表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カンノコ篭目村綺譚。  作者: ヒロモト
皆福神社ご参拝日和。
16/23

十五

「海」


 ユキがしっかりとした口調で俺の名を呼んだ。


「どうした……おいっ!?」



 ユキのからだが透けている。


「春が来るよ」


「なんだよこれ!? ユキ!! なんだよこれ!?」


「学校は楽しかった。遊ぶのも楽しかった。海とあえてよかった。みんな大好き。海も大好き」


 ユキが……消えていく。


「おいっ!! わからねぇ!! わからねぇけど……いくな!! いかないでくれよ!なんだよこれぇ!! いくなよユキぃ!!」


「ユキは冬なんだよ。冬にしかいられない。ユキは冬しか知らないの。次はどこにいくのだろう? また優しい人に出会えるといいな」


「ユキは冬の間だけ存在できる冬の子……次はどこにいくのだろうね? もう二度と会えないかもしれない。お別れをいいなさい」


「時間切れかの……」


 ツグミさんとトクさんだった。


「なんだよ!? なに冷静になってんだよ!? ユキが消えるんだぞ!?」


「海くん……妖怪も霊も鬼も妖精も……不思議はあるんだよ。それを信じてあげてね」


「はぁ!? 不思議なんて……」


 ないと言いたいがこの状況は……不思議でしか説明できないか……


「ついておいで」


 ツグミさんはユキを抱き上げた。







「あれ? みんな?」


 篭目村の皆が集まっていた。

 かぐやさんにチュウ太郎。タツエさんにハイパーの店長。


「どうして……?」


「いいからおいで」


 ツグミさんは皆福神社の奥へと僕を向かわせた。





「……鏡?」


 鏡である。

鏡なのに……表面が水溜まりのようにゆらゆらと凪ぎいていた。


「これは『導キ鏡』この世のものでない者を次なる場所へ導く。下手な消えかたをすると魔の国や闇の墓場へと連れていかれるからね。これが私の仕事。『案内人』のね」


「……」


 反論したい……下手な設定の芝居はやめろと反論したいがツグミさんは怖いくらい真剣で美しく、鏡の前は息をのむほど神々しい空気をまとっていた。


「次なる場所へ。正しき場所へ。我はこの者を送る。鏡よ導きたまえ……」


 ツグミさんは座して手を合わせ呪文らしきものを唱えた。


「海」


「な……なんだユキ?」


「どこかでまた会いたいな。大好き」


「ユ……」


 ユキはキラキラと光る光の欠片となり鏡の中へと消えた。


「×××……○○○……ふぅ……」


 ツグミさんは立ち上がった。

儀式が終わったのだと思った。

 ……そして俺はもうユキに会えぬのだと悟った。


「きっ……しょう!!」






「訳わかんねぇ……なにがなにで誰が誰なんだよおぉ!!」


『全て説明する。こっちにおいで。あっ!? コラッ!!』


 ツグミさんを振り切って俺は走っていた。


「ありゃあなんだ? イリュージョンか? 洗脳? ユキは? 案内人?」


 とにかく一人になって考えたかった。

『馬鹿だ馬鹿だ』といつも他人に言っていた自分がこんなに馬鹿だとは思わなかった。


「!?」


 林から出て学校に出た。


「……頼むからこれ以上俺を混乱させないでくれ」


 真っ暗な空……巨人と闘う紅蓮の髪の男……


「海君!? こっちへ来るんだ!! 私はテルミだ!! 君を助けに来た!!」


「え!?」


「なんでここにいやがんだ馬鹿!! 逃げろ!!」


「えぇっ!?」


……どうすればいいかわからなかった。


あの人……あの人は……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ