鬼骨丸(五)
「いやはや驚いた。いよいよもって鬼骨丸殿も人の親……わからないものですな」
「今どき魔狩り師だといって一人身を貫くこともありません。いやいやいいことです……どうぞ一献」
「好き勝手言いやがる。第一俺の子かどうかもわからん」
鬼骨丸を含む三人が焚き火を囲んでいる。
一人はでかい……鬼骨丸よりも頭ひとつ高い。
一人は細身である……なんとも言えぬ色気がある。
この二人は鬼骨丸と同じ『魔狩り師』の仲間(?)であった。
名は……『泉谷総人』と『足立剛志』……
「鬼骨丸殿には大恩があります。困ったことがあればすぐに俺に相談を」
「抜け駆けをするなよ泉谷。鬼骨丸殿是非私に……」
「わかったわかった」
魔狩り師として未熟な二人は鬼骨丸に幾度となく危機を救われている。
彼らは鬼骨丸を崇拝していた。
「俺のとこは五つに。これは可愛いもんです」
「私のところは三つ……私から離れず困っております……」
「そのわりに嬉しそうだ」
鬼骨丸は『あぁそうなのか』と思いながら酒を呑む。
この二人は魔狩り師でありながら既に夫であり、父親であった。
(こいつらに色々と訊くのは屈辱だが……仕方がない)
出産と育児についてできるだけ知っておきたかった。
『福は三人も産んでる。俺なんかになにができる?』と思いながらもどんどん大きくなる福の腹を見るとジッとはしていられなかった。
「鬼骨丸殿」
泉谷が表情を固くし鬼骨丸を見つめ足立もそれに続いた。
「なんだ?」
「我々二人はこの命尽きようと鬼骨丸殿の子孫までお仕えしますよ」
「その通り」
「『命尽きようと』?……どうやって?」
「子孫が」
「子孫?」
「えぇ。鬼骨丸殿の子や孫に我々の子孫が仕えます」
「無理だろう」
「いいえ。何百年も先までも。我々は魂で繋がっておるのです。いつの時代も我々の子孫は鬼骨丸殿の子孫を見つけ必ずやお仕えします。それが『泉谷』と『足立』の使命……」
「かはっ……」
(ここまで来ると狂信だ)
しかし悪い気はしなかった。
確かに生まれてくる子……『海』にとって泉谷や足立の子は頼もしい存在になるだろう。
何百年も先の協力など期待はしていなかったがそれは間違いないと思えた。
「それでは頼む」
「はい」
二人は鬼骨丸に頼られた喜びからか頬を緩ませ頷いた。
……泉谷と足立……宣言通り彼らの子孫は数百年後、海を支えることとなった。
もちろん二人の子孫はそのような約束事があったとは知らずに。
『魂で繋がっている』……それは案外に戯れ言ではなかったのかもしれない。
『一』より




