお袋に伝えるよ。子供の話は旅行先で話し合おう。』
私『問題は先延ばしってこと?』
佐村『お前が心配なんだよ・・・出産も子育ても負担が大きいだろ?ならば、俺が手伝えばいいって、思うだろうけれど、実際は難しいんだ。俺が手伝ったことでお前にストレスが溜まって、昔に逆戻りなんて、それこそ、お互い耐えきれないし・・・。』
私『・・・。』
佐村『悲しいことに子供は母親と父親が分かれ道に立っていたとしたら、殆どの子供は母親を選ぶ。決して、子供は父親を嫌ってるワケじゃないと頭では分かっていても、心が傷ついたりしてる・・・って、こんなことは話さなくてもいいか(笑)』
私『男の人も心は傷つき易いんだ・・・見せてくれないとわかんないよ・・・そういえば、ロンドンに出発する前、ちょっと変だったのは、なんで?』
サムは夢の話を始めた。私は可笑しくて笑い転げそうだった。
私『離婚なんて考えてるワケないじゃん(笑)私は女優やタレントじゃないから、簡単に決断出来ないもん。』
佐村『決断まで、まだ日はあるのか・・・?』
・・・・・・はい?
私『離婚なんて、全く考えてないよ。サムが遠出のときは、友達呼んだりして息抜き出来てるから。』
佐村『友達って男・・・?』
私『基本は公子だよ(笑)葉に聞いてごらん。』
佐村『話せて良かった・・・。』
私『きっと幸せが当たり前になると態度に出ちゃうんだろうね。ごめん。でも、幸せが当たり前なんて素晴らしいじゃない。』
何故、私がサムに謝らなければならないのだろう。何故、私がサムを励まさなければならないのだろう。眠たいのに・・・ん・・・?夢の内容に本気になるって・・・どこまで純粋なんだ・・・今さらだけど、この人で大丈夫なのか・・・離婚なんてワードが出てきたから不安になってきた・・・。
昔の過ちの後遺症みたいなもので、体調が優れているときでも、スイッチオンで情緒不安定になることがある。そうなると、二人に迷惑をかけないように、静かに眠りに着くのが最善なんだと本に書いていた。
私は傷んだ髪を乾かしながら、もう、高校生のときのような綺麗な髪には戻れないんだななんて、無駄な後悔のあと、寝室で眠りについた。
夢なんて最近は見ない。朝はすぐにやってくる。目覚まし時計が呼んでる。これが鳴る前に起きられるのが理想なんだけど。
私『パパ、葉、起きて。朝だよ。』
一応、声を掛けるけれど、もちろん二人は起きない。お弁当が完成する頃にもう一度、アラームが鳴り響くから。
ガチャ・・・
私『この置物どうしよう。公子が詳しそうだから譲ろうかな。』
でも、酔ったついでに買ってきたワケでも、騙されて買ってきたワケでもないみたいだから、許してあげようかな。
お弁当を詰め終わると目覚まし時計の音が聞こえる・・・今日は金曜日だから、二人も疲れてるのか、誰も止めない日みたい。
ガチャ・・・
ゆっさ、ゆっさ
私『葉、起きて。』
葉『うーん・・・眠たい・・・。』
私の方が眠たい。
私『じゃあ、眠気覚ましにパパにダイブ!!』
葉がサムにダイブした。私もついでにダイブした。ロンドン帰りでゆっくりしたいというような顔をしているサムに、お願い事。
私『今日も葉を集合場所まで送ってくれない?』
佐村『まあ、いいけど。』
私『ありがとう。ゴミ出しもお願い。』
佐村『まあ、いいけど・・・えっ?』




